7話 ブラッキーズ
ドアを開けて教室に入っていくと、騒然としていた室内は静まりかえり、いつものように冷たい目で迎えられた。
物珍しい黒い髪、青い目に加えて、スキップしていることがクラスメイトたちにとって近寄りたくない存在となっているようだ。ある者は嫌悪し、またある者は無視をしてくる。
特に男子は年下のくせに頭も運動も自分達より上だということが気に障っているようだ。
時には悪意すら向けられる時がある。仕事で休みがちなところも目立つからだろう。
「おいブラッキーズの登場だぜ」
黒い髪のことか、それとも服が黒っぽいものが多いからなのか。理由はわからないが、単純なネーミングだ。
他にも黒っぽい髪のクラスメイトも何人かいるが、まぁ彼らがそれで呼び分けられてるなら構わないのか・・・
「今日は遅かったじゃん。まさか寝坊でもしたのか?」
無視をしていても話は勝手に進み、クラスの男子達は嘲笑う。
「毎度のことです。気にしたらだめですよ」
「大丈夫だよ。私はそんなに馬鹿じゃない」
沙久矢に向かってにっこりと微笑むが彼女の心配そうな表情は消えない。
「何こそこそしてんだよ。お前らなんか邪魔なんだ。学校に来るだけで空気が悪くなるぜ。うぜーから来んなよ」
「なんで? 学校に来るのは義務なんだからしょうがないじゃん。私達だってこんなとこ来たくないね。」
来なくても平気と言えば平気ではあるが、処理も手間がかかる。
「うるせーな、お前がいると迷惑なんだよ」
嫌われていてもそこまで言われる筋合いはない。
それに、私達からすれば、そっちの方が目障りだ。
「私達がトオルたちに何をした?」
トオルは近くに用意していた水の入ったバケツを投げてきた。
が・・・
「なんで避けるんだよ!」
身を翻して避けた事に対して、トオルは怒りで顔を赤くする。こんな予想がつく行動に対して、避けない人の方がいないだろう。
「だって、避けなきゃ濡れちゃうじゃん」
私たちじゃなくたって、避けるに決まってる。呆れて、肩をすくめて見せた。
「お前らなんか濡れてもいいんだ!」
一方的な言い分に言い返すのも馬鹿馬鹿しくなり、視線と意識を外したその瞬間、トオルの仲間がホースを向けてきた。
どうやって持ち込んだのか、違った意味で驚いて体が硬直した為、そのまま水が飛んで来て濡れる、と思ったのだが・・・
「沙久矢!」
一瞬の間に沙久矢が前へ出て、私の代わりに水を浴びた。
沙久矢の服は防水、防弾なので水も弾いているが、沙久矢自身はそうもいかない。髪は濡れ、服の中にまで水は入っていそうだ。
ここまでされたのはさすがに始めてなので、一気に怒りが込み上げてくる。
しかも私自身ではなく沙久矢に水をぶちまけた事が私の逆鱗に触れた。
年内ギリギリ滑り込み。ラストです。
今年もありがとうございました。