第二十話:スキルの真価
スタンピードに立ち向かい、他の冒険者と協力して魔物を倒す。
魔物討伐は順調だ。
魔法で強化された矢は軽々とゴブリンの頭を貫通した。
俺の『ファイアアロー』も以前は一撃ではゴブリンを倒せなかったが、『ハイマジック』で強化した状態であれば一撃で倒すことが出来た。
アカネも中級水魔法『アクアシュート』で敵を倒しつつ、傷ついた冒険者たちの傷を治していた。
*
さて、残るはオークとホブゴブリンだ。
このCランクモンスターは厄介だ。
まず、ホブゴブリンはその名の通り、ゴブリンを大きくしたような魔物だ。
動きもゴブリンと大きく大差はない。
問題はオークだ。
こん棒をもった巨大な2足歩行の生物で、豚というよりは直立歩行したイノシシに近い。
この怪力の魔物の前に、Eランクの冒険者はなすすべもなくなぎ倒されていた。
アカネをはじめとしたヒーラー担当が戦場を駆け回り、負傷者の回復を行う。
ただ、アカネの癒しの御手によって、広範囲に『ヒール』をかけることが出来ているため、いまだ大事には至っていない。
「コウスケ、隙を見て私が頭を狙うから、気合入れて攻撃防ぎなさいよ!」
「おう、任せとけ!」
オークが勢いよく振りかざしたこん棒をコウスケが受ける。
その一撃で、大きく砂埃が舞う。
「大丈夫か!?」
しかし、如何にオークの怪力でもコウスケの不動の守護神は崩せなかったようだ。
「問題ない」とでも言うように、こちらをちらりと見てコウスケが笑う。
その隙をみて、エレノアがすかさず矢でオークの頭部を射る。
『ハイマッスル』で強化された弓矢は、オークの頭部をやすやすと貫通し、オークは絶命した。
「ほらね、このパーティならCランクの魔物でも余裕でしょ!」
エレノアが「やったね」とウインクする。
その後も、若干数に押されつつも、順調に魔物を倒していった。
見れば、かなり魔物の数も減って行っていた。
このまま何事もなくスタンピードを抑えられるか。
そう思った矢先――。
「ぐあああぁぁ!」
「に、逃げろー!」
冒険者たちの叫び声がする。
見ると、ひときわ大きなオークと弓を持ったゴブリンが数匹いた。
「な。なんだあの魔物は」
急いでギルチョを通じてコーデリアさんに連絡する。
すぐに回答があり、現れたのはハイオークとゴブリンアーチャー、どちらもBランクの魔物ということだった。
「何かがおかしいわ!あんな魔物、よほど深い森の奥にしかいないはずよ……。でも今はとにかく敵を倒さないと!」
「ど、どうする?逃げるか?」
「いや、逃げてもこのままだと街が危ない。みんな、闘えるか?」
雑魚はほとんど倒したが、Bランクのモンスターが残っている。
でも見逃せば、街に協力なモンスターが襲撃することになる。
パーティの全員で目くばせし、闘うことを決める。
*
闘うことを決めたはいい。
ハイオークの攻撃もなんとかコウスケで耐えられるだろう。
が、厄介なのはゴブリンアーチャーだ。
遠距離攻撃がこんなに厄介だと、敵に回して初めて痛感する。
とにかくコウスケを盾にしつつ、隙を見て、俺とエレノアが攻撃を仕掛ける。
しかし、ゴブリンアーチャーは思ったよりも素早く、なかなか『ファイアアロー』が当たらない。
コウスケにも疲労が見え始めている。
少し移動して、チャージした魔法を使って陽動しようと少し前に出たその時――。
「キョウスケさん、危ない!」
アカネが叫ぶ。
やばい。
そう思った時にはもうゴブリンアーチャーの放った矢がすぐ目の前まで来ていた。
避けられない!
そう思いとっさにかばうように腕を上げた。
せめて即死さえま逃れれば、アカネに回復してもらえる。
でも、痛いのは嫌だな……。
と思いつつ覚悟を決める。
……?
しかし、いつまで経っても痛みはない。
あれ、もしかして俺死んだ?
恐る恐る目を空けると、どこにも矢は当たっておらず、痛みもなかった。
不思議に思い、アカネの方を見る。
「キョウスケさん、今矢が消えました……」
「なによ今の?」
どういうことだ?
消えた?
もしかして俺のスキルが発動したのか?
まさか、鞄の中でしか輸送スキルは使えないと思っていたけど、そうじゃないのか?
そう気づくとなぜかは分からないが、鞄の中でなくても輸送によって収納し、出し入れできるような気がしてきた。
試しに、ゴブリンアーチャーの後頭部を狙って『ファイアアロー』を取り出そうとしてみる。
すると、思ったように魔物の後ろに『ファイアアロー』が出現した。
そしてそのまま、ゴブリンアーチャーに気付かれることなく、彼の頭部を焼き尽くした。
「ギャーーー!!」
ゴブリンアーチャーが絶命する。
その様子をあっけにとられるようにコウスケ、アカネ、エレノアが見ている。
「はは、なんか、俺のスキル、なんでもありみたいだ……」
「す、すごいじゃない、キョウスケ!これなら勝てるわ!」
「マジですごいな。よし、俺がスキルで敵を引き付けるからキョウスケはどんどん敵を倒してくれ!いくぞ!」
そういうと、コウスケは叫びながら敵に突っ込み、敵の攻撃を一身に受ける。
そこからは一方的だった。
コウスケに気を取られた魔物たちの背後に『ファイアアロー』を転送し、次々と倒していく。
陣形が乱れバラバラになったところをエレノアが正確に射貫いていく。
逃げ出した魔物や、ランクの低い魔物は余裕がでたアカネが『アクアシュート』で倒していく。
数十分ほど闘い、なんとかモンスターたちを全滅させることが出来た。
「やったな、俺たち、Bランクモンスターに勝っちまった!」
「ちょっと気になることはいろいろあるけど……。でもこれでランクアップは間違いなしね!明日からまた稼ぐわよ!」
「はぁ、疲れました。とにかく早く休みたいです……」
一時はどうなるかと思ったけど、なんとかなった。
ほんと、いいパーティだな。
とにかく今は疲れた。
帰ろう――。
そう思った時だった。
ズシン、という地響きが聞こた。
森の鳥たちが飛び立つ。
なんだ?
みんなで何事かと顔を見合わせる。
しんと静まり返ったあと、森から出現したのは大きなドラゴンだった。
「ラ、ランドドラゴン!?どうしてこんなところに!?」
エレノアが震えだす。
「どうしたんだ?」
「ランドドラゴンはもっと奥地にしかいないはずなのよ!こんな街の近くに来るなんて……!それにランドドラゴンの討伐ランクはSよ、とても私達じゃ太刀魚できないわ!」
「そんな……」
周りの冒険者たちも蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
「分かった。と、とにかく今は逃げるぞ!」
そう言い、全員でその場から逃げようとする――。
ふと、一人足りないことに気付く。
振り向くと、アカネが一人、その場に座り込んでいた。
「す、すみません、腰が抜けて……」
腰を抜かしているアカネに向けてランドドラゴンの尾が迫まる!
「アカネーーーーー!!」
“不動の守護神”
叫びながらコウスケが尾とアカネの間に割って入った。
しかし――。
「ぐああああぁぁぁ!」
「「きゃあああ!!!」」
コウスケとアカネ、そして巻き込まれる形でエレノアが吹き飛ばされる。
そんな、キョウスケの不動の守護神ですら耐えられないのか?
「クソ!」
とにかく時間を稼がないと全滅する!
俺は『ファイアアロー』をランドドラゴンめがけて転送する。
しかし――。
「はは、ダメージゼロかよ……」
ダメージは入っておらず、全く意に介していないようだった。
くそ、どうする、とにかくみんなが回復するまでにこの状況をなんとかしないと。
頭をフル回転させるが、この敵に勝つイメージがつかめない。
一か八か、剣で注意を逸らすか。
死ぬかもしれないが、俺より若いみんなを逃がすことの方が大事だな。
そう考え、ランドドラゴンに切りかかろうとしたその時――。
「すみません、お待たせしました」
聞き覚えのある声がした。
それは、戦場では聞こえるはずの無い声だった。
振り返ると、そこにコーデリアさんがいた。
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