006.もう一人の転生者?
本編といずれ密接に関わってくる!かも・・・?
私は【アルトリア】という世界で生を受け、ある国の男爵家の令嬢だった。生活は順風満帆で、母に似たのか容姿も悪くなかったと思う。
勉強もそれなりにできたし、剣術も頑張っていた。ただ、困ったことに私はほとんど魔法が使えなかった。
生活魔法を除くと、かろうじて無属性魔法ができたくらいだった。
そのせいで身体強化と剣術にのめり込んでいったんだと思う。
容姿が良くても男勝りな私に嫁の貰い手などいるわけもなく、政治に使えない私を両親はそそくさと騎士学校へと送った。
しかし、騎士学校を卒業した後は第二騎士団に所属することが出来た。
第二騎士団と言えばかなり有名な騎士団で、在学中の私も憧れていたものだ。
ただ実際に所属してみると、そこは変な人や噂の悪い人もいて、正直居心地はあまりよくなかった。
こんな私でも、性的な目で見てくる下品な輩もいて、本当に困ったものだった。
それでも私と同期だった子は仲良くしてくれて、よくご飯を一緒に食べたりしたのを今でも覚えている。
今では記憶が曖昧で、その子の名前は忘れちゃったけど、良くしゃべる子だったのは確かだ。
そんな私たちに転機が訪れたのは騎士団に所属して2年目のころだ。
第三王女様の護衛を命じられたのだ。第三王女様と言ってもまだ5歳になったばかりだと聞く。私と同期が選ばれたのは、単に歳が若くて女だからだろうといわれている。
いつかは実力だと認めさせてやるんだと、このころは考えていたっけ。
護衛任務は何回か経験したけど、第三王女様の護衛は初めてだ。
緊張していたけど、実際に王女に会ったらその緊張もどこかへ行ってしまった。
その可愛さたるや、筆舌にし難い。この人のためなら命を捨てようとさえ覚悟したものだ。
今思えば・・・その覚悟が無駄にならなかったのは騎士としては、有難いことだったのだろうか?
他国への遠征中、野営をしていて私と同期が夜番をしていた。
この任務が終わったら休暇で何をしよう!とか買い物に行こう!とか美味しいモノ食べよう!などいつものように彼女はよく喋っていた。
私もそんな話を聞くのが好きだったから、うんうんと話を聞いていた。
そんなときにあいつが突然現れたのだ。
Bランク魔物の中でも夜に会ったらAランクと言われる、『ナイトヴァイパー』という蛇型の魔物だ。全長は4mを超えるだろう。
本来なら、野営しているこの場所に生息しているような魔物ではないのだが・・・
護衛についていた騎士のうち、私と同期以外はすでに他の人たちを逃がす準備をしており、ナイトヴァイパーの相手は私たち二人の仕事だった。
ナイトヴァイパーは姿こそ大きく、闇に紛れる習性をもつけど、2人掛かりなら倒せない相手ではないはずだった。
それでも、慣れない夜戦、護衛という状況、そして若干の体の疲れなど。
いろいろな要因があったと思う。ただ決定的な要因は同期も私状況だったということだろうか。
なんとか時間を稼ぎながら戦っていたが、その時はすぐに訪れた。
ナイトヴァイパーが大きく口を開けて同期へと襲い掛かったのだ。
そこからはほとんど反射的に身体強化を使って彼女に近寄り、突き飛ばしたと思う。
私に噛みついてきたナイトヴァイパーの頭を素早く掴み、力いっぱい剣で首を切りつけた。。
身体強化を全開で使ったため、なんとかギリギリ首を刎ねることが出来た。その時に私の剣も折れたのだ。
騎士としての剣も、私の心の剣も。
そこからはよく覚えていない。
なんとなく同期にもっと甘いものが食べたかったとか、私の分も食べてとか、あなたのお話面白かったよとか。
取り留めのないことを喋っていたと思う。
死ぬ間際、なんとなくだけど第三王女様が傍らにいた気がしたので、女性は強くあれと教えてあげた。
王女様は優しすぎる面があったから、いつか男性にいいようにされても嫌だったから。
短かったとはいえ、剣の一生も悪くなかった。でも次の人生があるなら平民として生きたいと願った。
家族や兄弟とも仲が良くて、魔法を使えるようなそんな人生に!
そして、私の生は終わった――――――はずだった。
目が覚めたら私は泣いていた。最初は「助かった!」とさえ思ったものだ。
しかし、私の人生は全く別なものへと生まれ変わった。全く思い通りにならない体、声も出ないし、生理現象が我慢できない。
どうやら私は赤ん坊らしいのだ。
もしかしたら人が死んだら次の人生に行けるという輪廻なのかもしれない。
・・・でも輪廻って、記憶もなくなるって聞いてたんだけど。まぁ、いいよね。今の人生に前の人生は関係ないんだから。
少しの間は目もあまり見えなかったけど、少しして分かったことは私の家は田舎にあるようだった。
両親は私のことを可愛がってくれるし、今回の人生は死ぬ前に願った通りになっているのかもしれない!
そして私には一人の兄がいた。かっこよくて頭がよくてなにより私のことを構ってくれる。
兄は魔法が得意なようで、私が快適に過ごせるように常に気遣ってくれているようだった。
幸い、話している言葉は前世と同じ言葉だったのですぐに理解できた。
「ふふふ、私たちの可愛いシア」
私の新しい名前はシアというそうだ。母はエムリア、父はラルク、お兄ちゃんはアウルだ。
お兄ちゃんは両親の目がないと、すぐに両手を繋いでくれる。お兄ちゃんに手を繋がれると体がポカポカして温かくなるからとっても好きだ。
「シアは可愛いな~、早くシアと喋れるようにならないかな~」
うふふ、お兄ちゃんは私のことが大好きみたいだなぁ。私も好きだよ~!
私も早くお兄ちゃんと喋りたい!
「あうあうあう!」
くそ~、うまく喋れない。お兄ちゃんに伝わってるかな?
「シア・・・お前まさか」
えっ!伝わったの?!ちょっと恥ずかしいかも!
「お腹すいたんだな~?今お母さん呼んでくるからね~」
って違うじゃん!もうお兄ちゃんったら・・・。それでも気遣ってくれてるんだよね。
自分だってまだ遊びたい盛りだろうに・・・。
待っててお兄ちゃん!私頑張ってすぐに喋れるようになるから!
ぐぅ~・・・。
やっぱりお腹すいた!!
本編で書く余裕が無くて、【外伝】としました。今後、ちょこちょこシア編も書く予定です。
これからもなるべく更新できるように頑張ります。
【外伝】はゆったりとした話も書きたいですね。