第二十一話:チートスキル
―――ギルドにて
コーデリアは悩んでいた。
自分は何もできない。
いや、関わってはいけないのだ。
また、あのような悲劇を起こしてしまわないように。
自分はただ、傍観者としての責務を全うしなければいけないのだ――。
そう考えていた矢先。
ふと、冒険者からのメッセージでBランクモンスターが多数出現したとを知る。
この街にいるのは一番高くてもBランクのアイリーンだ。
そのアイリーンも、もしものために街の防衛にあたっている。
このままだと、多くの冒険者たちが死ぬだろう。
否、冒険者たちだけではない、この街の人々すら、犠牲になるかもしれない。
コーデリアはどうするべきなのか、もはや分からなくなっていた。
ただ、キョウスケの顔が思い出された。
日本、という国から来たばかりのワタリドリ。
実績もほとんどなく、スキルもまだ中級とか弱い。
そしてそのスキルの真価にも、彼はまだ気付いていない。
いや、気付かない方が良いのかもしれない。
それでも――。
彼には何かを感じていた。
自分の現状を壊してくれる何かがあるのではないか、と。
「悩むくらいなら、行ってはどうかね?」
ふと見上げると、初老の男性が立っていた。
ギルドマスター。
かつてはS級冒険者として活躍したが、事故で引退し、それからこの街でギルドマスターとして冒険者たちをまとめ上げている。
「行動してはじめて気づくこともある、と儂は思うがな」
そうかもしれない。
結果、何かが起きてもすべてを受け入れよう。
そのうえで、抗えば良いのだ。
そう考えると自然と身体は動き出していた。
「ありがとうございます。行ってきます」
コーデリアは武器を持ち、走りだした――。
―――キョウスケ視点。
「キョウスケさん、お待たせしました」
コーデリアは肩で息をしながら、コウスケ達とランドドラゴンの間に割って入った。
いつもの受付にいる時とは少し雰囲気が違う。
手には巨大な槍を携えていた。
「コーデリアさん何を?危ないです!早く逃げて下さい!」
「大丈夫です」
コーデリアの回答を待たずして、ランドドラゴンが尾で薙ぐ!
激しい土埃が舞った。
「コーデリアさん!!!」
ああ、コーデリアさんが――。
しかし、土煙が収まると、そこには槍でランドドラゴンの尾を受け止めるコーデリアがいた。
マジかよ……。
あれ、コウスケのスキルでも受けきれなかったんだけど……。
あっけにとられていると、コーデリアが動く。
見たこともないスピードでランドドラゴンの足元までもぐりみ、そして、一気に槍で前足を薙ぎ払った。
「グアァァァ!」
巨大なランドドラゴンがバランスを崩し、ズシンという地響きと共に倒れ込む。
その隙をみて、コーデリアがアカネ達に駆け寄る。
「アカネさん、今のうちに皆さんの回復を!」
「は、はい!」
アカネがコウスケのもとに駆け寄り、『ヒール』を詠唱する。
スキル自体で致命傷は避けていたのか、コウスケの傷がふさがっていく。
「エレノアさん、立てますか?私とキョウスケさんで立て直します。その隙をねらってください」
「え、分かったけど、あんたは?」
「私は大丈夫です。これでももとS級なので」
ふふ、とコーデリアが微笑む。
エレノアの顔が引きつる――。
そうこうしているうちにランドドラゴンも体制を立てなおしていた。
コーデリアがランドドラゴンの注意を逸らすようにしながら反対側へ回り込む。
ランドドラゴンもコーデリアを狙っている。
――と、ランドドラゴンが大きく口を開いた。
「キョウスケさん、今の隙を逃さないようにしてくださいね!」
コーデリアがそう言った瞬間、ランドドラゴンが火を噴く。
俺の『ファイアアロー』とは比較にならない程大きな火炎がコーデリアを襲う。
ここまで熱波が届く。
あんなものを食らってはひとたまりも――。
「『風車』!」
と、コーデリアは槍を目の前でクルクルと回し、風圧でランドドラゴンの吐いた炎を吹き飛ばした。
すべての炎をさばき切ると、ぱんぱんとスカートについた煤を落とす。
その様子からも、全くの無傷であることが感じられた。
「はは、なんだよあれ……」
気が付いたのか、コウスケがあっけにとられている。
「闘気を極めれば、これくらいは出来るようになりますよ♪」
ふふ、とコーデリアが笑って答えた。
かと思うと、何か意を決したように、きりっと真面目な顔をして、俺の方を向いた。
「キョウスケさん、あなたのスキルは輸送ではありません!転送転移です!自在に物を転送したり、自分自身も任意の場所に転移したりできます!私が隙を作るので、とどめを刺してください!」
ワープ?
なんとなくそうかもしれないと思っていたことを言われ、はっとする。
確かに、これまでも単なる輸送では説明がつかないことがいくつも起きていた。
ワープと言われれば、程度納得感がある。
でも、そもそも、なんでコーデリアさんがそんなことを知っているんだ?
ギルチョにも転送としか表示されていなかったはずだ。
……いや、今はそんなことを気にしている場合ではない!
そう気付くと、自分のスキルの使い方が分かってきた。
俺のスキルは単なる輸送スキルではない。
任意のものを好きな場所に、好きなタイミングでワープさせることが出来るんだ!
俺の身体は自然に動いていた。
ランドドラゴンの周囲に展開するようにして数十のファイアアローを発射する。
いけ!
なんちゃって爆魔法、エクスプロージョンだ!
「グアアァアア!!」
さすがにこの数の強化された『ファイアアロー』は効くのか、ランドラゴンが一瞬ひるむ。
だが、ダメージはあまりないようだ。
それでもかまわない。
その隙を見て、『ハイマッスル』を詠唱する。
「天よ、火よ、彼の者にすべてをなぎ倒す剛力を与えん!『ハイマッスル』!」
魔法をかける対象は俺じゃない。
「エレノア!今だ!俺に向けて全力で撃ってくれ!」
しかし、その隙をランドドラゴンが見逃すはずがなく、ランドドラゴンの後ろにいたエレノアを尾が襲う!
と――。
「させるかよ!」
アカネの癒魔法で回復したコウスケがエレノアと尾の間に割って入る。
“不動の守護神”
「ぐっ!こんなところで負けるかよ……!」
ダメか――。
そう思ったが、土埃の静まった後には、エレノアをかばうようにして立つコウスケの姿があった。
いくらコウスケのスキルをもってしても、完全にはダメージをゼロには出来ないようだったが、コウスケは気合でランドドラゴンの尾を受けきったのだ!
「へ、見たかよ」
「サンキュ!コウスケ!見直したわ!キョウスケ、お願い!私の全力よ!」
“鷹の目”
エレノアが全力で矢を放つ。
俺は目前に迫る弓矢を受け、それを再度火を噴こうとしているランドドラゴンの口の中に転送する。
「グギャァアアアァァアアアァ!!」
ランドドラゴンがこれまで聞いたことのない悲鳴を出し、叫ぶ。
これは効いている!
だが、即死ではないようだ。
このままだと決定打にか欠ける。
その時――。
「とどめです!」
コーデリアが高く飛び上がり、ランドドラゴンの脳天に槍を突き刺した。
「ギャアアァァ!」
断末魔を出し、ランドドラゴンは大きな音を立てて崩れ、そして沈黙した。
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