第二十二話:はじまりのはじまり
さて、一時はどうなるかと思ったけど、モンスターもなんとか討伐出来た。
ランドドラゴンが出てきたときはもうだめだと思ったけど、全員無事で良かった。
俺のワープスキルも捨てたもんじゃないな!
それにしても、コーデリアさんの強さは圧倒的だったな……。
「コウスケ、アカネ、エレノア、お疲れ様。コーデリアさんもありがとうございました。まさかあそこまで強いとは思いませんでした」
「いえいえ、それほどでもありませんよ」
コーデリアは謙遜していたが、あれが並みの冒険者の実力ではないことは一目瞭然だった。
いろいろとコーデリアさんには謎が多いな。
ともあれ――。
「まずは帰ろう」
「ええ」
そう言って、帰路に着こうとした時だった。
「なんだ、コーデリア、いたのか。槍聖とまで呼ばれたお前がここまで手こずるとは、腕が落ちたものだ」
聞いたことのない男の声がした。
声がする方を向くと、黒い服を着た男が宙を浮いていた。
浮いてる?
と同時に、一瞬で本能がやばいと全力で警告を告げる。
「コ、コーデリアさん、一体……」
「あ、ぁ……」
コーデリアの方を見ると、コーデリアは顔面蒼白だった。
とにかくやばい、良く分からないが今すぐ逃げないといけない気がする。
「に、逃げるぞ」
そう言いコウスケ達の方を向くと、コウスケ達も固まっていた。
どうする、魔法をあいつの後ろに転送して攻撃するか?
そもそも当たるのか、あいつに。
一瞬が何時間にも感じる。
ふと、男と目が合う。
「そうか、お前が……」
「は?」
「いや、なんでもない。コーデリアも十分役立ってくれた。ここにいるワタリドリ達もそれなりのスキルを持っているようだし、頃合いだな。回収していくか」
回収?
なんのことだ?
それより、この状況をなんとかしないといけない!
とにかく魔法だ、詠唱は間に合いそうにないので、ワープスキルでチャージした魔法を男の背後に転送しようとする。
その時――。
「消えよ、アスピレイション」
男が口ずさむ。
瞬間――、周囲をまぶしほどの光が覆った。
同時に焼けつくような痛みを全身に感じる。
「ぐああああぁぁぁ!!!!」
しかし、すぐに吹き飛ばされたような感覚を覚えると、気付けば地面に倒れ込んでいた。
「ワープか、便利なスキルだ。ふむ、俺のスキルとは相性が悪いな。他のナンバーズに任せるか」
朦朧とする意識の中で、そう言い放った男の声が聞こえた――。
*
しばらくして気付けば、先ほどの男はどこかへと去っていた。
助かったのか?
良かった。
とにかく、コーデリアさんたちの無事を確認しないと!
そう思い、よろよろと立ち上がり周りを確認する。
――と、周囲の異変に気付く。
無い。
――何も、無い。
俺は自分がさっきまで立っていた場所から数十メートル後方に移動していたことに気付く。
そして、先ほど自分がいたはずの場所には巨大な穴が出来ていた。
「はは、どういうことだよ」
近づきのぞき込んでみると、底は見えず、ただ暗がりだけが広がっていた。
「コーデリアさん、コウスケ!アカネ!エレノア!いるんだろ、返事しろよ!」
「おいぃぃ――」
喉が焼き切れる程叫んだ。
しかし、返事が来ることはなかった。
クソ、俺と同じようにどこかに吹き飛んでいるのかもしれない。
とにかく、ギルチョで連絡を!
そう思ってギルチョの連絡先からコウスケ達を探す。
しかし――。
「な、なんでだよ」
そこには、ただ通信不可、と表示されたグレーの名前が表示されるだけだった。
「ギルチョをなくした場合や、本人が死亡した場合はギルチョへの魔力供給が出来なくなって、連絡が取れなくなるので注意してくださいね」そう言ったコーデリアの言葉を思い出す。
まさか、俺だけワープスキルで移動して助かったのか?
そんな、みんな死――。
「うっ――」
急に胃が持ち上げられる感覚と同時に、胃の中の物を盛大にぶちまける。
「はぁ、はぁ――」
呼吸が粗い。
なんでこんなことになるんだ。
不便だけど、なんだかんだで楽しかったじゃないか。
みんなとも何度も危機を乗り越えて、冒険して、これからだったじゃないか――。
「なんで……」
こんなことなら。
こんな思いをするくらいなら。
ずっと思わないようにしていたことが脳裏をよぎる。
「はは……」
「こんなことなら……日本にいた方が良かった」
そう思った時だった。
周囲が光だし、俺はまぶしさに目を瞑った。
そして――、周囲の眩しさが収まりゆっくりと目を開けると、俺は、あの日事故に遭ったはずの交差点に立っていたのだった。
物語は回りだす――。
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
これで1章は完結となります。
2章は2週間後から再開予定です。
また、その間にキャラクター紹介等も挟むと思いますので、お暇なときに覗いていただけると幸いです。




