レイラと一緒にお仕事だ。
「ふぁ〜。あーよく寝た。」
初仕事を無事終え、ぐっすりと眠れたわたし。
友達も出来たし出足好調だね。今日は何しようかな?
とりあえずは朝ご飯か。腹が減ってはなんとやらって。あら、腹ってわたしったらなんてはしたない。。まっいいか。
そうと決まれば即行動のわたし。早速下にある食堂へ向かう。部屋を出て階段に向かうとちょうど上に登ってくる人がいた。
ってあいつ昨日の―真っ黒くん―じゃない。うわー。
朝から見たくないわー。相変わらずまで全身真っ黒だし、こっちまで暗くなるわー。と思いつつも一応挨拶する健気なわたし。
「おはようございます、」
「……よう。」
ん?んん?
声ちっちゃくて聞こえないよ。ほんと何なのあいつ。
真っ黒くんとすれ違った後、ブツブツ言いながら下に降りていると相当眉間にシワが寄っていたようで、苦笑いをしながらレイラが声をかけてきた。
「おはよう。ミミリー。朝からどうしたの?そんなむずかしい顔をして。」
「へっ?あっ。レイラおはよう。わたしの顔がどおしたの?」
「ウフフ。だから眉間にシワを寄せてどうしたの?」
「い、いや。ちょっと…」
変な所を見られたわたしは気まずいながらも真っ黒君の事を話した。
「ああ。あの真っ黒い子ね。彼も貴方と同じくらいにここの宿に泊まってるよ。確かに貴方の言うように全身から黒い何かが漂ったらから声をかけられなかったんだけど。」
「だよねー。あいつ、なんか陰気臭いよね。声掛けってたって無視だもん。」
わたしが頬を膨らませながら鼻息を荒らしながら話すと、レイラは微妙な顔をして苦笑している。 解せぬ。
だって、だって、あいつ何回も人の事を小馬鹿にしたように無視して。気を取り直して挨拶したって、蚊の泣くような声だし。なんなのよ。本当にわたしは激おこプンスカなんですからね!
「まーまー。ミミリー。とりあえず朝ご飯食べましょ?それでここまで来たんでしょ?」
「あ、うん。そうだね。朝ご飯に罪はないね。美味しく食べましょう。」
そう言って二人で朝ご飯を食べる事にした。今日はパンにハムと卵焼きだ。格安価格なのだから十分豪華でしょう。
ガツガツ食べる事でさっきの事の溜飲を下げてるとレイラが仕事の提案をしてきた。
「ミミリー。今日はどうするの?折角だからさ、一緒に見にいってみようよ。」
「うん!そうだね。二人で出来る仕事もあるかもしれないもんね。」
わたしは運び屋さんで、レイラはレンジャーだけど二人の能力が活かせる仕事があるかもしれない。もちろん。アカデミーも別々なので仕事が乗ってる案内板も其々にある。だから両方を二人で見に行ってみることにした。
朝ご飯を食べ終え、身支度を整えると宿の入り口に集合した。
「おまたせー。ミミリー。じゃあ、行ってみようか!」
「うん!レイラ、行ってみよー。」
途中雑貨屋さんとかに寄り道しながらアカデミーへ向かう。二つの仕事は似たところがあるのか、其々のアカデミーも余り離れてなかった。先にレンジャーのアカデミーに着いたのでそっちを先に見にいくことにした。
中は運び屋さんとそんなに変わった所は無く入って直ぐの所に案内板があった。唯一違ったのは傭兵を雇うところが無かったくらいかな。レンジャー自身ある程度戦闘能力を持ってることと、暗に潜む事も有るからだろうと思われる。
「さーて。今日は何があるかなー?」
「やっぱり黒はないね。どうする?白?黄色?」
「流石に黒は無いよ。寧ろ無くていいよ。それは平和な証拠だし。」
「うん!そうだよね。」
「じゃあ。今日は二人で行動出来るから黄色やってみようよ。」
「うん!そうしよう!!」
そう言って黄色の仕事を見てみると良さそうなのがひとつあった。
アーガンス北にあるドレイド山に棲むはぐれドラゴンの素材を手に入れ、運ぶ事だった。はぐれドラゴンは本来ドラゴンが住むマルダから追放、若しくは放浪している一匹狼ならぬ一匹ドラゴンだ。大概は追放された物で、ろくな奴がいないらしい。半端者のドラゴンだけにそれほどの脅威も無いが、腐ってもドラゴン。油断大敵だ。
素材なら何でも良いと言う事なので、鱗のカケラや唾液など本当に何でも良い。だから危険度もそんなになく、黄色なのだろう。上手く作戦を立てて挑めば何かしらは手に入るだろう。
「これいいね。私が上手く罠に嵌るからミミリーが薬屋さんまで運んでね。」
「うん!わかったー。任せてー。」
早速良さげなのが見つかってよかった。難易度もちょうど良いし、素材の種類によっては報酬も高額のようだしなかなか良い仕事なんじゃないかな。うふふ。
「じゃあ。私が仕事受けとくから準備したらアカデミーの入り口に集合って事でいいかな?」
「おーけー。それでも大丈夫だよ。じゃっ、後でね。」
そうして、準備をし入り口に集合した私達は早速ドレイドの方へ向かう。片道1日位の距離だから移動は2日の行程。後は作戦次第かな。
二人でのんびり歩きながら向かう。元々鉱山でもある為、鉱夫さん達も良くそこを通る。だから道も比較的綺麗でとても歩きやすい。順調に辿り着いた時は日も落ちかけていた。
わたし達は、野宿の準備をする。食事は途中わたしが石を投げて狩った、ウサガエルと羊鳥だ。因みに羊鳥はメェーと鳴く。解せぬ。
テントを空間収納から出し、設置すると早速夕食の準備だ。
レイラがなんだか呆気に取られていたようだが、なんでだろう。まっいいか。
そんなレイラは流石レンジャー。魔法で簡単に火をつけてくれた。
いいなぁー。わたしも魔法使いたいなぁ。今まで教えてくれる人居なかったから使い方わからないんだよねぇ。後で教えて貰おうっと。
「しかし、ミミリーは石投げるのうまいねー。私じゃあんなな遠くまで投げられないよ。」
「そうかな?わたしの田舎では石の遠投大会とかあったから村では皆んながあんなかんじだよ。まぁでも、わたしが一番だったけどね!」えっへん!石投げは得意なのだ。
「へぇー。そんなのがあるんだ。じゃあ、最悪は明日のミッションはミミリーにドラゴンの足に石を当ててもらって転ばせよう。」流石に冗談だけど。いくらミミリーが、上手でもドラゴンに石は無いわねぇ。でも何故かやる気に満ちてるわね。まぁでもそれは流石にないわー。うん。ないわー。
そうやって初めてお友達と野宿を楽しんだわたしは夢心地で眠りについた。明日も爽やかな朝が待ってる!
次の日さっさとテントを片付けて目的のドラゴンの元へ向かう。鉱夫さん達の仕事場の洞穴を通り過ぎ山を登る。木々が少なくなり始めた頃大きな岩の上で眠るはぐれドラゴンを見つけた。ゲームにも出てきそうな緑色のドラゴン。ドラゴンの体の色は主に属性で大きく変わる。赤は火、青は水といったように色そのままだ。今回は緑だから風属性のようだ。ドラゴンの種類も下等種のようでそんなには大きくは無い。けれどよく見てみるとそれは違った。そのドラゴンが持つ鱗は鋭い刃になっており、尻尾も二本ある。しかも片方の尻尾が白っぽい青だ。つまり、普通のドラゴンではない、ウインドリードラゴン亜種だった。そのドラゴンは風属性の中でも丈夫なドラゴンでしかも、白っぽい青は氷属性だ。
このウインドリードラゴンは風と氷を併せ持つ。二人には荷が重いと言えるだろう。
「ねえ。レイラ。どうする?あのドラゴンやばいでしょ。想像していたのと全然違うよ。尻尾2本あるし普通のドラゴンじゃないよね?」
「うーん。そうねぇ。ちょっとキツイかもね。」
「だよね。流石にまだわたし達には危ないよね。」
「でも、折角だから少し試してみてダメなら直ぐ逃げるって事でちょっと、やってみない?出来ればラッキー見ないな感じでさ。」
「えっ?んー。そ、そうだね。分かった!やってみよう。」
ここまで来たのだからと、ちょっとやってみることにしたわたし達は早速レイラの作戦の罠をはる。
罠は至って単純で睡眠効果のある肉を食べさせて、その隙に何かを得るという何度も無謀で短略的な作戦だった。
しかし、まだ駆け出しの二人にはそれが無謀だという事がわからない。
「よし。準備できた。ドラゴンが向こうを向いたらミミリー肉を投げてね。私は念の為退路を作っておくから。」
「うん。分かった。わたしもいつでもいいよ。」
肉を投げる準備をするわたし。レイラは逃げるためにドラゴンの注意を払う為の生肉をあちこちに設置する。そうして、ドラゴンが向こう側向いた瞬間わたしが肉を投げた。
その肉は上手くドラゴンの足元に落ち、ドラゴンが向きを戻した時はちょうどいい位置にあった。ドラゴンは直ぐにその肉を発見する。鼻を近づけ匂いを確認している。しばらく匂いを嗅いだドラゴンは一口パクリ。。
「やったね。ミミリー。肉食べたよ。後は寝るのを…ってやっぱり寝ないかぁ。」
ドラゴンは何の問題もなく美味しそうに肉を食べ、他にもないかと辺りをキョロキョロ見ている。そうして、わたし達と目が合う。
「ガオーーーー!。」
凄まじい雄叫びと共に氷のブレスが飛んでくる!
「うわーーー。やばー!逃げろー。」
直ぐ様逃げるわたし達。ブレスは威嚇のようだったようで、わたし達の頭上を飛んでった。しかし、ドラゴンは羽をバタつかせこちらに飛んできそうだった。一目散に走って逃げようとするも、途中でレイラが転んでしまった。
「レイラ!!!」
「うっ。うぅっ。」
ドラゴンはご馳走だと言わんばかりに大口を開けてレイラ目掛けて飛んでくる!
「ど、どうしよー。このまま、じゃレイラが…」
慌てふためくわたし。ドラゴンは凄まじいスピードでレイラ目掛けて飛んでくる。
その時わたしの視界に鉱夫さんが落としたらしき、拳大くらいの鉱石が落ちていた。悩む時間もないわたしは、スキル『怪力』を発動させ全力でその鉄鉱石をドラゴン目掛けて投げる!
もうダメだ。と頭を抱えるレイラ。
その頭上から襲いかかるドラゴン。いただきまーすと聞こえてきそうなほど、目を爛々とさせて。
そのドラゴン目掛けて飛んでいく鉄鉱石。
(そんなんじゃ注意を引くことしか出来ないよう。)
と死を覚悟したレイラ。
しかし、その鉄鉱石はヒュン!と目で追えないほどのスピードで、ドラゴンの頭を貫通した。貫通した鉄鉱石はその後ろにあった岩をも貫き貫通していく。そして遠いところで、ドコーンと岩に突き刺さったようだ。
頭を貫かれたドラゴンはレイラの一歩手前に落ちてくる。
「はっ?えっ…ちょっ…なに?」
言葉にならないレイラ。そして。わたし。
「う……そ。」
「ちょっ。ミミリー。今の何??」
「い、いや、わたしもビックリ。ただ怪力のスキルを使って鉄鉱石を投げただけなんだけど。。」
「怪力のスキルって、いやいやいくらなんでも、えってでもちょっと待って。あの威力。。」
「どうして??」
「多分だけど、そのミミリーの怪力は普通の怪力じゃないと思う。怪力にも色々あるんだよ。例えば人の怪力。虎の怪力など、怪力にもなんの怪力なのかって、種類があるんだ。」
「えっそうなの。でも、なんの怪力なの?」
「それは流石に調べてみないと分からないな。職業統括にスキルの種類を調べられる部門があるからそこで今度調べてみよう。」
「うん。わかったー。」
そうして、辛うじて生き延びた私たちは、もう一晩ここに泊まってアーガンスに帰ることにした。ドラゴンはそのまま丸ごとわたしの空間収納にしまって…それを見ていたレイナの冷たい視線に気づかないミミリーであった。