家を作ろう
「よし、ここに家を作ろう。」
見渡す限りの草原のあちこちにイモの蔓が見える。
ここにいれば当分の間は食料に困ることはないだろう。昨日は運よく雨や夜露に遭遇することはなかったが、こうして植物が生育している以上、それなりに雨が降るはずだし、生活する上で屋根のある家は必要だ。
徹はリムに使う魔粒子を散布してもらおうと思い、気付いた。
「あ・・・もしかして、オレってリムの魔粒子収集範囲外から直接魔粒子を引き寄せることができる・・・かな?」
『・・・・たぶんできるでしょうね。』
そしてそれは確かに普通にできた。試しに引き寄せた魔粒子が徹の左手の上にフヨフヨ動いている。
「なんか無駄な手間かけさせてたみたいだね、ごめん。」
『べ、べつに手間だなんて思ってなかったんだからね!』
何故かリムは顔を赤くしてそっぽを向いた。
(・・・ツンデレ?)
徹は比較的草が少ない場所を見繕って、手に魔粒子を纏って歩きながら10メートル四方の地面を焼き払った。生草なので燃え広がることはない。
土中に魔粒子を展開し、粘土質をかき集め、圧縮して強度を増し、プレハブ小屋のようなものを作成しようとしたが・・・・できなかった。できたのはプレハブ小屋くらいの大きさの立方体。
「再構成時に自由に形を作れるほど便利なものではないのか。そういえば、アルミは再構成した球を手でコネて工作してたんだった。」
『そうね、再構成時に作れる形は球か立方体のどちらかだけだと思うわ。』
「・・・もしかして、収集、分解、移動の範囲も球か立方体になってたのかな?」
『うん、特に意識しなければ球。いまは家の形を意識したんでしょ?、だからそれに近い立方体になったんだと思うわ。』
「なるほど、じゃあ、とりあえず立方体の組み合わせで作ればいいわけね。」
徹は再び魔粒子を展開し、立方体の内側を空洞にし、正方形の出入り口を1つと、反対側の壁に正方形の窓を1つ開けた。
「家自体はこれでいいだろ。後はベッドだな。」
作成した家の中に入り、比較的やわらかい1辺1メートルほどの粘土の立方体を3つならべて置いた。
「・・・・うーん、昨日のアルミの厚い板の硬いものよりは、断然やわらかくていいんだけど・・・なんかベタベタする。粘土だもんなぁ、あ、そうだ。」
徹は壁に立てかけてあったアルミの棒の一部を魔粒子を纏った手で引きちぎり、できるだけ薄くのばた。ほぼ紙のような薄さになったそれは正にアルミホイルだ。
何回か薄くしすぎて引きちぎったりしたものの、なんとか粘土ベッドの表面にアルミホイルをしきつめることに成功した。
「うん、上出来、上出来。」
徹は粘土アルミホイルベッドに腰掛け、ついでに作った枕をかかえてご満悦だ。
「よし、ではお昼ターイム。リムおいで。」
ベッドに寝転んで両手をひろげてリムを招く。
『はーい』
そこにリムが文字通り飛び込んできた。
ポス!
いつのまにかリムの服はビキニアーマーから可愛らしいパジャマにかわっており、布越しの肌のやわらかな感触が心地よかった。
徹はリムを掛け布団代わりにして心地よい眠りに落ちていった。