金次第
うちの神社は願い事が叶う事で有名だ。
だから朝から晩まで参拝客の列が途切れ無い。
山の麓から神社がある山頂まで約2キロ、つづら折りの急な階段が下から上まで延々と伸びている。
つづら折りになっている要所要所に有料の休息所があるとはいえ、願い事を叶える為にご苦労なこった。
拝殿の前の賽銭箱に参拝する殆どの人は硬貨を投げ込むが、中には札束10数個をそのまま捩じ込む参拝客もいる。
参拝が終わると参拝客は皆、また延々と連なる急な階段を2キロ下り帰って行く。
「ワァ! ァァァァーー」
あ! 急な階段を踏み外した参拝客が転がり落ちる。
転がり落ちる参拝客の前にいた数人の参拝客が巻き込まれ、同じように階段を転がり落ちて行く。
最初に階段を踏み外して転がり落ちた参拝客は、前にいた参拝客にぶっつかった事で階段脇に弾かれ大きな怪我は無いようだ。
だが巻き込めれた参拝客たちはつづら折りになっているところまで転がり落ち、額から血を流したり手足があり得ない方に曲がったりしていて可也の怪我をしている模様。
しかし神使の私が言うのも何だが、うちの神様の依怙贔屓はえげつないな。
巻き込まれた参拝客は皆、最初に転がり落ちる参拝客を神様が助ける際に、じゃまだとばかりに神様に突き飛ばされて転がり落ちた。
階段脇に弾かれたようにみえた最初に階段を踏み外した参拝客は、神様によって階段脇に運ばれたのだ。
最初に転がり落ちた参拝客と巻き添えって言うか神様に突き飛ばされた参拝客の違いは、賽銭箱に入れた金額にある。
助けられた方は賽銭箱に札束を10数個捩じ込んだ参拝客。
対して突き飛ばされた方は全員硬貨を投げ込んだだけの参拝客だった。
うちの神様は業突く張り。
良く言うじゃないか地獄の沙汰も金次第って、それと同じでうちの神様は、願いを叶えるのも金次第っていう考えの持ち主なんだよ。