002.幼馴染
私の名前はミレイ。オーネン村に住む村娘だ。この村は辺境の村で特に目立った特産品はないが、寒村というほど貧しいわけでもないなんの変哲も無い村だと思う。
田舎ということもあり御近所さんとは仲が良いのか、私はよくその家の子供と遊んでいる。その子の名前はアウルと言って、私の一個下の男の子だ。
私よりも幼いのに落ち着いた雰囲気のある不思議な子供で、いつもゆったりとしている。畑の手伝いが終わった後などに遊ぶのだが、少し目を離すとぼーっとし始めるような子で、最初は掴み所がない子だと思っていた。
でもある時、散歩をしていたらアウルが近くの林の方へと歩いて行くのを見かけたので、興味本位でこっそりついて行ったことがある。
・・・その時に見た光景は今でも忘れられない。アウルが次々と魔法を使っていたのも凄かったが、最後にアウルの手元が光ったと思ったら、物凄い速度で何かが弾け飛び目の前の木々をなぎ倒したのだ!
それ以来、アウルのあのだらっとした態度は自分の力を隠すためなのだと確信した。
たまにアウルのお母さんが森イノシシなどの肉をお裾分けに来てくれるが、あれは間違いなくアウルが仕留めたのだと思う。
アウルは魔法が使えるのだと気付いてからは、何か特別な存在なのかと思っていたけど、一緒に遊んでいるとそんな風には見えない。
こんな風にアウルのことを考えてばかりいたら、いつの間にかアウルのことが気になるようになってしまっていた。
とは言ったものの特に進展もない日々を過ごしていると、人生で一度あるかないかの出来事が村を襲った。
魔物の大氾濫、スタンピードである。
この日もアウルと遊ぼうと思って家を訪ねようとしたら、家の中からアウルとアウルの両親が話すのが聞こえた。
「お母さん、お父さん!やばいよ!アザレ霊山にかなりの数の魔物がいる!こっちに向かって来てるよ!」
「・・・それはほんとなのかい?アウル。冗談ではないんだね?」
「間違いないよ!3000体以上の魔物がこっちに向かって来てる!」
「なに?!お前がそこまで言うなら間違いないようだな。わかった、村長には俺から上手いこと言っておく!お前は母さんと一緒に今すぐ逃げろ!」
「・・・」
「アウル、聞いてるのか?早く逃げるんだ!」
「お父さんごめん、それはできない。俺はこの村が好きだからね」
「おいアウル!!」
会話が終わったと思うと、アザレ霊山目掛けて猛スピードで何かが走り去って行った。会話の流れ的におそらくアウルだったと思う。
さっきの会話から察するに、アザレ霊山でスタンピードが起こったんだろう。・・・でもアウルはどうやってそれに気づいたのかな?
ってこうしちゃいられない!私もお母さんとお父さんに教えてあげなきゃ!
両親にスタンピードが起こったかもしれないこと伝えたところ、とりあえず村長宅に逃げ込む事となったのだが、村長宅のどこを探してもアウルはいなかった。ほどなくしてアウルの両親も来たけど、そこにアウルの姿はなかった。
ってことはやっぱりさっき走り去ったのはアウルに間違いないと思う。
村長宅に避難していると、急にとてつもない稲光と轟音がアザレ霊山方面から響いた。
「アウルが戦ってるんだ・・・!頑張れアウル・・・!」
そのままアウルの無事を祈っていると、魔物の大きな叫び声が聞こえてくる。そのあと少しして空目掛けて、昔見た光が迸った。
直感だけどアウルが勝ったのだとわかった。その後少しするといつの間にか村長宅にアウルがいたのは覚えている。
緊張が解けたのかそこから詳しくは覚えてない。目覚めると私はすでに家にいて、安全は確保されたと両親から聞いた。
アウルに会いに行きたかったけど、貴族様がアウルのところに来るらしいからそれが終わってからにしよう、ということになった。そのあと数日待っていたらアウルが貴族様の所から無事に帰って来た。
と思ったらなぜかアウルが今日私の家に泊まることになったらしい。
なんで?!と思ったけどどうやらアウルのお母さんがちょっとお怒りとのこと。なんでもアウルのお父さんが浮気をしたとかなんとか。あそこの夫婦はラブラブだしきっと何かの勘違いだろう。
でも今回ばっかりはラルクさんに感謝かもしれない。
「ミレイ、今日はアウル君がうちに泊まるからよろしくねぇ〜?」
「任せてお母さん!」
「ふふふ、ミレイったら本当にアウル君が好きねぇ」
「なっ!もうお母さん!!」
アウルはまたお肉のお裾分けをしてくれたけど、これはきっとアウルが魔物をやっつけて獲得してくれたのだろう。せっかくだからこれを使ってご飯を作ってあげたら喜ぶかな?
もらったお肉を使って豪華なご飯を作ってみんなで食べた。野菜と肉の炒め物は私が作ったんだけど、美味しかったかな・・・?
さてご飯も食べてあとは寝るだけなんだけど、我が家はそこまで大きいわけではない。普段私が寝ている部屋をアウルに貸して、私がお母さんと寝ればいいのだろうけど・・・
「ねぇアウル、今日一緒に寝ない・・・?」
きゃー言っちゃった!今更だけど断られたらどうしよう・・・!?
「えっと、いいよ?」
あれよあれよと話は進み、気づけばベットの上にいる。それも2人でだ。なんとかお姉ちゃんぶろうと頑張ってみたけど、なんだか恥ずかしくて寝たふりをしてしまった。
なんだかアウルいい匂いしてるし変に緊張しちゃうよ〜!
そのまま恥ずかしくて寝たふりをしていると、アウルも眠くなったのか寝てしまったようだ。
そういえばアウルさっき震えてたな・・・。もしかしたらアウルもスタンピードは怖かったのかもしれない。それはそうだよね。・・・村のために頑張ってくれてありがとうね。
ぎゅっと抱きついてみたら気持ちが抑えきれなくなって、つい想いが口をついて出てしまった。
「・・・アウル・・・好き」
「俺も好きだよ」
・・・?えぇ?!今アウルなんて言った?!ってもう寝てるし、なんなのよ〜!
結局その日は一睡もできずに朝を迎えてしまった。恥ずかしすぎて朝アウルの目を見ることができなかったけど、急にアウルがあんなこと言うからだもん!・・・嬉しかったけど。
はぁ〜・・・私の幼馴染はかっこいいなぁ。
細々と更新します。