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ある場所での出来事

 大陸中央を横断する様に険しく聳え立つ山脈。

 魔族や人間はクルール山脈と呼ぶその山脈の一角には巨大な横穴が存在した。

 其処には青白く輝いた鱗を持つ、強大な力を持つこのクルール山脈の主が居る。

 口からは鋭い牙が生え、背中からは身体の倍近くは大きな翼を生やした存在。

 ここでは無いある世界の者ならば、その姿を見てこう呼ぶであろう。

 所謂、ドラゴンと。

 その四足は、巨体を支えるに相応しく太く逞しい。

 腕よりも太い尻尾は、振るえば木ぐらいあっさりとへし折れそうだ。

 そのドラゴンは己の巣としている、横穴の中で身体を丸めながら目を閉じていたが、ふと己の巣へと入り込む何者かの音を感じて目を開ける。

 その侵入者の姿を確認すると、愉快そうに口角上げて言葉を発した。


「何じゃお主か、ここに顔を出すのは久しいではないか」

「偶にはジジイの顔でも、見ようと思ってな。 何時くたばるか分からんしな」

「此奴め、抜かしおるわ」


 そう言ってドラゴンは愉快そうに笑う。

 己の巣へ侵入してきたのは、赤い燃え盛る様な毛並みを持つ獣であった。

 フランマウルフと呼ばれる獣の一種だが、竜とは知らぬ中では無かった。

 普通の生き物ならば、恐怖を感じて横穴に近づく事すらない。

 だが、そのフランマウルフは恐れる事もなく、ドラゴンへと近づく。


「良く来たな、と言いたい所だが、一体どうしたのだ? 此処に顔出すのは、面倒とか言っておったで無いか?」


 まるで久しぶりに帰って来た、放浪な息子に小言を言う様にドラゴンは声を掛けた。

 そのドラゴンの様子に、素知らぬ顔でフランマウルフは答えた。


「なあに、少し話をしに来ただけだ」

「話とな?」

 

 不思議そうな声でそう言い、ドラゴンは身体を起こす。

 フランマウルフは既にドラゴン目の前まで来ていた。

 そして、ドラゴンの目を射抜く様に見ながら、声を出す。


「お前が言っていた魔王が現れたぞ」


 その言葉を聞いた瞬間、ドラゴンの身体を電流の様な衝撃が走った。

 身体に生える鱗の全てが、細かく震えた。

 歓喜、驚喜、狂喜。

 その心中に浮かぶ感情は、喜びに満ちていた。


「そうか、発信者プロフェシーの予言の時が、ついに来たか……それで、魔王様は何処に?」

「何やらエルフと共に居たぞ、魔王もエルフと同じ姿をしていたが、匂いがまるで違ったわ」

「そうか……発信者プロフェシーも新しい魔王様は、エルフと同じ姿をしていると言っておったな」

「それに、魔王の周りには、これまで見たことない程エルフが多く居た。 全員、我の眷属を倒すほど強かったぞ」

「なるほどな……だがお主、もしかして魔王様と戦ったのか?」

「まあ戦ったのは、偶然だ。 むしろ戦ったからこそ、其奴が魔王だと気付いたのだがな」

「そうか……まあ、お主らしいが……して、確認だが名前の方は?」

「あぁ、其奴は自分のことをアニマキナと言ったぞ」

「……全て予言の通りか」


 そう言ってドラゴンは感慨深そうな表情をして、大きく翼を広げた。

 その様子を見て、フランマウルフはさらに言葉を続ける。


「此処へ来る前に湖の方に寄ってみたが、樹人族トレント水人族イプピアーラが増えて居たぞ。 恐らくその魔王がやったのだろう」

「もう継承の儀……いや、魔族を本来在るべき姿へと導いていらっしゃるのだな……」

「それに、我が魔王と会った場所の先には、小土族ノームの群れが在るはずだ。 魔王は、そこに向かっていたのだろうな」

「そうか……何もかもがもう始まっておるのだな」

「ディアラト、貴様はこれからどうするのだ?」

「もちろん魔王様に、お会いせねばならぬ」


 ドラゴンは、そう言って顔を上げる。

 そして、ふと、何処か遠くを見るように目線を固定した。

 暫くそうしていたが、顔をしかめて首を振る。


「今、発信者プロフェシーから、声が聞こえてきおったわ」

「ほう、予言とやらを伝えてくる奴か? 何と言っておるのだ?」

「あぁ、会うのは三ヶ月先にしろと。 ちょうどその頃にこの地に住まう魔族達の祭りがあるから、その時が良いとな」

「なんだそれは?」

「分からぬが、ワシも少し人間の国に用が出来たから、丁度良かったかもしれん」

 

 そう言ってドラゴンは横穴の出口へと向かう。

 そして横穴から出るとその大きな翼を広げた。

 フランマウフルもそれに伴い横に並ぶ。


「では、ワシは暫く人間の国へと向かう。 その間、この森のことは主が面倒を見よ」

「我がか? 眷属達には自由にさせてやりたいのだが?」

「それは構わぬ。 だが、あまり魔王様に迷惑を掛けぬようにしろ」

「……まあ良いだろう」


 ドラゴンは、フランマウルフの言葉を聞いて満足する様に頷くと、翼をばさりと広げる。

 そして翼で何度か羽ばたいて、空へと飛んだ。

 そのまま暫く旋回してた後、山脈の向こう側へとその姿を消した。

 フランマウルフはその様子を暫く見ていたが、森へと視線を戻し、ゆっくりとドラゴンの居た横穴を後にした。

 そして、ふとある場所へ視線を移す。

 視線の先には、丁度、彼らが魔王と言った人物が居る小土族ノームの村が、かなり小さくだが見えた。

 だが、直ぐに森へと視線を戻し、その森へとフランマウルフは駆けていくのであった。

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