企てた男
男は、海外への高飛びを企てた。
高飛びのため、渡航先を此処で記すことは差し控えるが
ほんの僅かな期間でも、
日常の喧騒から逃れることが出来ると思うと
男は、自らの心が解れていくのを
感じずにはいられなかった。
短期間の日程のため
手荷物は、少量で済んだ。
男は、早速空港で出国の手続きをした。
搭乗券を受け取り
預け荷物を係員に渡し
更に身軽になった所で
出発までの時間を、ビールを飲みながら
お気に入りの小説を読む事にした。
こんなにも時間がゆっくり流れていくのを
男は、久し振りに感じた。
向こうではその感覚が、益々広がる事は
間違いなかった。
二杯のビールと
短編一章を読み終えた所で
男は、立ち上がった。
セキュリティチェックを受け
出発ゲートへ向かおうとした時
男は、係員に呼び止められた。
これからの旅に、きっと何か起こるに違いない。。。
不安が男を包み込んだ。
呼び止めた係員は
「 お忘れ物です。」
と、男に声を掛けた。
男は、振り向き
係員から手渡されたものを見て
唖然となった。
それは、
パスポートと搭乗券だった。
旅の行く末が、案じられた。