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トーレスの職業登録と小さな黒い影


 15歳になった俺は仕事に就くために王都へやってきた。

ここの職業統括で登録する事で晴れてその仕事に就くことができるからだ。

 もちろん俺は隠密業になる!それは人とあまり関わりたくないからだ。異世界転生したからといって、人見知りの口下手が治るわけではない。これはもう魂に刻まれているのだろう。根本が変わらないのだからこれは仕方のない事だ。

 

 しかし、流石は王都。人や亜人、魔人に、エルフとザ異世界といった具合に様々な種族で溢れている。俺の村にも亜人種は居たがエルフなんて初めて見る。前世のゲームに出てくるように耳が尖っていて、目も切れ長。出てる所は出ていて、スタイルも良い。正に期待通…いや、イメージ通りだ。

決して服を一枚づつ脱がしていく前世のゲームようなことを期待してた訳ではない。断じてない!


 少し浮かれていたようだ。


 俺らしくもない。まぁ、村にいる間は代わり映えのない毎日と代わり映えのない人達。居心地はとても良かったが、とても地味な生活。それから一変こんな華やかなで賑やかな場所にくればいくら地味な俺でもあてられる。それは仕方のない事だ。きっとそうだ。

 そう心を落ち着けて早速、職業統括に向かうとする。


 そうして統括の前までやってくると早速試練が。長蛇の列という拷問が待っていた。いや、並んで待つのは別に苦ではない。その程度で苦痛を感じるほど柔な鍛錬はしていない。そうでは無いのだ。では、何が拷問かと言うとガヤガヤやっている者たちの中に1人ポツンといる事だ。人見知りだから余り関わりたくはないのだが、やっぱりボッチはくるものがある。学校の休み時間や遠足、修学旅行。など様々な事柄がフラッシュバックしてくる。もうその世界には自分は居ないのにその時の気持ちが鮮明に蘇ってくる。人見知りなだけであってボッチが好きなわけではない。普段は意識してその気持ちは忘れるようにしているが、こういう場面に遭遇すると心の奥底にある願望が顔を覗かせる。[俺も混ざりたい]でも、その勇気も無いし、どうしていいか分からない。だから自分には無理だと諦めるしか無い。。。


 はあ、俺もああなりたい。



 いかんいかん。そんな事を考えている時では無い。


そう気持ちを奮い立たせて、列に並ぶ。



 仕事に就くための登録作業は簡単なのか、列はどんどん進んでいく。何時間も待たされるかと思って居たがあっという間に自分の番になった。


(これなら、並ぶ前に気負っていた自分はなんだったのか。1人でもなんら問題は無かったではないか。そもそも1人で並んでいる者も沢山いたのだから。はぁ…)



 そうして俺は、村で決めていたとおり、隠密業に就いた。

うんうん!目標への第一歩だ!

 えっ?目標って何?って?


 俺の目標は〈忍者〉になる事だ。


この世界にそもそも忍者がいるのかは知らないが、無ければ作れるし、この魔法やスキルに溢れた世界ならば前世ではもやしっ子だった俺でもなれるはず!


 忍者はいい!とてもいい!


 何がいいのか。それは勿論目立たない事だ。けど、カッコいいし、出来る男ってゆう感じがして尚いい。女子とペアになれたら、もっといいが。。。。。

 ゴホンッ。

まぁそれはいいとして、とにかく無事仕事にもつけたし、早速どんな仕事があるのか見てみよう。

 隠密業の掲示板は色んな所にある。どのような仕事にも関われる事が出来るため、大体の協会の所に置いてある。隠密という仕事柄あまり目立ってはまずい事もあるため、他の仕事のように協会とかは表立ってはない。

 一応この世界のどこかにあるらしいが、まだ成り立ての駆け出しには分からない。それなりの実績ができて、実力、信用が出来れば向こうからより高度でより危険な仕事の依頼が来るらしい。


 まずは無難に護衛が必要そう且つ、秘密の多そうな小売協会へ向かった。この世界でも三本の指に入る大型協会だ。

正に生きていく上で欠かせない物を扱い、小民から王族、はては盗賊やテロ集団のような犯罪者でさえ、関わりがある物ゆえ当然といえは当然だ。

 協会の前までくると、とりあえず人の多さに圧倒される。王都故、ここにくるまでもとにかく人が多かったが、ここは更に多い。依頼する者、依頼を受ける者などの人々、亞人、魔族、エルフ、と全ての種族がいると言ってもおかしくない途方もない人混み。


…………うん。俺には無理だ。


 「はぁー。気持ち悪くなってきた。」


 人混みに酔った俺は少し離れた小さい公園で休む事にした。途中、リンゴの果実水を買い木で出来た椅子に座り果実水を一口含む。


「ふぅ。なんなんだあの人混みは。」


  と一人落ち着けていると、どこからともなく声が聞こえた。


「人などの生き物がゴミのようにいるもんね。気持ち悪くもなるよね。」


「そんな生き物をゴミのようってそんなのい…。」


そう言いかけて周りを見るが、誰もいない。


「!!はあっ?何今の。ついに一人が長すぎで空耳まで聞こえるようになったのか!おれは。それともエアー友達…。」


「うふふ。お兄さん面白いね。」


 また声が聞こえた。でも誰もいない。

 

「あっ、そうかこのままじゃ見えないかー。よいしょっと」


 また声が聞こえた。本当に頭がおかしくなったのかと思い始めた所に、目の前に小さな羽の生えた小人が目の前に現れた。目も、髪も、羽も、服も黒くでも肌は透き通るように白い何か。―――――妖精?


「うーん。似たようなもんだけど、妖精ではないよ。ボクは精霊の幼体だよ。」


「おおおおお。しゃべった!!」


「失礼な。こう見えても将来有望な精霊の見習いだよ。」

と黒が目立つ精霊と名乗るものは頬をプーっと膨らませて地団駄を踏んでいる。


「いや、すまない。初めて見たものでぬいぐるみが何かかと思った。」


「ええ!ぬいぐるみ??ひどい!女の子に向かってあんな無機質なものと一緒にするなんて!!」

今度は手のひらに黒い魔力を集め出して怒る。これはちょっとヤバい。そう思い必死に謝る俺。


「ごめんなさい。本当にごめんなさい。そんなつもりは無いんだ。余りにも可愛らしいのでつい……。」


「えっ!可愛らしい?……そ、そういうのは……うん。もっと言って。」


 なんなんだ。怒ったり照れたり。忙しい生き物だな。ってか精霊って生き物なのか?しかしなんだ。そんな者がなんでこんな所に、しかも俺のような陰湿な人間に声をかけて来るんだ?

 それをそのまま聞いてみる。


「あの、君はなんで俺に声をかけて来たんだい?」


「え?うーーーんと。黒かったから?」


「黒かったって。」


「でもそもそも、声をかけても普通は聞こえないんだけどな。精霊の声って。お兄さんはきっと精霊と縁があるんだろうね。かなり珍しいけど。」


「そう、なのか?」


「うん。精霊は神の使いでもあるから普通の人には見えないし、聞こえないの。」


「ふーん。そうなんだ。」もしかして、転生特典というやつなのか?


「あ。ごめん。ボクは闇精霊のリューナ。」


「リューナ。あ、俺はトーレスだ。よろしく。」


「トーレスだね。よろしく!ところで、なんで一人で黒いオーラを漂わせていたの?」


「えっ?ああ。俺は人見知りで、人混みが苦手なんだ。その先の小売協会の人混みにあてられて気持ち悪くなってしまったんだ。」


「協会??ああ。そうか、お兄さんは職業人なんだね。人見知りじゃ、職業人として生きるには大変だね。」


「職業人??」


「あ?…うん。働く人の事だよ。」


「ああ。そうだな。まだ就いたばかりで仕事はまだだけどな。早速初仕事をしようと思って来たんだけど、この有様さ。」


「なるほどー。それなら、人が少なそうな所にいけばいいのに。」


「あ。うん。確かにそうだな。アハハ。」


「あ?笑ったー。いいじゃん。それで行けば人見知りでも、うまくやれるよー!」


「え?そ、そうかな?」って、なんで照れてるんだよー俺。


「うんうん。そうだよ。なんかトーレス面白いね。あっ!!あのさ、もし迷惑じゃなかったらこれからトーレスと一緒にいてもいい?ボク見習い中だから修行の身なんだ。色んな物を見て、感じて、心を()()()()()で満たさなきゃならないんだ。トーレスと一緒なら沢山得られそうだから!ねっ!どう?きっと役にも立つよ!」


 えっ、まじか!女の子(精霊でとっても小さい)と一緒?この俺が?いいのか?犯罪じゃないの?幼児的な部分で。そもそも、そんな趣味ないし。えっ!でも、他の人には見えないみたいだし。うーーん。


「わ、わかった。いいぞ。」

と悩んだ末受け入れる事にした。決してやましい気持ちはない!ほ、ほんとだ。うん。


「わーい。ありがとう!トーレス!これからよろしくね。」


 なんだか嬉しそうだし、まっいいか。

 その笑顔を影にあった黒いものを見逃している事に気づくのはもっと先のお話。


「で、トーレス。これからどうするの?」


「そうだなー。もう疲れたし、宿でもとって休もうかな。」


「そっかー。じゃあ。少し買い物でもしながら探そうよ。」


「おっけー。じゃあ、行こうか!」



 そうして、俺と新しい仲間?リューナと共に買い物をしながら宿に入った。部屋に入るまえに、赤い髪の女の子に舌打ちをされて心がチクッとしたのはここだけの話。はぁー。彼女ほしいなぁー。




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