情報交換
習慣化させるためなので初投稿です。
あの後、今日はもう遅いということもあり詳しい相談は後日ということで眠りについた。
翌日の朝、僕とセイラはお互いの状況の整理から始めることにした。
「じゃあ、君の親友を助けるためにまずはお互いに知っていることの共有をしたいと思う。」
「はい!……といっても私もそんなに知っていることはないんだけど…」
「実は僕も軍属といっても下っ端の整備士だからね……、機密に関わりそうな大事な情報は持ってないんだけど…、セイラ、君はこの帝国のことについてはどれくらいのことまでは知識がある?」
「えーと……、ギリング帝国は蒸気機関?っていう技術で大きくなった国…ですよね?たしか300年くらい前に実用化してから自然と大きくなっていった国だとか……」
「うん、正確には340年くらい前までは帝国の前身であるギリング王国があったらしいけどね、蒸気機関による技術革新が行われてからこの国は近隣国を飲み込んでいった」
帝国の実質的な生みの親こと『天才アリシア・バレッジ』、彼女のことは蒸気学を学ぶ上で避けては通る事の出来ない、蒸気機関を実用化し、体系的な学問にまで落とし込んだ天才技術者にして天才数学者。
彼女はその類稀なる才能を持って古い世界を一新してみせた。「目をつぶって適当に手をつけばその先にあるものが彼女の発明だ。」なんて言葉があるほどにこの国に貢献した偉大な人物である。
僕がセイラにそのことを説明をする。
「はえー……、蒸気機関のことはよくわからないですけど、そのアリシアさん?のことはわかりました。そんなすごい人がいたんですね」
「そう、僕の最も尊敬する人物だよ。……それにしても蒸気整備士の僕としては君たち魔法少女のほうが理解しがたいけどね……。どうなってるの?君たち魔法少女って存在は、外付けのエネルギーとか必要ないんでしょ?それ。」
そういって僕はセイラのことを指さす。彼女の服装は戦場には到底似つかわしくない可愛らしいものだ。しかも聞いたところによると彼女たち魔法少女は身一つで空を駆り、大砲と見間違うほどの攻撃をしてくる。しかもこちらの攻撃も生半可なものではかすり傷にもならない上、普通ならば重体のはずの傷も半日もすれば塞がるという。
こちらが航空機や大砲を使ってやっと均衡を保てているのに対してなんともふざけた存在だと思う。
「うーん…実は私たちもこの力のことはよくわかっていないんですよね。ある日ふと授かるものなので…」
「授かる?その力は先天的なものや学んだりするものじゃないの?」
「はい、魔法が使えるようになると何となくわかるんです。力が体から湧いてくるというか……。そうすると『魔本』が出せるようになります」
「『魔本』?」
「こんな感じの本です」
そういって彼女の手元に光が集まっていき大きめの本の形をとっていく。
「それが?」
「はい、私たちはこの『魔本』に感情を注いで魔法を使ってます。……あと『魔本』の固有魔法も」
「……感情?ホントによくわからないな…、それに固有魔法てのは?」
「『魔本』にはそれぞれ固有の魔法があって特定の感情を注ぐと使える魔法です。」
「ふうん…、セイラの固有魔法はなんなの?」
「私の固有魔法は『鎮魂』です。精神を落ち着かせたり痛みを和らげたりが出来ます、ちなみにルナの固有魔法は『葬送』です」
「だから『葬送の魔法少女』ね…。ふうん、『鎮魂』に『葬送』か」
やっぱり実際に話を聞いてみても理解しがたい話ばかりだ。まるで理にかなっていない、到底同じ生物とは思えないほどだ。
ただこれで少しは情報の交換が出来た。おかげでルナとやらの娘がどこにいるかの予想もたってきた。
「ありがとう、おかげで調べる場所の目星がついてきたよ」
「そうですか…。……あの!私に出来ることがあれば何でも言ってください!私、絶対にルナを助けたいんです!!」
昨日の様子や今の態度を見ていれば相当にその娘のことが大事なのだということは伝わってきた。
「…セイラはなんでそこまでしてその親友を助けようとするの?正直親友だからで片づけるにはあまりにも無茶をしすぎじゃないか?」
「……親友だからだよ、幼馴染の親友だから。親友を助けるのに理由が必要かな?」
……正直気になることはあるがあまり踏み込みすぎるのもか…。
「じゃあ僕は軍に行っていろいろ心当たりを調べてみる、セイラはこの家に居てほしい。なにかわかればまた伝えるよ」
「わかった。じゃあ待ってるね。いってらっしゃい」
「うん、行ってくる」
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そうして僕は家を出て行った、僕の所属の工廠とは反対側の建物を目指して歩いていく。心当たりに話を聞きに行くためだ。
…あの人に借りを作るのは正直気が進まないがこの状況では仕方ないというものだろう……。
「嫌だなぁ…、でもあの人以上に事情に詳しそうなやつはいないしなぁ……」
重い足取りで僕は『変態』の工房へと足を運んでいく。
軍一番の変わり者の天才ことミカ・バレッジの元へ