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003.進め!レブラント商会!①

私の名前はレブラント。商人を生業としている。


まだ商会としては弱小だが、見る目には自信がある。今はいろんな村々を回って行商をしているところだ。


行商というのはかなり大事である。色んなところとパイプが作れるし、いざと言うときに商品の仕入れがしやすい。


ただ、貧乏暇なしとはよく言ったもので、働きづめなのは間違いない。


それでも私には王都で一番になるという夢がある。いつかは王都に大きな店を構えて、大商いをしてやるのだ。


そんな野心を胸に今日も私は辺境へと向かっている。


今日訪れるのはランドルフ辺境伯領にあるオーネン村という所だ。


ここら一帯で採れる作物は美味しいものが多く、王都での売値も高い。


それに人もいいので商人としてはやりやすい場所なのだ。おっと噂をすればいつもお世話になっているお客様だ。


「お、いたいた。おーい、レブラント!」


「おや、これはこれはラルクさん。お元気そうですね。今日もいつものやつでいいですか?」


彼の名前はラルク。見た目はかなり筋肉質で厳つい印象だが、いざ話してみると気さくでとてもやりやすい相手である。


いつも消耗品や日用品を買ってくれている。


しかし今日はなにやら荷車を曳いており、その上には物凄い存在感を発するものが乗っかっている。


「あぁ、いつもの消耗品を頼む。それとな、今日は売りたいものもあるんだよ」


売りたいもの…。彼が持ってきているのは確実にそれしかない。


「・・・まさか、売りたいものって"それ"ですか?」


「あぁ、実は家の近くの森で出てな。たまたま仕掛けてた罠で綺麗に捕れたんだよ」


いや、本来隠密熊は狡猾で頭が良く、余程のことがない限り罠にかかるようなヘマはしないのだが・・・


だが、見れば見る程奇麗に死んでいる。眠っていると言われれば信じてしまいそうになるほどだ。


そしていつもはいなかった子供がラルクさんの隣にいる。


普通の子供とは思えない程に落ち着いているように思える。これくらいの年の子だともっとそわそわしているものだと思うのだが…。


なんとなくの違和感はあるものの、商売は商売。それもこれはかなり美味しいほうの商売だ。


「ここまで綺麗な隠密熊ですと、貴族の方々が剥製を欲しがる可能性があります。他にも素材にすることも可能なのでかなりの高値がつくでしょう。幸い先の街で大口の取引があったので資金はあるので是非買わせていただきますが。本当に罠で仕留めたのですね?」


「あぁ、そうだ」


おそらく嘘なのだろうが、この際この隠密熊の出所はいいだろう。


これを上手く売ることが出来たら、貴族とのパイプが出来るかもしれない。それに間違いなく金になる。


とりあえずは低めに見積もっておいて様子を見させてもらおう。


「そうですか・・・。この品質な上に個体としても立派ですので、そうですね。金貨100枚でどうでしょう?」


金貨百枚と聞いて少年は驚いてしまったようだな。まぁ、無理もない。こんな大金を辺境で見ることなどなかなかないものな。


「なぁ、レブラントよ。俺たちの仲じゃないか。下手な探り合いは無しにしようや」


おっと…。さすがはラルクさん。私の考えていることなどお見通しという訳ですか。


しかし、ここでさらに交渉を続けるのは愚策だろう。なんてったって今後ももしかしたら同じような商売が出来るかもしれないのだから。


「はぁ・・・。わかりましたよ。金貨170枚。これ以上は出せません」


「よし、それでいい。あと、あればでいいんだがテン菜の種なんか今あるか?」


テン菜の種?あれは確か帝国のある一部で栽培されていると言うやつだよな。


たしかちょっと前に帝国に行ったときに、行商仲間が要らないってんで買ったんだったか。


「テン菜ですか?ちょっとでいいならありますけど。でもどうするんです?持っている私が言うのも変ですが、これは育てるのがかなり難しいらしいですよ?」


行商仲間も言っていたが、これは栽培がかなり難しいと聞く。そのために売れなくて、私の元へと回って来たのだ。


「あぁ、実は息子が育ててみたいって言うんでな。まぁ、5歳になった誕生日のプレゼントみたいなものだよ」


息子?あぁ、この子か。おおかたラルクさんの真似でもしたくなったのだろう。


なぜテン菜なのかは不明だけど、この頃の子供は親の真似をしたがるものだ。かく言う私も父の真似をして商人ごっこをしたっけ。


「これだけで金貨20枚です。隠密熊の料金から引いときますね。あとなにか欲しいものはありますか?」


「そうだな、アウル他に何か欲しいものはあるか?」


「短剣が欲しい!!」


たんけん。短剣?こんな子供が?・・・いや、子供でも男の子だ。きっと好奇心かなにかだろう。


「ほら、短剣はこんな感じだけどどれがいい?」


適当に簡素なナイフのようなものを出してあげた。もっと立派なものもあったが、これくらいがちょうどいいはずだ。


「全部ちょうだい!」


「「えっ?」」


「全部かっこいいから全部欲しい!」


・・・この子は大人びて見えるのは何故だろう。だがまぁ、お金がたくさん貰えて少しは舞い上がっているのかもしれない。


その後もその子が大豆をみつけて買ってくれたが、あの子は一体どこで知識を得ているのだろう?


なにはともあれ無事にいい商売が出来たのは僥倖だ。


親から譲り受けたマジックバッグのお陰で隠密熊を収納できたし、親には本当に感謝だ。



さーて、王都へ帰ったらさっそく商売開始だ!


たま~に更新します。


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