婚約
朝日が眩しくて徹は目を覚ました。
太陽の高さから午前6時くらいだろうかと思い、腕時計を見たが午前2時となっていた。
(日暮れの時は午後6時くらいになっていたよな。・・・ここは1日が地球よりも短いのか、1日20時間くらいか?)
胸のあたりに重みを感じたので見てみると、リムがうつ伏せになって寝ていた。
時々、光が外から流れこんできているので、意識がなくても魔粒子収集はできているようだ。
徹はリムに軽く手を添えて起き上がった。その動きでリムが目を覚ました。
『ん?、おはよう、徹さん。』
「ああ、おはよう、リム。やっぱり地球じゃないんだなぁ。夢だったらよかったのに・・・。」
『なに言ってるの、こんなに可愛い女の子と2人きりなのに、失礼しちゃうわね。徹さんはとっても幸せ者・・・でしょ?』
「はは・・・そうだな、そうだよよな。ありがとう、リム。・・・あれ、リム、少し大きくなった?」
昨日は30センチくらいの大きさだったように思うが、今、目の前にいるリムは40センチくらいの大きさに見える。
『ええ、魔粒子を吸収し続けているから、その分大きくなったみたい。』
「・・・ってことは、このままいけば、そのうちオレよりも大きくなる?!」
『そうなる前に体の成長を止めるわよ。徹さんと同じサイズくらいで。』
「そ、そうか・・・・よかった。」
(オレより大きくなったリムなんて、あんまり見たくないもんな。)
『・・・ねぇ、徹さん。』
リムは顔を赤くして俯かせ、もじもじしだした。
「ん?、なんだリム。」
『徹さんと同じサイズになったら・・・あたしを徹さんのお嫁さんにしてくれる?』
「なっ!?、・・・・どうしたんだ急に。」
『あたしは徹さんが収集した魔粒子から顕現したから・・・徹さんのそばにいると安心するってゆうか・・・とにかくずっと一緒にいたいって思うの・・・だめ?、』
「・・・そうか、分かった。オレもリムとずっと一緒にいたいって思う。これからもよろしくな。」
『本当?!、ありがとう徹さん。』
リムは徹の顔に抱きつき、頬にキスをしてきた。
『徹さん、だーい好き。』
リムに使う分だけの魔粒子を散布してもらい、水球を出して顔を洗った。
昨日の残りの鳥の焼肉を暖めなおして朝食として食べる。
「味がしない。・・・・ご飯が欲しい。」
(肉ばかりじゃ、栄養がかたよっちゃうよな。ご飯は贅沢だとしても、なんとか炭水化物をとりたいところだな。)
「リム、この近くに野生のイネとか麦とか・・・・都合よく群生していたり・・・しない?」
『イネ、麦などの穀物類はありませんね・・・ただ。』
「ん?」
『イモはあります。ここから太陽の方に向かって3キロほど行ったところに、野生のイモの群生地があります。』
「そうか!、じゃ、行ってみよう。」
徹はアルミの簡易ベッドを棒状にして携行し、イモの群生地へと向かった。
『ここよ』
「・・・つかれたぁ」
(3キロくらいって、なめてたよ。革靴で足場の悪い草原を3キロ歩くって大変だったぁ。)
徹は会社帰りに転移にあったため、スーツに革靴といった姿だった。
(このまま街に行くのはムリかもしれないなぁ。)
「さて、見たところ、これまで通ってきた草原とあまりかわりないように思えるが・・・」
あたりは、あいかわらず膝丈くらいの草が生い茂っているが、良く見ると、朝顔の蔓のようなものが、あちこちにみられる。
「これがイモ・・・かな?」
徹はその蔓の1本を両手でつかみ、引き抜こうとした・・・
「・・・・ぬ、抜けない。あっ、」
蔓は徹の手と土の間で引きちぎれてしまった。
「仕方ない。リム、魔粒子を適当に散布してくれ。」
『はい、どうぞ。』
徹はリムが散布した魔粒子をイモの蔓周辺の土中に潜らせ、土だけを持ち上げて周囲に置く。
蔓の先には徹の腕の大きさほどのイモが鈴生りに10個あった。
「おおぅ、こりゃ、土どかさないと引き抜けない訳だ。」
宙に浮かせた水球の中で、1つのイモを軽く水洗いしてから、手に纏った魔粒子で焼いてみた。
二つに割って、かじりつく。
「甘い・・・・まんま、サツマイモだな。リムも食べてみな。」
徹は小さくした欠片をリムに渡した。
『ほんとだ、甘くて美味しいね。』
リムの笑顔が眩しかった。
「やっぱり塩がいるな。でも、どうしたものか・・・・リム、近くに海は・・・ないよ・・な?」
『そうですね、海はここからだと、人の街へ行くよりも遠いですね。
でも、徹さん、塩が欲しいなら、地面の下の方を探してみたらどうですか?』
「・・・そうか、表面ばかりに気をとられていたが、下の方の地層には塩があるかもしれないな。」
徹はしゃがみこんで地面に両手をつき、魔粒子を地下に潜らせて、徐々に探索していった。
400メートルほど地下に白い地層があった。
その部分を魔粒子に吸着させて地表まで運び、目の前で圧縮、固定させた。
手にとってじっくり見る。ペロリとひとなめ。
「塩だな。時代を何万年も遡れば大抵のところは海だったこともある・・・・・・か?」
塩を入手した。