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016.花祭り

閑話です。if

 王国内にある観光地のうち、リーフィアと呼ばれる場所がある。そこは別名「花の都」とも呼ばれており、四季折々の花が楽しめるそれはそれは美しい場所だそうだ。なぜ急にそんな街の話をしたかというと、そこの領主がリステニア侯爵だからだ。


 いつもお菓子をプレゼントしてくれるお礼ということで、3泊4日の旅行に招待してくれたのだ。それも、何人でも来てくれていいという太っ腹加減。見た目の太っ腹通りの待遇に思わず笑みがこぼれたほどだ。しかも、その旅行の日程は花祭りの真っ最中で、かなり盛大に賑わうらしい。


 今回の旅行では、メイド部隊と3人の婚約者たちに加えてレブラントさんが同行している。リーフィアにも支店を出してくれとリステニア侯爵にお願いされたらしい。今では大人気の甘味を販売する店として有名になっているため、リステニア侯爵の目に留まったというわけだ。


 あの人はいつか糖尿で倒れそうだな。今度注意しておこう。



「へぇ~、さすがは花の都と呼ばれるだけあって街中どこをみても花があるんだね」


「ふふふ、アウル様の両手にはすでに3つも花があるのですから、他の花に見とれてしまってはいけませんよ?」



 いや、ヨミの言う花と俺の言う花の意味合いが違う気がする。というか、絶対的に違う。俺はこれ以上のお嫁さんは手に負えない気がするので、見とれるわけが――おっ、あの人綺麗だな。


「それにしても、メイド部隊のみんなは今頃なにしてるんだろうね」


「あの子たちは花より食べ物を楽しんでいると思います」


「そうね。一人を除いて、だけど」


 ルナとミレイちゃんが続く。花より団子とは……、メイド部隊がそれでいいのだろうか。いや、あの子たちが花を愛でる情景が浮かばないな。笑顔で魔物を討伐するような人たちだし。


 ミレイちゃんがいったのは間違いなくウルリカのことだろう。彼女はレブラントさんのもとで下働きに出ているので、今日の旅行も仕事のお手伝いとして同行している。あの二人が両思いなのは知っているので、あとはいつ付き合うかだけという段階だ。ただ、レブラントさんは俺に気を使っているのか未だに付き合うには至っていない。


 俺が言うのもなんだけど、あくまでウルリカは俺の部下という扱いな上に、今まで俺にお世話になったという過去があるので手を出していいかどうか判断に困っているのだろう。気持ちはわかる。しかし、男ならばガツンと言ってほしいと思ってしまうところもある。



「そこの綺麗なお嬢さんを3人も連れている兄ちゃん! 良かったら花をどうだい?」


 声をかけてきたのは露店で花を売っているおっちゃん。厳つい顔に似合わずなかなか洒落た露店を開いているらしい。


「……それもいいかもしれませんね。3人とも、ちょっと花を見てくるからその辺を歩いてて」


「へへへ、まいど。兄ちゃんは若いのに隅に置けないね!あんな別嬪を3人も侍らすなんて。もう結婚はしてんのかい?」


「いや、結婚はまだなんです。一応婚約はしているんですけど……」


「なんだって⁈ そいつはいけねぇ! そんなときはこの花だ」


「赤い花……ですか。綺麗ですね」


「男たるもの、花のプレゼントくらいはしなきゃな!」


 いや、お洒落すぎだろ。思わず顔が少し赤くなったわ。それにしても、今考えるとみんなに花を贈ったことなんてあっただろうか? あっても1~2回か?


「……3本ください」


「あいよっ! 兄ちゃんも分かってるね!」


 花屋のおっちゃんから花を買い、ひとまず収納へと仕舞った。どこかいいタイミングで3人に花をプレゼントしよう。



 そのあとは花を渡すこともなく花祭りを楽しみ、街を回った。



「あっ、レブラントさん! 仕事は落ち着きましたか?」


「あぁ、リステニア侯爵の紹介もあってとてもいい場所に店が構えられそうだよ」


「それは良かったです。……ウルリカも役に立っているみたいで安心しました」


「そ、そうだね! 彼女にはいつも助けられているよ」


 レブラントさんの後ろに控えていたウルリカも少し顔を赤くしている。もちろんレブラントさんもだ。


 !! あることを思いついた俺はレブラントさんを呼んで2人きりになった。


「レブラントさん、ウルリカに花を贈ってはどうですか? ウルリカのこと、好きなんですよね?」


「ア、アウル君⁉ ……そうですね、花を贈るのもいいかもしれません。いつも助けられているのは確かですしね」


 レブラントさんも近くにあった花屋で真っ赤な花を買っていた。それは俺が買った花と同じものだ。しかし、これで共犯が増えたことになる。さすがに一人で花を贈るのはやや気恥ずかしいものがあるからな。せっかくだからレブラントさんも巻き込まねば。



 せっかく合流したので、一緒にリーフィアでも有名なお店を訪れた。ここはリステニア侯爵が気を利かせて予約してくれていたお店だ。しかもかなり高そうな雰囲気が漂っている。さらに通されたのは一番奥にあった個室で、個室なのに庭が付いている。庭には小さな滝と川が流れており、夜を彩るように花が咲き誇っていた。


 渡すなら今だな。



「ミレイちゃん、ルナ、ヨミ。今日は旅行についてきてくれてありがとう。日頃の感謝も込めて3人に花をプレゼントさせてほしい。受け取ってくれるかな?」


「ふふふ、アウルにしてはお洒落なプレゼントね。ありがとう!」


「えっと、ありがたく頂戴いたします!」


「さすがはアウル様です。花祭りで真っ赤な花を渡すなんて」



 ん? どういう意味だ? 真っ赤な花には意味があるのか?



 そして、俺に続いたのはレブラントさんだ。


「えっと、ウルリカさん。私もあなたに花を贈らせてください」


「!! あ、ありがとうございます……こちらこそよろしくお願いします……!」



 ウルリカが真っ赤になりながら花を受け取っている。……これは確実に花に意味があるぞ。



 女性陣もお返しがあったのだが、それがピンクの花だったのだ。しかし、ウルリカさんだけはピンクではなくオレンジの花。



 このときは楽しくご飯を楽しんだのだが、後日リステニア侯爵に会った際に花の色ごとの意味を教えてもらったのだ。



 赤い花の意味は「あなたが好きです」


 ピンクの花は「あなたの傍にいつまでも寄り添う」



 そして、オレンジの花は「燃えるような恋をしましょう」だったのだ。



 

 帰宅後、それぞれの部屋で一輪の花が咲き誇っていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 花の都と言うとパリ、中世では下水道技術が廃れてたせいで 糞尿は窓から捨てるもんだから花の都の匂いと言うと肥溜めの匂いのイメージ(目反らし 打ち捨てられてる糞対策でハイヒール生まれたり 捨て…
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