ズル休みじゃない
何もかもが嫌になったら、何処かに隠れたくなったら、そんな気持ちで書きました
嫌な上司や嫌いな仕事、あれもこれも押し付けてくる同僚、友達面して近づいてくる腹黒女
そんな人達に囲まれている現実です
ドン! 「きゃあ~ 痛ぁ~い」
キャリーバッグがぶつかってきて軽く飛ばされた私が床に転んだ
(痛いじゃない、ぶつかっておいて知らんぷりして行くな)
ここの床はタイル張りなので石ノ上に落ちたようなもので、当然痛い
「ケガしてない?凄い音して転けたから、痛かったでしょう」
親切そうなおばさんが声をかけてきた おばさんの後ろを足早に歩く女性の横顔が見えた その口元が微かに笑って見えた 急に転んだことが恥ずかしくなった
「ケガは?してない?服は大丈夫かしら?」
心配そうなおばさんには悪いけれどもちょっと恥ずかしい
「もう大丈夫ですから、すみません」
親切なおばさんを残して、小走りでその場を去った
(おばさんごめんなさい)
振り返ると電車の駅舎に奈良と書いてある そう来たの 本当に奈良に来たの (いくぞ美術館、待ってろ(^^))
アベック、中年観光客の集団の後をついて歩いて行く 話題の展示をこの人達も目当てで来ている
(人が多そう)
歩いているうちに、今朝の電話が気になってきた
ーブーンブーンブーン スマホが鳴る
「はい」(誰だろこんな朝の忙しい時間に)
「お前、昨日 品川物産の件ひっくり返したろ 面白い奴だな 俺が言ったのは冗談だぜ、まさかやるとわな、お前の責任だから俺は関係ないからな、わかってるだろうな、部長がカンカンで待ってるぞ」
それだけ言って切れた 私は上司の意見に従っただけだ 言いたいこと言っといて失敗したら部下のせいか (くっそー!腹立つ!!
人のせいにするな このバカ上司)
勢いで拳をテーブルに叩きつけた その拍子にカップのコーヒーをほとんどこぼしてしまう
(もう、なんなのよ、朝からこんなことって…)
会社で部長に誤ってもバカ上司の点取りになるだけだ、馬鹿らしい ぁ~やだやだo(><;)(;><)o 私は上司の道具じゃないぞ
(仕事なんか行かない、行きたい所に行ってやる)ー
で、ここに来た
美術館は大勢の人で一周する頃には静かな場所はないかと思っていた 建物の奥に暗いゲートがあり仏像の表示がしてある この先は人もまばらで静かな空気が流れているのがわかった
何十体見たのだろうかこんなに多くの仏像を一度に見たのは初めてのこと 軽いめまいがしそうだ 何しろ仏像はハンサム揃いなのだ 鍛えた体をしていて一体毎にタイプの違うイケメンなのだから 完璧です! この完璧さは人間には無理
(これ作った人の美的感覚間違いない、正解です 作者さんあんた凄い)
(昔の人もイケメンと美人が好きで、モデルにしてたのかな)
ずっと見てられる、仏像がキラキラしている、素敵
そして十一面観音の前に立ったとき、まるで雷が落ちたかのような煌めきが見えた
(うわー!一段とイケメン!かっこいい!!素敵)
キレイな顔で私を見つめている きやっ! 次の瞬間観音様の左手の指先が小刻みに動くのが見えて、印を結ぶために曲げている肘から腕がぐっと伸ばされて、私は背中を掴まれた
足は宙に浮いてゆらゆらしている、そのまま観音様の厚い胸に抱きしめられた
あぁ~懐かしい、いい香りがする
「大丈夫ですか?」
目の前に大きな手 そして顔、男性、気づくと私は男性の膝の上に寝ていた
「すみません」
男性から離れようと動いたが、身体中が痛い、思わず顔をしかめる
「急に動くとまだ痛むよ、しばらくこのままがいいよ」
両手で抱えられて、また、膝の上に戻る
男性の名前はさとし、奈良で働いているそうだ 私は久美 岡山のOL 短い自己紹介 悪い人ではなさそう
話しているうちに頭がはっきりしてきた
「あの、そろそろいいみたいなんで…」
「無理しない方がいいけど、良くなった?」
「ええ、良くなりました、ありがとうございます」
お礼を言って立ち上がろうとすると、後ろからさとしが手を繋いできた
「まだフラフラしてるから、こうしよう」
ドキドキ ドキドキ
大仏も手を繋いで並んで見る まるで恋人みたい 明らかにデート中のアベックがたくさんいる 私達はどうみえる?さとしはどう思っているのかな、さとしの顔を覗いて見ようとすると足がつんのめってこけそうになった
と、繋いだ手をさとしが引っ張り私の体を起こしてくれたので、転けずにすんだ
「言ってる側からこれじゃね はははは」
「笑わないで」(恥ずかしい)
足元の地面は石が所々に埋まっていてでこぼこしている
(この地面のせいよ)
「ね、久美そこ、へこんでるから危ないよ」(笑い)
「また転ぶよ」クククク(笑)
(ばかにしてる)
「面白いだけだから…」笑顔
「それがばかにしてるのよ」
さとしのペースにはまっている
「腹減ったー 久美、 何か食べようよ」
(そういえば朝から何も食べてないな)
「コーヒーこぼしちゃったし」
「カロリー入れて元気出そうよ、倒れる訳だな、バカだな、久美」
「なにー!」
「ま、いいから、いいから」
美味しそうな写真が並ぶどんぶりのお店に入る
「俺ネギ食えないから、久美にあげる」
「好き嫌いするなんて、子どもね」(笑)(さっきのお返しよ)
「久美が食べて身長伸ばしなさい」
「もう伸びないって!」
「じゃ、代わりにチューしてあげるから」
(さらっと何言ってるのよ)
さとしが私の鼻をチョンとつまんだ(やだ、顔が赤くなってる)
店を出る頃には日が陰りはじめていた
「そろそろ電車に乗らないと帰れなくなる」呟く私
さとしは何もしゃべらないでずんずん進んで行く
「久美、これ見て」
生け垣の一角で屈んでいるさとしの横に、私も覗いて見た
と、後ろから両手に抱きしめられてさとしの胸の鼓動を背中で感じる ドキドキドキドキ
「離したくない」さとしが耳元で囁く
たまらずに振り返る私 そのまま長いキス
夢なの?好きになっちゃっうよ!!
夢でもいいから、帰りたくない!
ストレスを発散できたらいいなぁ~と思っています、どうなるのかな、この先は…