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第1話 適当勇者

ほぼ一年ぶりに復活したはいいとして、こいつは何してんだと思われるかもしれません。自分の書いている他の連載作品もある中で新しい作品を書くなんて頭おかしいだろと。僕もそう思います。なぜこれを書こうと思ったかって?それは血迷ったから。そんな作品ですが何卒よろしくお願いします。もうひとつの「異世界でこの知識をどういかすか」も勿論投稿していく所存でありますゆえ何卒ぉぉぉ

これはこの世界とは異なる世界でのお話。

この世界の人間はかつて魔族による侵攻を受けていた。純粋な力では魔族が上回るため人間は持ち前の頭の良さを生かし兵器や防壁などを作ることで魔族に対抗していた。終わりの見えない抗争。魔王率いる魔族の統べる領地と人間の住む領地の境界線で絶えず血が流れていた。


だがそれも過去の話。遡ること1年前、人間と魔族による長き戦いは一人の人間により決着を迎えた。500年魔族をまとめていたかつての魔王は倒され、現在は人間との争いが繰り返されないよう侵攻に消極的な人間に対して比較的友好な魔王が魔族をまとめあげている。

完全に人間と魔族が打ち解けたわけではないものの今では人間の領地に移り住む魔族もいたりする。


そして現在。長い長い戦いを終わりへと導き平和をもたらした一人の人間。名声と莫大な富をもてあます彼はというと


「勇者様…!私は貴方を本気で…」


「あーあーあー聞こえないなぁ自分は誰か一人を愛するなんてことはしないの!求められることには悪い気はしないけどね。一人の女性と愛を誓ったらそれこそ他の女性を愛せなくなるでしょ?君と僕は一晩だけの関係。そんじゃ!自分を求めてる女性はまだたくさんいるんで!諦めの悪い女性は苦手なんだもう関わらないでほしいな」


人間領最大の都市「メソヘラ」の大通りにて昨晩を共にした女性を振り払い今夜の相手を探そうとしていた。


「またか…可哀想に。でもまぁ勇者様だから…ねぇ」

「もう何人目だ?ほんとに自由奔放な勇者様だ。」

「やっぱ勇者様の固有スキルの『誘人』も関係してるのかねぇ羨ましいよ」

「勇者様…素敵」


捨てられ路上に座り込み泣く女性と去る勇者の後ろ姿を見た都市のものは口々に彼のことについて話す。やってることは最低なのにどうしてこうも反感を買わないのか。その原因は彼だけのもつ固有スキル『誘人』である。


そもそもの話。この世界は2種類のスキルによって、その人間の価値が大きく左右される。1つは共通スキル。世間では「スキル」とだけ言われるもの。これは「料理スキル」や「鍛冶スキル」、「剣術スキル」などある程度の経験を積むことで取得できるいわゆる『この人はこんなことが出来ます』ということを表す証明書みたいなものである。そしてもう一つはただその人にのみ発現する特殊なスキル「固有スキル」である。固有スキルは資格的な「(共通)スキル」より強力なものが多く、またこの固有スキルは生前に発現している場合と生後に発現する場合とどちらもありえるが、そもそもほとんどの人には発現せず固有スキルを持っているだけで凄いことである。ちなみにこの二つの確認は世界の至る所にある情報水晶と呼ばれる鉱石に手を触れることで判別が出来る。


とまあスキルの詳細はこのくらいにしておいて

その勇者の持つ固有スキルである『誘人』とは簡潔にいえばカリスマ性みたいなもので何もしなくても人を無意識に惹きつける能力であり通常の人が持つとただなんかあの人のこと気になるな、あの人の言うことはなんか心にくるものがあるな、程度だが彼の場合、魔族との戦いを終わらせたという実績から人々はまぁ大体のことは多めにみてあげてもいいんじゃない彼、世界救ってんだしというある種の洗脳じみた固定観念が植え付けられているのである。またもともとイケメンである彼はその勇者という称号に上乗せで『誘人』スキルのバフが入り女性からは異常なまでに好かれ男性からはある種の尊敬を抱かれる。


まぁしかしその固有スキルにも限界はあるため最近では女を適当なことばっか言ってとっかえひっかえする様子から軽く小馬鹿にされるような感じで「適当勇者」という愛称で呼ばれているのだが。


その日、適当勇者は今晩の相手をしてくれる女性を探していた。生粋の女性好きの彼だが誰でもOKというわけではない。


彼は巨乳好きであった。


すれ違う女性の胸部を品定めしつつ街を歩きながら数時間、昼食を近くの酒場でとっていた際、お眼鏡にかなう女性を見つけた。

それは酒場で新しく働き始めた女性であった。


「しょこのぉきみぃぃぃ」


余談だが勇者は酒カスだった。


「勇者様ですよね!お代わりですか?お会計ですか?テイクアウトですか?」


『誘人』の加護によるせいか声をかける女性の頬はすでに赤くなっている。


適当勇者は彼女の目を見つめ君に決めたと言わんばかりに指を指し


「ていくあうとでぇ!もぉちろんきみをねぇ!」


そう言うのであった。

好意を伝えられた瞬間その女性はスキルの影響もあり一種のチャーム(魅了)状態となるが今回は正気を完全に奪われることはなかった。彼女は今朝酒場で客が勇者の朝の言動を話していたのを小耳に挟んだためである。それゆえこのような返答をする。


「でも…その…勇者様は今朝も一人の女性を捨てたと聞きました…私への好意もすぐに冷めてしまうのでは…」


図星をくらった勇者だがそれで折れることはしない。そもそも最近は悪行(女を口説いては捨てる)が広まっているせいでスキルによるチャームが1発で利かないほうが多いのである。だから彼は慌てることなく今度は彼女の手を握り


「そんなことはないよぉ!(大嘘)きみにはぁひとめぼれだったんだぁ!(大嘘)けさのあいてはどちらかというといっぽうてきにあいてにさそわれるかんじでぇ(大嘘)なきながらいわれるもんだからぁしかたなくさぁ(大嘘)ほかのひともそんなかんじで(大嘘)きみへのかんじょうはほんもののこいなんだぁ!(偽物)」


きまったとばかりにドヤ顔を浮かべた勇者

ここまでして堕ちない女はいままでいない。

瞳を閉じ慢心を抱きながら彼女の返答を待つ。

少し間があり彼女は返答する。その内容は勇者の予想とは違っていた。


「あの…お気持ちは嬉しいんですけどその…私っすいません」


「へっ!? いやちょっとまっーーーー」


怯えるように去っていく彼女を呼び止めようと声を発すると同時に誰かが自分の肩に手をおいた。それとともに彼の体に強烈な寒気が走る。

反射的に振り向くと背後には今朝振り捨てた女性がいた。その目には生気がなく光のない目でこちらを凝視している。強烈な寒気により酔いが覚めた勇者は酒場の女が逃げた理由はこの女が来たことによるものだということを理解した。やっかいごとを避けたかったのだろうか、それにしてもあの怯え具合は…など考えながらも勇者は今朝の女の対処にスイッチを切り替えた。実の所このように諦めきれない女性は何度か相手したことがあるからである。


「今朝はごめん少し当たりが強かったね。捨てられたって思ったのかな…でもそれは君の勘違いなんだ。別に君を嫌いになったわけじゃあない。僕は勇者だからずっとこの街にとどまれるわけでもない…僕を必要とする人を裏切る訳には行かないんだ。この街を出て次ここに戻るのは数年後かも知れない。君の気持ちは嬉しいし僕も君を好きだけど、僕の帰りを何年もずっと待たせるわけにはいかない。君の幸せを考えた上で君に僕を忘れてもらうためにあんな別れ方になったんだ分かってくれ…僕は君を好きだけど君を愛せない。」


適当勇者は持ち前の小賢しさとスキルによる軽い洗脳効果で彼女に対して彼女の幸せを願った結果こうせざるを得なかったと思わせる。こうすることで相手は自分が勇者を好きでいることは勇者の苦痛となり足枷となり勇者がこれからも人々を助ける「勇者」として生きていくために自分の気持ちは押し殺し彼を優先することが本当に彼のことを思った行動だと思ってしまうわけなのだ。


相手が普通ならば。


「それでも好き。あなたが好き。私だけを見て欲しい。」


「へ?」


彼は予想外の返答に驚き彼女の顔を見直す。その目にはやはり生気はない。ただただこちらの顔を凝視し愛を囁く。まるでさっきの言葉がまったく耳に入ってないかのように


(なんでだ!?スキルが微塵も聞いてないことなんて今までなかったはず…)


イレギュラーな事態に困惑しつつ、もう一度説得を試みることにするが


「なぁ話を」


「好き」


「…さっきの話聞いてた?」


「好き」


「ねぇ…聞こえてる?」


「好き」


「いい加減にー


「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き」


「ひぃぃぃぃ!?」


ただひたすらに愛を囁かれることにうまれてはじめて恐怖を覚えた適当勇者は強引に肩の手を払い一目散に酒場から離れた。


(なんで自分の言うことが聞こえないんだ!?伝わらないんだ!?)


街中を走りながら適当勇者はひたすら考える。そして一つの心当たりに気づくまで時間はかからなかった。


「新しい…固有スキルか?」


そう。この世界でおこる不条理や違和感は基本的に固有スキルによるものである可能性が高いのだ。それが彼女のものなのか自分のものなのかわからないが自分に原因がある可能性もあるため勇者は街の中心にある情報水晶へと向かう。勇者の足ともなればすぐに到着するわけで急いで水晶に手をあて自分の保有スキルを確認する。


そして発見した


「なんだよこれ…」


水晶に映し出されていたのは見覚えのない固有スキル。そしてその詳細が示されていた。


この固有スキルこそ、これから彼を地獄のような日々へと誘うことになるスキル。

名を『メンヘラ工場長』と言った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

固有スキル メンヘラ工場長


性的関係をもった異性を確定で状態異常「メンヘラ」とする能力。ただしこの固有スキルには解除能力がない。


状態異常「メンヘラ」の補足説明。

チャームの上位互換である催眠状態。自分に都合のいいこと以外は耳に通らずただひたすらに相手に盲目的になる。ただひたすらに自分の愛情を伝えることに専念し相手と結ばれる、及び結び続くためには手段をとわない。(手段は人による。)またメンヘラ状態の副作用として恋愛以外の思考能力が放棄されるため一種の脳みそリミッターが解除されている状態になっているため身体能力が異常なまでに向上している。




























作者のモチベにつながりますので感想や評価等していただけると幸いです。

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