005.奴隷の休日②
ルナ視点となります。
今日は休日だ。普通の人だったら休日があるのはまぁ、変なことじゃない。
けど今の私の身分は奴隷で、すでに買われている。
と言っても着ている服はかなり上等な物だし、指輪なんかのアクセサリーも付けている。
愛しのご主人様からいただいた大切な私の宝物だ。
私を買ってくれたのはまだ10歳そこらの少年だった。まだ子供なのにどこか大人びてて、それでいてお金もたくさん持っている。
顔はまだ幼いけど、将来絶対格好良くなるとわかる顔立ちをしている。
私と一緒に買われたのはヨミと言う人で、商館では私と仲が良かった人だったから少しホッとした。
買われてから、最初は不安だったけど私の怪我を完璧に治してくれたのを今でも覚えている。
ご主人様は辺境の生まれとかで常識を知らないと言われたが、実際に一緒に暮らしてみると確かにその通りだと思った。
奴隷の私たちに美味しいご飯を食べさせ、奇麗な服を着せ、そして奇麗なアクセサリーまでくれる。
ましてや今日の休日だ。それに休日は今日だけに限ったことじゃない。
結構頻繁に頂けるのだ。そんなときはヨミと一緒に冒険者として働くこともある。
そして今回の休日は、そのヨミと一緒に王国内にある迷宮を訪れている。
「ねぇルナ、さっきから何1人でぶつぶつ喋ってるの?」
「ふぇっ?!あっ、私声に出してた?!何でもないの!気にしないで!」
「ふーん?もう迷宮内なんだから一応気を付けてね?」
「あはは、ごめんごめん」
危ない危ない。どうやら声に出てたようだ。
もうここは迷宮の中だから注意しなきゃ!
「それにしてもヨミ、今日はなんで36番の迷宮なの?」
「以前、世直しの一環で悪徳商会を潰したのは覚えてる?」
「うん、覚えてるよ」
「そこの商会が今では更生してちゃんとした商会に生まれ変わってたんだけど、今までに悪さしすぎててちょっと困ってるらしくてね」
「ふんふん、それで?」
「なんとか汚名返上するためにセールをするらしいんだけど、その商品をどうにかしたいって泣きつかれたってわけ」
「あぁなるほど。だから36番の迷宮ってことなのね」
36番の迷宮は生活の必需品となる、野菜、肉、塩、などが一遍に採取することができることで有名だ。
ただそのどれもが採取難易度が高く難しいことでも有名なため、高ランクの冒険者でしか入手は困難とされている。
品質もかなりのもので、この辺だと上位10位以内には入ってくるくらいには高級品なのだ。
ただし、宝箱等は発見された試しがなく、ボスが極稀に落とす程度なのだそうだ。
だから余計に冒険者には人気が無く、ここの素材が常に品薄なため商人に人気なのだとか。
「そういうこと。私たちはご主人様のお陰でもっと難易度の高いナンバーズ迷宮で鍛えているし、なんの問題もないわ」
「そうだね。あんまり遅くなるとご主人様に心配かけちゃうし、早く行こ!」
この迷宮が何階層まであるのか分からないけど、素材確保のためならそこまで深くは潜らなくていいよね。
「ここの迷宮って、4番の迷宮と違って普通に魔物を倒すと肉とかの素材が落ちるんだね」
「ふふ、そうね。4番でほとんど落ちないから、生きているところを剥ぎ取っているものね」
そう考えるといつも私たちがやっているのってかなり残虐非道なのでは・・・
「うふふ、ルナ?所詮は魔物よ。気にしたらこちらがやられてしまうわ。この世界は弱肉強食なのだから」
「う、うん。そうだね…!」
こ、怖い!たまにヨミが怖い!言ってることはその通りなんだろうけど、魔物を殺しながらそれ言うとなんだか猟奇的だよ!
【5時間後】
「だいたいこんな所かしら。ルナの収納もそろそろ一杯?」
「うん、これ以上は厳しいかな。そろそろ戻る?時間も大分経つし」
「そうね…。正直、20階のボス部屋を目の前に帰るのは勿体ないけど、どうせならここは今度ご主人様と来ましょうか」
たった5時間でここまで来れたのも、ご主人様がくれた指輪のお陰だろう。
空間把握があるだけで進み方が倍以上早くなるからとても重宝している。
急いで地上へと戻ると、昼を過ぎたあたりなので、収納から適当にご飯を取り出して食べた。
「じゃあ行きましょうか」
「えっと確かナルミヨ商会、だっけ?なんだか自分たちの名前が由来って恥ずかしいね」
「そう?いずれご主人様が国を持たれたときのために今のうちから目をかけてるのよ?その名前が、私たちが由来って素敵じゃない?」
ご主人様の国、か。うん、それは見てみたい気もする。そこでだったら私や私の家族も・・・
っていけない!こんなこと考えちゃ駄目だ!
「国って、ご主人様はまだ10歳だよ?国を興すにしてもまだまだ先じゃない?」
「ふふふ、そうかもしれないわね。でも、そうなったら面白いと思わない?」
「まぁ、思うけど・・・」
ヨミは本当にご主人様が好きなんだなぁ。ふふ、私も負けないよ!
雑談しながら移動していると気付けば商会の前についていた。楽しい時間ってのはなんでこんなにも早く過ぎちゃうんだろう?
「あぁん?お前ら奴隷が俺らの商会になんの用・・・・すっすっす、すみませんでしたっ!!!姉御たちとは思わずっ!」
あぁ、前回とは服装とか髪型変えてるからかな?
私はまだ良いけど、ヨミは怒って・・・るよね~。
ちらっと見ただけだけど、笑顔なヨミの背後に、怒り狂ったレッドサイクロプスが見えるもん。
解説ちゃん『4番迷宮の33階層に出てくる魔物で、大きくて力が強いのが特徴だよ!』
説明ありがとう解説ちゃん。
「早くお前らのボスのところへ案内しなさい」
もはや命令形だ!私達より年上で強面のおじさんたちに向かって、ここまで強気になれるヨミほんとカッコいい。
ご主人様の前だとあんなに女の子らしいのに。
ご主人様の前だと、いつもより多めに『うふふ』って微笑んでるのは作戦なのかな?
私も見習わなきゃ!
「ルナ、早く行くわよ」
「あ、待ってー!」
私達が部屋に入るなり、おもむろに商会長が椅子から立ち上がって私たちの前に正座した。
・・・ヨミが怒っていると本能的に察したのかもしれない。
「ヨミの姉御にルナの姉御。も、もしやもう何か素材を調達していただけたので?」
「・・・・」
これでは話が進まないので商会長に教えてあげるか。
「さっき店の前で――――」
説明してあげると商会長は顔を真っ赤にさせた後に真っ青になった。
「そいつはつい最近入った新人でして・・・。こ、今後はこんなことが起こらないように徹底致しますので、どうかお許しを・・・」
「全員呼びなさい」
「た、ただちに!!」
【2時間後】
「あぁっ!蹴っていただいてありがとうございますっ!」
蹴られているというのに感謝とは、不思議な体験だ。
「今後はもっと新人の教育に力を注ぎなさい!・・・返事は」
『はいっ!』
うーん、ヨミ式調教術か。・・・これは見習わなくていいかな。
このあと素材をたくさん卸して、今日は解散となった。
後日、売り上げの3割を貰う約束となっている。
少なく感じるかもしれないが、残ったお金でさっきみたいな不良崩れや行き場のない人なんかを雇っているらしい。
商会長はあんなんだが、本当は良い人なのかもしれない。
家に帰る頃には丁度夕飯時になっていて、家に入ると凄く良い匂いが漂ってきた。
「ただいま帰りましたご主人様」
「うふふ、ご主人様今戻りました」
あっ!!やっぱりまた『うふふ』って出てる!
本当はドSなのに、ご主人様の前ではすっごい女の子だ。
これはもはやご主人様が凄いと言っても過言ではないのでは?
うーん・・・
まぁ、どっちでもいいか!2人は私の大事な人だ。もうすぐミレイも王都に来るって話だし。
またみんなで美味しいご飯食べましょうね?ご主人様!
たま~に更新予定です。
本編更新しろ!って言われそうですが、息抜きなので!大事なことだからもう一度言いますが、息抜きなので許して!笑
【外伝】で本編の総合評価を超えるのが最近の目標です。笑