第十七話:一括千金
迷宮はギルドが管理しており、ギルドの関係者によって入り口の管理がされていた。
ギルドを見せて通行許可をもらう。
周りを見ると他にも何人か冒険者が来ているようだった。
何人か、街のギルドで見たことがある冒険者もいた。
迷宮に足を踏み入れると、エーテルの濃度なのか、雰囲気が変わったように感じる。
迷宮の中は暗く、湿っていた。
いわゆる古代文明のダンジョン、といった感じではなく、本当に巨大な洞窟、といった様子だ。
なお、洞窟の中は探索されている場所であれば魔導灯が設置してあり、ある程度の明るさは確保されていた。
ちなみに、この迷宮は迷宮の中でもかなりランクの低い部類に入るらしく、取れる素材や討伐出来る魔物も限定されている。
そのため、ある程度のランクになると別の街にいってしまうため、この迷宮に挑むのはせいぜいCランクのパーティくらいのようだ。
とはいえ、この迷宮では防具や日用品を作るために必須となる鉄鉱石の採掘が出来る。
そうした理由から、ある程度の数のパーティが連日訪れているようだった。
そういえば、何でアイリーンはBランクなのにこの街にとどまっているんだろう?
ちょっと気になったので今度聞いてみよう。
*
しばらく歩くと、蜘蛛の魔物と遭遇する。
事前に聞いていた、グランドスパイダーという魔物だ。
それなりに装甲が堅く物理攻撃が利きにくいため、この魔物と遭遇したら俺が魔法で攻撃する手はずになっていた。
本来は火魔法が弱点なのだが、グランドスパイダーの素材はそこそこの値段で買い取ってもらえるようなので、なるべく傷つけないように風魔法を使うことにする。
特に、体内で生成する糸が貴重なのだそうだ。
「風の刃よ、疾風となりて切り刻め。ウィンドカッター!」
瞬間、真空の刃が形成され、蜘蛛の前脚を切断する。
「ぎいぃいぃぃ!」
グランドスパイダーがバランスを崩れたところを、コウスケが剣でとどめを刺す。
「ナイス!キョウスケ!」
「おう、コウスケもお疲れ!」
コウスケはこっちを向いてブイサインを作る。
コウスケもなんだかんだで闘気を操る練習を欠かさず行っているようで、攻撃力は以前よりも増している。
堅いグランドスパイダーの頭部をキレイに真っ二つにしている。
グランドスパイダーが絶命していることを確認してから、俺のスキルで格納する。
正直なんだか気持ち悪いがこれも仕事と思って我慢する。
ちなみに、アカネは虫全般が苦手らしく、ずっと後ろで縮こまっていた。
「エ、エレノア、私この迷宮無理かも……」
「ちょっとアカネ、何弱気になってるのよ!こんなのただのでっかい蜘蛛でしょ?」
「だってぇ……」
アカネはめちゃくちゃ涙目だ。
エレノアはあまり虫系に苦手意識が無いらしい。
まぁ、現代日本で育つとだいたい虫って苦手になるよな。
なんてわいわい話していると、じゃりっと足音が聞こえた。
ふと見るとアカネのすぐ後ろにゴブリンが迫っており、こん棒を振り上げていた。
「アカネ、危ない!」
エレノアがすかさず弓を構えるが、間に合わない。
詠唱も間に合いそうにないので、俺は咄嗟に事前に準備していた秘策を打つ。
鞄をゴブリンの方に向け、ファイアアローを取り出そうと念じる。
瞬間、鞄からファイアアローが飛び出し、ゴブリンへと向う。
「ぎゃ!?」
あまり狙わず出したため、炎の矢はゴブリンをかすっただけだったが、一瞬の隙を作ることに成功する。
その隙を逃がすまいとエレノアの矢がゴブリンの頭部を撃ち抜いた。
「あ、ありがとうございました」
「ふぅ、危なかった。それにしてもキョウスケ、今の何?詠唱が無かったように見えたけど?」
みんな不思議がっている。
そりゃそうだよな。
「いや、ファイアアローを輸送で格納しておいたんだ。温度が保存されるなら、魔法も保存されるのかな、と思って」
「なんだよそれ、チートだろ」
コウスケがつぶやく。
「そんな使い方があるなんて……」
「じゃなに?ストックしておけば、後は詠唱なく打ち放題ってこと?」
「まぁ、そうだな。ちょっと狙う際の精度に問題はありそうだけど……」
「呆れた。そんな秘策があるなら早く言ってよね」
「すまんすまん」
何度か練習はしていたが、やはり狙いを定める制度が良くないのだ。
だから、可能な限り使わないようにしていた。
何とか本番で成功して良かった。
みんなに事情を話し、引き続き探索を続けることにした。
*
そうして、モンスターを倒しながら迷宮を進む。
この鉱山に巣くっているモンスターは高くてもCランクの魔物なのだが、低階層ということもあって、せいぜいDランクの魔物が多かった。
Dランクに上がったばかりのパーティとはいえ、各スキルもなかなか相性が良いため、大きな苦戦もしていない。
たまにコウスケが怪我を負いつつも、アカネの中級癒魔法『ヒール』で回復しながら迷宮を進んでいった。
あとは鉄鉱石だな。
ところどころに鉄鉱石があったので、持ってきたつるはしで掘り出しつつ、俺の収納カバンに格納していった。
そんな感じで鉄鉱石を集めながら、魔物を倒しつつ進むと、少し開けた場所に行きつく。
行き止まりか?
特に魔物もいるわけではなく、ただの広い空間が広がっていた。
引き返そうかとしたとき、ふと奥に大きな岩があることに気付く。
なんとなく怪しいが、少し押したくらいではピクリともしない。
「どうしたの、キョウスケ?それ、ただの岩じゃない?」
「そうだよ、行き止まりだし別の道へ行こうぜ!俺もっとモンスター倒したい!」
「私は帰りたいですぅ」
アカネ、キャラ変わってないか?
まぁみんなの言っていることが正しいんだろうけど、なんかこの岩、気になるんだよなぁ。
これ、もしかして、俺のスキルで岩を仕舞えば除去できるんじゃないか?
そんなことを思いつつ、ダメもとで鞄を近づけて格納しようとしてみる。
すると、するっと岩は跡形もなく収納された。
「ほんとに収納できたよ……」
「マジか……」
全員あっけにとられている。
だが、取り除いてみたものの、特に何もない。
なんかこう、秘密の隠し部屋とか、隠された都市への入り口とかあると思ったんだけどな。
ほんとにここで終わりなんだなと思ったとき、きらりとしたものが目に映った。
ん?
なんだこれ?
よくよく確認してみる。
これ…金だ!!
ただ、めちゃくちゃこまかかったり、岩の中に入り込んだりしていて、集めるのが大変かもしれない。
と、俺はふとあることを思い出した。
魔法も出し入れできるということは岩を収納したあとに、金だけを取り出すこともできるんじゃないだろうか?
早速俺は鉱石の固まりを鞄にいくつか収納したあとで、金だけを取り出そうとして見る。
過ごしだけ魔法を使った時に似た、魔力を吸い取られるような感覚があったのち、手を見ると一塊の金がそこにあった。
「やった、金だけ取り出せたぞ!」
「マジかよ……。キョウスケのスキルはなんでもありだな」
「すごいです!こんな汎用性の高いスキル始めてみました」
エレノアだけは驚きつつも、何やら考え込んでいる。
「うーん、キョウスケのスキルは本当に輸送なのかしら?こんなことが出来るスキル、聞いたことが無いわ。もちろん、スキルのことはあまり口外しないことになっているから、知られていないっていうだけかもしれないけれど……。ギルチョのスキル鑑定も完全ではないと言うし、たまに誤って表示されたりすると聞くわ。一度確認した方がいいかも……」
珍しくエレノアが真面目なことを言う。
どうしたんだろう、と思っていると、不意にエレノアが顔を上げ、目をキラキラさせる。
「ま、でもそんなことよりも!キョウスケすごいわ!金塊を採取できるなんて、これで大金持ちよ!キョウスケ大好き!一生ついていくわ!」
そう言って俺に飛びつく。
なんだ、いつものエレノアだな。
そんな感じで、しばらくパーティ全員でしらみつぶしに金鉱石を探し、俺のスキルで金塊に製錬していった。
時間を忘れて採取していたが、そろそろ戻らないと今日中に街に帰れなくなりそうだったので、まだまだ金鉱石は採れそうだったが切り上げることにした。
最後に、みんなで話合って、ここは俺たちだけの秘密の場所にすることにした。
もしここがばれると他の冒険者が押し寄せるかもしれないからな。
もとの大きな岩でふさぐことにする。
もちろん、今回集めた金塊はみんなで山分けだ。
ただ、いきなり換金すると怪しまれるので、適当に時間をおいてから換金することにする。
でもこれで資金面は大きく改善しそうだ。
聞いたところによると、この世界でも金の価値は高く、買い取り価格も日本と大差なさそうだ。
すべての道具や鉱石を俺の鞄にしまうと街に向けて帰る。
迷宮入口の職員や周りの冒険者たちは手ぶらにもかかわらずニコニコ顔の俺たちを不信に見ていたが、そんなことには構わず、行きよりも軽やかな足取りで街へ向かうのだった。
*
なんとか、夕暮れすぎには街につくことが出来た。
ギリギリ、ギルドが開いている時間だったので、急いでギルドに向かい、クエスト完了の報告を行う。
山のような鉄鉱石とモンスターをカウンターに出しながら、鑑定を待つ。
「キョウスケさん、今回はすごいですね。鑑定に少し時間がかかりそうなので、また後日来ていただいても良いですか?」
さすがにこの量だしな。
「分かりました……」
あとは金塊のことはどうしようかな。
コーデリアさんには言った方が良いのか……。
「キョウスケさん、何かありましたか?」
コーデリアがじっと俺のことを見つめる。
どうしたものか。
「なんでもないわ。思ったよりもキョウスケの輸送スキルの容量が大きくて、持ってこれる鉄鉱石の量が多かったから少しパーティ内での報酬分配でもめただけよ。話し合って、キョウスケの分を少し多くしたからもう解決したわ」
すかさずエレノアがフォローを入れる。
おお、エレノア、ナイス!
「そうなんです。俺は均等で言いって言ったんですけど、ちょっともめちゃって。でももう解決したので!」
「そうでしたか、キョウスケさんのスキルは本当に便利ですよね!またぜひ同じようなクエストがあればご紹介しますので、ご協力頂けますと助かります」
そう言い、コーデリアはにっこりと笑う。
騙してごめんなさい、コーデリアさん……。
そんな感じでギルドを後にし、みんなで軽く打ち上げをした後、解散した。
いつも読んでいただいてありがとうございます。
迷宮探索もひと段落、しました。
明日からはもう少しキャラクターの掘り下げや、日常シーンを書いていこうと思います。
そのほか、ご意見などあれば頂けると励みになります。
引き続きよろしくお願いいたします!




