8話 綺晶の沸点は低め
「私を怒らせるたね… 今まで大人しくしていていたけど、私たちだって反撃くらいはできるんだよ?」
目に力を入れてトオルを睨みつけると、彼は体をビクッと反応させる。
「お、お前みたいなガキじゃ、どうにもなんねーよ」
言葉とは裏腹にトオルは怯えているようだ。
「綺晶、私は平気ですから落ち着いてください」
自分の身のことは二の次で私の心配ばかりする沙久矢は、慌てて止めに入る。
その声に反応し、ゆっくり振り向いて沙久矢の顔を見つめた。
「ごめん、大丈夫? でも、もう怒った」
自分に対しての事ならいくらでも我慢出来るが、沙久矢に対しての行いは一切許せない。
鞄から取り出したタオルを沙久矢の頭に掛け、トオルに向き直った。
「な、なんだよ、文句でもあんのかよ」
「あなた達、由って知ってる?」
もちろん知らないと踏んでの事だ。こんなガキに知られているような組織でもない事は自分が一番良くわかっている。
「知るかよそんな奴。それがどう関係あるんだよ」
なので、この回答が返ってくるのも判っていた。
「まぁ、あなた達が知らないのも無理もないけど」
思いっきり、見下した態度で言ってやった。それでも私の気は晴れない。
「なんだと!」
「綺晶!」
沙久矢が腕を引っ張って止めてきたが、それを無視してその手を振り払った。
「あなた達の父親の中には知ってる人がいるかも知れないから聞いてごらんなさい」
「な、何?」
トオルを始めとする男子達は言われている内容がさっぱりわかっていない様子だった。
「これ以上、不快な思いをさせるのであればそれの餌食にさせてやる」
沙久矢に手を出すなら、この不愉快な者達を全力で潰してやる。正体がばれたって構わない。そうなったらこいつらの父親、母親、一族の者に制裁を加えてやる。
「沙久矢、帰ろ」
これだけ言えば少しはすっきりした。
言葉を失っている男子たちを後目に、その場から去る。さすがに今日はおとなしく暇な授業を受ける気分ではない。
「・・・はい」
心配を通り越して呆れているだけな気もする沙久矢はそれ以上何か言うこともなく、ただ黙ってついてくる。
そしてその足で職員室へ向かった。
久々に見直したら、やっぱり手を加えた方がよかったか・・・と反省したけど、とりとめもなくなりそうなので微調整のみにしました( ゜Д゜)