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第十九話:スタンピードに立ち向かおう

「あったまいてー」


翌朝、ひどい頭痛で目が覚める。

原因は昨日のあれだよな……。

ま、でもエレノアともいろいろ話せたし、良しとしよう。


さて、今日はクエストもないので、魔法の練習をすることにする。

もちろん、練習する魔法は昨日奮発して買った破魔法だ。

とりあえず本を読んで読解しないことには始まらないので、まずはベッドに寝っ転がって本を読む。


読み進めていくと、癒魔法に次いで破魔法は習得しにくい魔法だということが書いてあった。

理由としては、人体や魔力、エーテルの仕組みについて深い理解が必要だから、なのだそうだ。


確かに、人体がどんな構造なのか分かっていないと傷が治せないからな。

と思う一方で、相変わらず癒魔法が覚えられないのはなぜかと悩む。

そう思うと、急に破魔法を覚えられるのか不安になってきた。


しょうがない、あの人に聞いてみるか……。


着替えて向かう先はギルド。

目的の相手はもちろん、魔法を教えてくれたアイリーンだ。



「久しぶりだな、キョウスケ。どうした?」


相変わらず、アイリーンは元気そうだ。

アイリーンに、癒魔法が覚えられないことや、破魔法の習得について相談する。

ちゃんと相談に乗ってくれるか心配だったが。

思いのほか真摯に相談に乗ってくれた。


「ああ、それはな、六方元性は魔力適正から遠い属性ほど習得が難しくなるからだな。前も言ったように、魔法を覚えるには2つ要素がある。1つは詠唱によって発動する事象自体の理解。もう一つが、属性の相性だ」


なるほど、確かに天属性に適正のある俺は、地属性と水属性はほぼ反対に位置している。

だから相性が悪いということか。


「こればっかりは練習あるのみだな。ま、逆に破属性はキョウスケとは相性良いはずだから、事象の理解さえできれば習得は早いんじゃないか?」

「ありがとうございます!」


なるほど、そういうことか!

そう言われると若干自身が着いてきた。


アイリーンに礼を言うと、早速ギルドの練習場を借りて、破魔法の練習をする。

まずは中級魔法『ハイマッスル』だ。

魔法としては、対象の生命活動を強化することで一時的に筋力を上げる、のだそうだ。


俺は専門家ではないが、義務教育で筋肉やらの人体構造は一通り知っているから、おそらく事象の理解についてはクリアしている。

属性間の相性についても、火属性は天属性の横に位置するから良いはずだ。

早速試してみる。


「天よ、火よ、彼の者にすべてをなぎ倒す剛力を与えん!『ハイマッスル』!」


すると、魔力が吸い取られるような感覚と同時に、身体が軽くなったような感じがする。

成功か?


試しに、貰ってから全く使ってない剣で練習用の木材を切ってみる。

すると、抵抗なくすっと真っ二つにすることが出来た。

成功だ!

しかも、これはすごい、めちゃくちゃ攻撃力が上がっている。


これだけ簡単に成功したということは、やはり属性の相性の問題が大きかったのか。

癒魔法も頑張れば覚えられるような気がしてきた。


その調子で、破属性の上級魔法『ハイマジック』の練習もしてみる。

こちらは、対象の魔力を活性化させ、かつ対象の周囲のエーテル濃度を上げるという少し複雑なことをするらしい。

結果として、対象者が発現する魔法の威力を数段高めるというものらしかった。

正直、日本の知識があまり役立たなさなそうなので、少しの不安を覚える。


「汝が望むは天の加護。我が望むは炬火の加護。相合わさりて、彼の者へ力を授けん!『ハイマジック』!」


瞬間、自信の中の『何か』が勢いを増すような感覚を得る。

と、同時に周囲の空気が重くなったというか、密度が濃くなったような感覚を得る。

これ、成功してるのか?


試しにいつものように『ファイアアロー』を詠唱してみる。

すると、練習用の木片にあたった炎の矢は、木片を焼き尽くし、地面に小さな穴を空けていた。

普段であれば練習用の木片を燃やす程度だったのに!

これは間違いなく成功だ!


たった一日で複合魔法の上級まで覚えてしまうなんて、俺は天才かもしれない。

いやいや、調子に乗ると良くない。

落ち着け、と自分に言い聞かせる。


これはあれだ、たまたま自分の属性が相性良かっただけだ。

でも、みんなが驚く顔は見れる気がする。

早くみんなに使ってみたい。


そういえば、強化した状態で『ファイアアロー』を輸送スキル(トランスポート)にストックしておけば、いつでも強化された魔法が取り出せるかもしれない。


試しに『ファイアアロー』を格納してから取り出してる。

威力は先ほどと同じく、通常の『ファイアアロー』より数段上だった。


これはいけるぞ!

そんな調子で、昼食も忘れてひたすら『ファイアアロー』をチャージし続けた。



結局、二時間程魔法のチャージを行ってしまった。

おかげで少し疲れたが十分な量の『ファイアアロー』のチャージすることができた。


それにしても、あんなに魔法を使ったのに魔力が無くなる気配が無い。

最初のうちは魔力切れになりやすいと聞いていたんだけど。

俺は人より魔力の総量が多いのかもしれない。


ま、とにかくあとはもう帰って飯食って寝るだけだな。

そう思って帰ろうとすると、勢いよくギルドのドアが開いた。


「たいへんだ!」


ギルドに慌てて人が入ってくる。

ん、どうした?


「どうしましたか?」


コーデリアが急いで駆けつける。

ギルドに慌てて入ってきた男は肩で息をしている。

少し落ち着いてから、話始める。


「さっき街に向かう商人から、森の方でモンスターの大軍を見たって連絡があった!」

「本当ですか?」


ギルドがざわつく。

モンスターの大軍?

それってよく異世界小説で起きるやるじゃん。

たしか、モンスターパレードとかスタンピードとか言うんだっけ。


「何事だ?」


杖を突いた初老の男性がギルドの奥から現れる。

確か、ギルドマスターと呼ばれていた気がする。


「あ、ギルドマスター、実は街に向かうモンスターの大軍を見たという知らせがあって…。もしかしたら、スタンピードかもしれません」

「ううむ……しばらくモンスターどもはおとなしくしていると思ったんだが……。よし、まずは事実確認だ。アイリーンくん、調査に行ってもらえるか?」

「ああ、わかったよ」


アイリーンがいつになく真剣な顔をして、ギルドから飛び出していく。


「それとコーデリアくんは万が一に備えて、緊急クエストの準備と冒険者たちの招集を頼む」

「分かりました」


コーデリアは急いでカウンターに戻り、作業を始めた。

あれ、これ、もしかしなくてもやばいやつなのでは?


「諸君!聞こえたかとは思うが、まずはギルドで事実確認をする。一先ず、Eランク以上の冒険者はギルドに残るように!」


ギルドマスターと呼ばれた初老の男性が、声をかける。

と、同時にギルチョに緊急招集の通知が入る。

こんな時になんだけど、改めてギルチョってハイテクだなぁ。



しばらく待機すると、アイリーンが戻ってきた。

顔を見るに、スタンピードが起きているおことは事実のようだ。


その後、正式にギルドから緊急クエストが申請された。

Eランク以上の冒険者は原則参加ということだった。


当然、俺たちも招集対象となる。

他の冒険者たちと同じようなタイミングでコウスケ達もギルドに集まった。


「スタンピードなんて、ワクワクするな!」


相変わらずコウスケは楽天的だ。


「ちょっとコウスケ、不謹慎よ」

「まぁ実際、モンスターの数は多いけど、この街の近くだったらそれほど強いモンスターもいないはずだから、落ち着いて対処すれば大丈夫だと思うわ」


なるほど、そういうものなのか。


ほどなくして、街中の冒険者が集合したタイミングで、ギルドマスターが声かけを行い、スタンピードに向かうことになった。

なお、緊急クエストについてはギルドから回復ポーションが無償で配られた。



草原に向かって移動する。

街中の冒険者が募っているため、優に百人は超えている。

なお、アイリーンと街の衛兵たちは万が一に備えて街の警護に当たっている。

俺たちのパーティ(ホープホライズン)は列のやや後方に位置して進んでいった。


三十分程歩くと、ついた先はちょうど俺が異世界転移した時にいた場所だった。

そこには、すでに森から街へと向かうモンスターの大軍がいた。


同時にギルチョを通じてギルドからの定期連絡がある。

今のところ、確認されているモンスターはゴブリン、ホブゴブリン、オークとのことだった。

ゴブリンはDランク、ホブゴブリン、オークはCランク相当の魔物ということだった。

幸い、協力すればこの街の冒険者たちでも倒せそうだ。

問題は数だ。

見渡す限りのモンスターの大軍。


「いくぞー!」


リーターを務める冒険者の声を皮切りに、冒険者とモンスターの戦いが始まった。

俺はエレノア、キョウスケに『ハイマッスル』を、アカネと自身に『ハイマジック』をかける。


「すごい、力が溢れてくるわ」

「すごいぜ、キョウスケ!これなら負ける気がしない!」

「キョウスケさん、ありがとうございます」


「昨日魔導書を買っておいて良かったですね」とぼそりとアカネがつぶやく。

本当にその通りだ。

高いとか言ってごめんなさい。


そんなことを考えながら、他の冒険者と協力してモンスターを倒していった。

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