安眠確保
西の空?が微かに明るいだけで空は夜の闇につつまれようとしていた。
しかし、徹の目には魔粒子の光がそこかしこに見え、周囲が闇に閉ざされることはない。
「なぁリム、魔粒子が見えない普通の人間の目には今この辺りはもう真っ暗になってるのかな?」
『そうですよ、徹さんでも意識して見ないようにすれば、真っ暗になると思いますよ。』
「そうか、ちょっとやってみるか。」
魔粒子を1つ、左手の上にのせ、目の前にもってくる。
そしてあえてそれを見ないようにして遠くの景色にピントと意識をそちらにあわせてみる。
とたんに世界は暗転し、何も見えなくなる。
「うぉ、本当に真っ暗だ。あれ、リム?、どこいった?」
魔粒子どころか、目の前を飛んでいたリムの姿まで見えなくなった。
若干闇に目が慣れてきて、ぼんやりと周りが見えるようになっても、やはり見当たらない。
あわてて、目の前に飛ぶリムや周りを飛び交う魔粒子をイメージする。
すると世界は眩い光に満ちた。
「うぉ、眩しい。」
『あたしの体も魔粒子でできていますからね、一緒に見えなくなったでしょ?、寂しかった?、
あ、きゃあ?!』
思わず徹はリムを抱き寄せていた。
「寂しかったよぉ。そうゆうことは先にいっておいてくれよなぁ。」
『はいはい、徹さんはあまえんぼさんですねぇ。』
リムは戸惑いつつも優しく微笑み、徹の頭を撫でた。
徹はアルミを板状に伸ばして四方に簡単な脚をつけて簡易ベッドを作り、腰掛けて考える。
(今夜はここで寝るとして、今更だが安全の確保が必要だな?)
「リム、この草原には他にも野生の動物がいるんだよな?、いま周囲がどんな状況かわかるか?」
『最初の魔粒子収集により、ここから半径1キロ以内の動物は気絶状態になりました。
これらの動物はあと数時間は動けないと思われますが、その後このエリアに進入した動物は多数あり。
現在、安全地帯と呼べるのは半径800メートル圏内となっております。』
「そうか・・・って、どんだけ索敵範囲広いんだよ、リムは?」
『あたしの索敵範囲は半径5キロです。えへん。』
「・・・ソウデスカ。安全を確保するには、寝ている間も継続的に一定範囲の魔粒子を収集したいところだな。」
『それなら、あたしがやっておきましょう。あたしの体はは徹さんが集めた魔粒子からできていますから、徹さんと同じ力が使えます。ただし、その能力は10分の1ですが・・・』
「おれが何も考えずに全力でやったら半径1キロの魔粒子を根こそぎ集めちゃったから、
リムは半径100メートルの魔粒子を根こそぎあつめられるわけか・・・まぁ、十分かな?、
じゃあ、リム、たのむわ。」
『はい、わかりました。』
リムは少し浮き上がると、両手を外側に向けた。
『魔粒子継続収集、光よ我が体に集え!、』
魔粒子が一斉に集まってきて、リムの体に次々と吸い込まれていった。
辺りが一気に暗くなった。暗闇の中でリムの体だけがほんのり白く輝いている。
ときどき範囲外から流れこんでくる魔粒子がポツリポツリとリムの体に吸い込まれていく。
『さぁ、これでこの周囲は安全です。ゆっくりお休みになってください。』
「ありがとう、じゃ、お言葉に甘えて休ませてもらうよ。おやすみ。」
徹は、簡易ベットに寝転がり、その意識を手放した。