表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

3話 隣の席のイシュカ君

「おい、何こそこそしてんだよ。そんなことよりこれ見たいだろう?」

 見せびらかしたくて仕方がないのか、大きな鞄をひざの上に抱えて我々の「見せて!」という言葉を待ってる。


「別にいいよ、興味ないもん」

「本当は見たいんだろう・・・しょうがないな、特別に見せてやるよ」

 断ってもイシュカはお構いなしに話してくる。これは自分がただ見せたい、自慢したいだけなのだろう。

 本当に嬉しそうに人の話を聞かず鞄を開ける様子を見て、ついため息がでてしまう。


「別にいいって言ってるのに・・・」

 けれどもイシュカの耳にはもう私の言葉なんかか届いていない。


「綺晶、こういう奴には何を言っても無駄ですよ」

 沙久矢は私の肩に手をついて、諭してきた。


「じゃーーん! これは来月発売される『テクテクリーフ君』だ!」

 イシュカが鞄から取り出したのはうちにあるペットと見た目が瓜二つだった。それと目が合い、言葉を失う。


「驚きで声もでないようだな、ハッハッハッハ!」

 確かに驚いているが、きっとイシュカが考えている事とは全く別の事であろう・・・


「ねぇ、沙久矢これもしかして・・・」

 有頂天になっているイシュカには聞こえない声量で尋ねる。


「・・・そうです。私のサポートしている研究所の新製品です。企画書とあなたへのプレゼントの資料が入違っていたようで・・・気づいたら商品化企画が進んでました。もちろんあなたにプレゼントしたものとは性能は段違いです」

 よく見るとところどころ違うみたいだが、知らない人が見たら間違えてもおかしくないレベルではある。


「見た目だけでも変えようとしたのですが、結果この形が一番適したものになりまして。申し訳ありません」

 世の中の経済が潤う訳だし、当然私の子とは別の子になるのだからそこまで深く頭を下げなくても・・・


「謝るようなことじゃ。ちょっとびっくりしたけど、あれかわいいしね。売れると思うよ」

 慰めるように笑みを向けると、沙久矢は顔を上げたが表情は晴れない。


「・・・おい、聞いているのか?」

 ふいにイシュカに呼び止められ、沙久矢との会話を打ち切る。


「あっ、ごめん。聞いてなかった」

 イシュカの言動パターンを考えるとおそらく、『テクテクリーフ君』について語っていたのだろう。


 ちょうどその時、バスは次の停留場に着いて幼い少女が乗ってきた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ