第十六話:迷宮攻略をしよう
ゴブリン討伐でそれなりに稼いだので、数日は休日を過ごした。
その間に各自装備の手入れや、魔法の習得になどに励んだ。
まだまだ上級魔法への道のりは遠い。
そうして過ごしたのち、新しいクエストに挑戦することになった。
ちなみに、ゴブリン討伐で、俺のランクはDランクに上がっていた。
*
「次のクエストは迷宮攻略にしましょう」
しばらくぶりにみんなで集まって、ギルドに併設されたテーブルで次のクエストについて会話していると、唐突にエレノアが口を開く。
「迷宮?」
いわゆるダンジョンのことか?
聞けば、この世界にはエーテルという物質が満ちており、それをもとに魔法を発現することが出来るのだと言う。
そのエーテルが濃いポイントには大抵広い洞窟のような空間が広がっており、これを迷宮と呼ぶというらしい。
迷宮には当然魔物も多く徘徊しており、それなりの強さが求められるということだった。
迷宮にはランクがあり、この街の近くの迷宮のランクはCということだった。
俺たちのパーティはランクDなので、一つ上のCランクのダンジョンでも潜ることは一応可能だ。
「でも、キョウスケさんはまだDランクに上がったばかりだし、迷宮はまだ早いんじゃ……。私とコウスケも迷宮探索は初めてだし、少し不安です」
「大丈夫、大丈夫。今回は深い階層まではいかないし、迷宮で採れる鉱石を採取することが目的だから、強い魔物とは戦う必要はないわ。それに、私はこのパーティでうまく連携すればCランクの魔物でも十分倒せると思うわ。Cランク冒険者の私が言うんだから、信用しなさいって!」
「いいじゃん、迷宮探索!俺も行きたい!」
「もう、コウスケは調子いいんだから……」
「キョウスケはどうかしら?鉱石採取だから輸送スキルを持って入いるあなたが肝心よ」
確かに、いつまでも小さく稼ぐよりは少し大きなクエストに挑戦したいと思ったところだ。
ま、浅い階層には強い魔物は出ないってことだし、大丈夫だろう。
これがよくある異世界小説だと、強いモンスターが深い階層から上がってきたりするんだけど……。
そうならないことを祈る。
「そうだな、俺のスキルも活用できるし、いいかもしれないな」
「やった!じゃ決まりね!ありがとう、キョウスケ!」
そういってエレノアが俺に飛びつく。
いや、近い近い!
エルフってのはもっとお堅いイメージだったが、この世界が違うのだろうか。
それともエレノアが特別なのか……。
まさかこれが噂に聞くエロフ……。
とはいえ、美人にくっ付かれて悪い気はしない。
ただ、ここはギルドの中だ。
コーデリアさんに見られていると思うとなぜか罪悪感がある。
「ちょ、ちょっと、近い近い。じゃあ、行くのは決まりとして、いつ行くんだ?」
コーデリアさんを気にしながらエレノアを引きはがし、確認する。
「そうね、迷宮はここから1日くらい歩いたところにあって、普通は馬車を借りるんだけど、お金もかかるし、私たちにはキョウスケもいるから今回は徒歩で行こうと思うわ。野営の準備が必要だから、今日は準備に充てて、明日の朝出発でどうかしら」
「分かった。じゃあ、必要なものをリストアップして、早速買い出しに行こう。食料も必要そうだから、今日のうちに買ってしまおう」
そうして、近くの食堂で軽く昼食を済ました後、道具屋や薬屋によって必要な物資を調達する。
一応、アカネの回復魔法も使えるのだが、万が一魔力切れになったり、アカネが重症を負ったりした時を考えて、回復ポーションも多めに買っておく。
あとは、野営用のテントも買う。
そもそもこの世界に携帯用のテントがあることが驚きだったのだが、どうやらワタリドリによってもたらされた技術の1つのようだった。
一通り買物を終えたあとギルドでクエストを受領し、この日は解散となった。
俺も久しぶりの買物で疲れたこともあって、宿で食事をしたのちすぐに眠りについた。
*
翌朝、いつものようにギルド前に集合する。
今日はギルチョで連絡しあいながら集合したので、全員時間ぴったりだ。
ぶ、文明の利器ってすげー!
「よし、じゃあ出発だな!」
持ち物に不足が無いことを確認し、出発する。
*
歩きながら地図を確認したところ、迷宮は初めて歩く街道沿いにあるようだった。
迷宮からは様々な物資が取れるため、様々な協会が依頼を出しているのだが、今回は鍛冶ギルドからの鉄鉱石を持っていて欲しい、という依頼だ。
特にノルマはなく、持ち帰ったら持ち帰った分だけ報酬もアップするというまさに俺のためのようなクエストだった。
迷宮に向けて4人並んで街道沿いを歩いていると、ふと、街道から少し離れた先に鉄塔のようなものがあることに気付く。
こっちの道は初めて通るけど、あんな建物があるんだな。
「なぁ、エレノア。あそこに見える塔のような建物ってなんだ?」
「ああ、あれね。あれは魔導タワーよ。なんでもギルチョのアップデート?だったり、通信機能のために必要みたい。私も詳しくは知らないけど」
「そうなのか……」
なんだか日本の通信キャリアみたいだな。
確かにギルチョ間でP2P通信している訳はないよなーとか思ったりする一方で、街の文明レベルと比較するとなんだかちぐはぐな気もする。
うーん、ギルチョは謎が多い。
そんなことを考えながら、程度に休憩をはさみつつ、数時間歩き、目的の迷宮に近くなったところで夕方になったので、野営の準備をすることにした。
適当な場所を探し、手分けして男性陣用と女性陣用でテントを二つ張る。
焚火を起こし、照明替わりに携帯用の魔物避けの街灯を灯す。
夕食は俺の収納バッグに入れ持ってきた野菜とソーセージを使ったポトフのような料理だ。
正直、俺のスキルは温度も維持できるから街で買った料理を入れておけば手間いらずだったのだが、せっかくなら料理がしたいというみんなたっての希望で料理を作ることになったのだ。
ちなみに、味付けはアカネが担当してくれた。
意外に家庭的だ。
アカネは容姿も悪くないし、きっと大学に行っていたらサークルでモテるぞ、とか思いながら、なんだかおっさんくさい考えだな、と自嘲する。
みんなで夕食を囲った後、翌日も早いこともあって、早めに眠ることにする。
見張りは男性陣と女性陣で交代で行うことに決めた。
闘気系と魔導系のバランス的にもちょうど良い。
男性陣が先に休み、途中で交代することにした。
「コウスケ、見張りの最中に絶対こっちのテント来ないでよね!」
「誰が行くかよ!」
相変わらず二人は仲良いな、なんとか爆魔法を覚える術はないかな、などと思いながら夜は更けていくのだった。
*
夜中にエレノア達に起こされたのだが、真夜中に起こされたので眠い……。
眠気覚ましにコーヒー(なんとこの世界にもコーヒーがあるのだ!)を淹れ、焚火を囲いながら、コウスケと話す。
「そういえば、コウスケはもとの世界に戻りたいと思わないのか?」
「うーん、俺たち学校じゃあんまり友達いなかったし、将来やりたいこともなかったし、あんまり帰りたいって思わないんだよな。勉強もそんなに好きじゃなかったし」
「そうなのか」
こんなにコミュ高いのに、学校では孤立していたのか?
良く分からんが、最近の学校はいろいろあるんだなぁ。
そういえば、自分の学生時代はどんなだっけな?
「でもこの世界に来ていろいろ出来ることが楽しいんだ!魔法とかスキルとかが使えるなんて、なんだかゲームや漫画みたいだろ?」
「それもそうかもしれないな。俺もあまりにいろいろなことが起きて、今でもたまに夢でも見ているんじゃないかって思うよ」
「確かに。言えてる」
コウスケがケタケタと笑う。
「そんなこと聞くってことはさ、キョウスケは日本に帰りたいのか?」
「うーんどうだろう。少しやり残した仕事は気がかりだけど、そんなに日本に未練もないし、俺も積極的に戻りたい訳ではないなぁ。ちょっとこっちの世界は娯楽が少ないのが玉にキズだけど。」
「それなんだよなー。あの漫画の続きだけが気がかりでさ!」
どうやらコウスケも漫画が好きみたいだ。
少年らしくてとても良い。
その後は好きな漫画やゲームなんかについて話し込んだ。
コウスケには年の離れた兄がいるようで、俺の世代の漫画やゲームにも一通り詳しかった。
こっちの世界に来てこんなに話せるとは思っていなかったので、二人で時間を忘れて語りあい、気付けば朝になっていた。
朝になり女性陣も起きてきたので、収納カバンから取り出したパンでトーストを作り、みんなに振る舞った。
各自魔法で顔を洗ったりしたのち、準備をしていよいよ迷宮攻略を開始することになった。
やっと迷宮攻略に入れました!
これからキョウスケがどうやって活躍していくのか、引き続き楽しみにしていてください!
あとはエーテルの説明がちょっと不足しているように感じたので、そのあたりは活動報告で少し補完しようと思います。
では、引き続きよろしくお願いいたします。




