第十五話:森の奥で
目的地に向けてひたすら歩く。
こうして遠出してみると改めてこの世界はいろいろと整備されていることに気付く。
さすがに石畳とまでは言わないが、道はかなり平に整備されているし、おそらく魔法だと思うのだが、しっかりと地面が固められていた。
また、ところどころに街灯のようなものがあり、何かと尋ねると魔物避けの街灯ということだった。
とはいえ、街灯が壊れていたりすると当然魔物は寄ってくるし、一定以上の強い魔物になると魔物避けもうまく機能しないらしい。
そんなわけで、こうして冒険者がかりだされているんだな、と妙に納得する。
などと話していると、目的の森に到着した。
森は街道から少しはずれた先にあった。
確かに、茂みに何者かが通ったような跡がある。
「ここからは私が索敵しながら戦闘を歩くから、コウスケはサポートをお願い」
「おう!任された」
「アカネとキョウスケは後ろを注意していて」
エレノアを先頭にして、森の中を歩く。
森の中は木々がうっそうと茂っており、やや土に湿り気を感じる。
少し鳥の声が聞こえるが、魔物らしい声は今のところ聞こえない。
「……いたわ」
しばらく歩くと、エレノアが小さくつぶやき、一旦止まるようにと俺たちに合図を送る。
それを見て、俺たちは木々に隠れるように動く。
そうしてじっとしていると、しばらくしてゴブリンが1体現れた。
ゴブリンはどちらかと言うと洋風な感じで、たれ気味の長い耳をしており、頭部は髪がなく、ひょろりとした腕が奇妙に長い。
手にはこん棒のような武器を持っている。
弱いと聞いてはいたけど、間近で見るとやはり怖い。
俺は初めて見るゴブリンのは迫力に若干気圧されそうになる。
パーティで来れて良かった……。
しばらく様子を見た後、他にゴブリンの仲間がいないことを確認し、タイミングを見計らってエレノアが矢を射る。
“鷹の目!!”
「ギャッ!?」
矢は正確にゴブリンの頭部を貫き、ゴブリンは一瞬で絶命する。
ひえーさすが命中補正のスキル!
だが、その声で他のゴブリンが一斉に集まる。
こうなることも良そうして、あらかじめフォーメーションを考えていた。
“不動の守護神!!”
コウスケは躊躇することなく前に出て、盾でゴブリンのこん棒を受け止める。
そのすきに、エレノアがゴブリンを次々と仕留めていく。
やばい、俺全然役に立ってない。
あせりつつも、ファイアアローの詠唱をする。
「炎の矢よ、颯の如く敵を撃て。ファイアアロー!」
「ぎいいいぃぃぃぃいぃ!」
なんとかゴブリン1体に命中し、ひるませることに成功する。
さすがにラビリスのように1撃で倒すことはできないみたいだ。
しかし、ひるんだ隙をみて、コウスケが剣で一刀両断する。
そうして、うまくフォーメーションを崩さず戦い、ゴブリンを全滅させることが出来た。
ゴブリンは全部で6体だった。
その後も森の中を探索すると、数匹のゴブリンがいた。
幸い、そもまで大きな集落にはなっていなかったみたいだった。
残りのゴブリンも同じ要領でエレノアを中心に倒していった。
ゴブリンは素材の買い取りが無いため、討伐の証となる右耳だけを持っていく。
当然入れる先は俺の鞄の中なのだが、なんだか複雑な気持ちになった。
一通り森の中を散策し、魔物がいないことを確認できたので、街に帰ることにした。
帰りは特に魔物との戦闘もなく、夕暮れまでには街に戻ることが出来た。
*
「「カンパーイ!!」」
ギルドに討伐完了の報告をしたのち、せっかくなので、お疲れ会ということで4人で酒場で食事をすることにした。
アカネとコウスケはまだ未成年なのでジュースだ。
コウスケはちょっと麦酒を飲みたそうだったけど、アカネに止められていた。
まぁ俺も異世界だしこっちの世界では18歳から酒が飲めるみたいだからいいか、と思ったのは内緒だ。
ちなみに、エレノアは22歳だった。
ということは、残念なことに俺がこのパーティでは最年長だ
異世界物だと実は100歳みたいな流れがテンプレなんだけどなぁ……。
ま、でも麦酒を飲むのも好きみたいだし、良い飲み友達になれそうだ。
「そういえばさ、キョウスケは日本では社会人だったのか?」
討伐報酬で懐も温かくなったので、奮発して頼んだ肉料理などを囲みながら食べていると、唐突にコウスケが口を開く。
「ああ、一応な。ITコンサルをやってた」
「うお、すごいな!カッコいいじゃん」
「カッコいいなんて名ばかりの、ただのしおれたおじさんだよ」
「コンサル?何それ?」
エレノアがすでに3杯目となる麦酒をあおりながら訪ねる。
確かにこの世界の人にコンサルっていっても分からないよな。
「うーん、なんていうのかな。困っている人の問題を解決する、仕事かな。まぁ実際はなんでも屋さんみたいな感じだったけどな」
ほんと、あんなのただの都合の良い御用聞きだよ、と自嘲する。
「すごいじゃない!キョウスケはなんでも屋さんだったのね!道理で便利なスキルを持っているはずだわ!」
俺のことを知ってか知らずか、エレノアが驚いたように言う。
確かにそう考えたらなんでも屋さんだな。
そういわれると、なぜか悪い気はしない。
まぁちょっと料金はお高いけど。
「っていうか、いつも気になってたんだけどワタリドリの人達が来る日本?ってどんな国なの?」
エレノアが耳をピクピクさせながら聞く。
どうやら、エレノアは感情が耳に出るようだ。
なんだか可愛らしい。
「そうだなぁ、一言で言えば、いろいろと技術が発達してる世界だったなぁ」
「それってギルチョの通話機能みたいな?」
「確かに、そういわれてみれば、魔法もあるしスキルもあるから、こっちの世界も進んでいるのかもしれないな」
いつかギルチョで写真が撮れるようになったり、ビデオが見れたりするようになるかもしれないな。
そう考えると、日本もこっちの世界も大差ないのかもしれない。
「あとは食べ物がおいしい!」
「それはいいわね!いつか日本のご馳走を食べてみたいわ!」
「なんだか、甘いものとかお菓子が食べたくなりましたね」
アカネも続く。
確かに、日本に比べると、若干味が大味なんだよなー。
「いいわね、今後スイーツ巡りしましょ」
「はい、行きたいです!」
「太るぞー」
「もう、コウスケはほんと一言多いんだから!」
そんな感じで楽しく時間が流れていく。
一通り話終えたところで、俺も思っていたことを話す。
「そういえば、このパーティに名前はあるのか?」
「ああ、ホープホライズンっていうんだ。カッコイイだろ」
コウスケがニカっと笑う。
ちょっと中二病っぽくないか?
ほら、エレノアさんもやれやれって顔してるし。
「コウスケは言い出したら聞かないんですよ。でも、正直私もいい名前だなって思ってます。日本ではいろいろあったけど、ここでは希望をもって生きていきたいと思っているので」
確かにそうだな。
そう考えるといい名前かもしれない。
「ホープホライズンか……うん、いい名前だな」
「だろ?」
「じゃ、これからのホープホライズンの活躍を祈って」
「「カンパーイ!!」
*
「しかし、エレノアがいてくれたから何とかなったが、俺も魔法をもっとちゃんと使えるようにならないとな。」
帰り道、今日の戦いを反省しながら考える。
ちなみに、エレノアはべろべろに寄っていて「まだ飲めるわよ!キョウスケ、二軒目行くわよ!」と騒いでいたが、アカネに連れて帰られていた。
中級になって魔法の習得も一筋縄ではいかなくなってきた。
どうしたものか。
でも、“輸送”ってあんまり戦闘向きじゃないんだよな。
そういえば……。
ふと、アイテムボックスに大きな岩を格納した使ってモンスターを倒す漫画があったことを思い出す。
その戦い方をまねてみれば、もしかしたら火力不足や手数不足を改善できるかもしれない!
思いがけず閃いたアイデアにワクワクしながら、宿へと帰った。




