1.オカルト信者×2
私、多田義正、現在怒り狂っております。
「クソがああああああ俺の2万があああああああああ」
誰もいないパチ屋の駐輪場で発狂。
大学終わりにパチ屋に来たのが間違いだった。今日失った2万円は、クレジットカードの支払いのための2万円。すぐに当てて少し増やして帰るはずだったのに。
「合算よかったし、あんだけハマってるんやったらすぐ当たるはずやん!」
合算とは簡単に言えばそのスロット台の当たる確率。その数値が低い、つまり当たりやすい数値のくせして、しばらく当たっていない台を狙ったのだ。その台を他の人が回して当てられなかった分、自分にすぐ当たりがくると思ったからである。
しかし結果はこのざま。マジで意味わからん。
「絶対なんかやっとるやろこの店! 潰れちまえ!!」
台の遠隔操作などはオカルトだと言われているが、そんなわけがない。だっておかしいもん。2万使って当たらないとかさ。
悪態をついていたら、駐車場から出てきた人が変な目でこちらを見ている。
俺はパチンカスだが、そこらにいるやべーやつではないと自負している。勘違いされては困るので、撤退することにしよう。
その前にたばこだけ吸いましょうかね。
「あれ? 無えなぁ」
両ポケットに手を突っ込んでみても見つからない。最後に吸ったのは大学でだ。どうやら喫煙所に忘れてきてしまったらしい。
新しく買う金もないため、取りに行くしかない。
今日は本当についてないようだ。
仕方ないので自転車に乗り、急いで取りに行く。
喫煙所につくと、机の上にたばこの箱があるのが目に付く。やはり置きっぱなしだったようだ。
すぐに手に取って1本取り出し、火をつける。すると、先に中にいた人がちらちらこちらを見ているのに気づく。
なんだよ。俺が誰かが忘れたたばこを迷いなく吸う乞食だと思ってんのか? これは俺のたばこなの!
心のなかでそう言ってみるが、少しだけ居心地が悪い。半分以上残して捨てて、逃げるように外に出た。
それにしても今日はついてない。パチンコで負けるわ、知らん奴に乞食と思われるわで散々だ。
そういえば今日は俺の必殺技を使ってなかったな。
俺の必殺技、それはレバー下から叩き打法だ。
スロットはコインを入れ、レバーを叩いて目をそろえる。普通は上から叩くのだが、俺はここぞというときには下から叩く。まるでアッパーカットのように。ただのオカルトだが、これで何度か救われたことがある。今回はまったく当たる気配がしなくて熱くなっていたせいで、完全に忘れていた。
「やっぱりオカルトが最強ですね……」
そうつぶやき帰ろうとすると
「あ、あの~、オカルト、す、好きなんです、か?」
振り返ると、背の低い女がオドオドしながら立っていた。
長いボサボサの黒髪に眼鏡の女。
なんかもじもじしててめっちゃ汗かいてるし、目も合わないどころか、明後日の方向を向いている。
話しかけるならこっち見やがれってんだ。
まあいいや。イライラしてるし、ちょいとからかってやるか。
「オカルト結構好きっすよ。それがどうかしたんすか?」
オカルトはオカルトでもパチンコのオカルトだけど。
「え、えーと、じ、実はですね、わ、私、オカルトサークルのものでして、もしよければ、入っていただけないかな~と……」
うわめんどくさ。マジで興味ねえ。てかオカルトサークルなんてこの大学にあったんだ。
面倒くさすぎてからかう気も失せたわ。
適当に断っちゃお。
「ごめんなさい~この後用事があるので~」
そう言って立ち去ろうとすると、袖をつかまれ引き止められる。
「ま、待ってください! オカルト好きなんですよね!? なら楽しいですよ!! 絶対!!」
すごい力で引っ張り、説得してくる。
てかなんでそんなに必死なんだよ。
「俺お金に困ってて、バイトしないといけないので!はなしてぇ!!」
嘘は言っていない。金ないし、バイトしなきゃだし……。
「お、お願いします! やっと話しかけられたんです! いろんな人に声掛けようとしても、ゆ、勇気が出なくてぇ……。もう2時間くらい経っててぇ……」
袖を引っ張ったまま、涙目で訴えかけてくる。
こいつ泣き落としかよ!
でもちょっとかわいそう。
知らないやつに話しかけるのってまあまあ緊張するよな。俺も最後のコインでスロット当てちゃったとき、隣の人からコイン借りるのちょい緊張したし。
だが、俺にできることは残念ながらない。
軽く励ましてとっとと退散しよう。
「ま、まあ、俺に話しかけられたんですし、ほかの人にも」
「そういえばお金に困ってるんですよね!? お金ならいくらでもあげますからぁ!!」
「え?」
驚いている間にその女は財布を取り出し、1万円札を俺に向けて突き出した。
「お、お金?」
「た、足りませんか?! なら……」
も、もう1枚だとぉ!?
この一瞬で、2万円? 20スロなら秒速千枚? 純増おかしいやろ……。
てかこいつの財布分厚くね? ごねればもうちょいいけるんじゃ……
って、いかんいかん!
俺は金なしパチンカスのクズだけど、乞食にまで成り下がった覚えはない。
ここは金を出すほどの必死さに免じて、話くらい聞いてやるか。
「分かりましたよ……。とりあえず話聞くだけですからね。あとお金はいらないです」
「え、い、いいんですか? ありがとうございます!!」
涙を浮かべた笑顔で財布にお金をしまう。
そこはもう少し粘ってお金渡そうとしてくれよ……。本当は欲しいんだから……。
「じ、じゃあとりあえず空いてる教室に行きましょう!」
スキップして教室へ向かう女。
あーあ。見え張らずにお金もらっときゃよかったわ。
クレジットカードは何とかなるでしょ……。
俺はとぼとぼ女の後をついていくのだった。
初めまして。パタンと申します。小説を書くのは初めてですので、温かい目で見ていただけると幸いです。アドバイス等あればぜひお願いします。以下、主人公多田くんのプロフィールを軽く紹介します。
・身長170cm ・20歳 ・大学2年生 ・国際学部なので日常会話レベルの英語ができる ・黒髪 ・イケメンではない ・彼女いない歴=年齢 ・スロットの高速目押しとたばこの煙で輪っかを作るのが特技