騎士の宣誓〜師団長シグルド視点
俺は シグルド-リンバーグ、第7師団長をしている。リンバーグ公爵家の次男だ。23歳の時に師団長に任命された。今は25歳だから、大分師団長職にも慣れてきた。副師団長のセシル-ベンゲルの力添えがあってのことだが。セシルは侯爵家の次男で師団長にもなれる男だが、ララという魔法師に執着とも言えるほどの恋情を持っていて、それ故に理由をつけて第7師団の副師団長という立場を死守している。
王立騎士魔法師団には秘密がある。
それは、騎士の中から見目の良いものだけに与えられる試練だ。
自分とセシルは16歳のときに王宮に呼び出された。自分達の他にも10人くらいの同年代の少年がいた。
座って待っていると宣誓書が渡された。騎士として国に尽くす宣誓書は記載していたので、正直疑問に思った。
配り終えた文官は、その宣誓書について説明した。
それは信じられない内容だった。
騎士の中で見目の良いものは、騎士団にヒーラーを集めるため、特定の恋人は35歳までは作ってはならない。致し方なくそのような関係になっても公にしてはならない。関係が公になった場合は直ちに離別する。
娼館のような場所もヒーラーに幻滅されるので行ってはならない。必要な場合は口の固い高級娼婦を王宮の中の特別な部屋に呼ぶことはできる。
もちろん、結婚も35歳まではできない。
そしてこのことは誰にも言ってはならない。
俺達は内容は信じられなかったが、腑に落ちることもあった。
多くの師団長等、高位の騎士に婚約者がいないという事実。後継が必要な貴族の嫡子は騎士団に入らないということ。これは、秘密裏に続いていたのだと理解した。
俺は実家の爵位や見目で幼い頃から女子に迫られて辟易としていたので、ヒーラーを集めるというところに抵抗はあったが結婚の必要性は感じていなかったので、宣誓書を記載して帰宅した。この宣誓は魔法契約となり、騎士を辞職しないかぎり俺を縛ることになる。
これが10年後に自分を死にたくなるほど苦しめると知らなかった。
祝勝会の日、ユーリを目で追ってしまう。遠征の後で気が昂っていて、今すぐにでも自分のものにしてしまいたい。他の男とユーリが少しでも喋ったりするのも耐え難い。そんな風に思っているのに、王や上官、ヒーラーのいる場で話しかけることができない。師団長としてでさえ。