肉を食べよう
ぐううううううぅ!
徹のお腹が激しく空腹を主張した。
「そういえばまだ晩飯食ってなかったんだよなぁ。腹へったぁ。
この草原で食料を確保するには、狩りしかないよなぁ。でも、鉄砲はおろか、弓もなんもないし・・。」
『そんなものなくても、素手で獲物とれますよ?、こっちです。』
そう言うとリムはある方向に飛んでいく。
「あ、ちょっとまって、リム。・・・鳥が落ちてる?」
リムが飛んでいった先には、鳥が落ちていた。
(なんか鶏みたいな鳥だな、でも羽がケッコウ大きいし、飛べるんだろうか?、)
『あたしが顕現するときに徹さん、このあたりの魔粒子を根こそぎ集めたでしょ?、
この鳥はその時体内にあった魔粒子を全て吸い出されて動けなくなったみたい。』
「なるほど、じゃ、こいつを裁いて、食べるとしますか。
・・・といっても道具がなにもないな。魔法で作れるかな?」
『魔粒子をある程度集めて、それをコントロールしながら展開すると魔粒子が触れた部分の成分が分かり、
原子レベルで自由にその成分を取りだしたり、再構成できると思います・・・徹さんなら、たぶん。』
「・・・ふむ、」
徹は左手の上に数十個の魔粒子を集め、それを広く地面に展開した。意識を展開したそれに集中する。
「・・・ケイ素にアルミに鉄・・・と、これってよくある土壌の成分なのかな?、」
(とりあえず、アルミを集めてみるか。)
土壌中のアルミをかき集めることを強くイメージする。
そして地面に展開していた魔粒子を再び左手の上に集めて、圧縮、固定・・・。
気がつくとバレーボール程の大きさのアルミの球が出現していた。
(できたぁ!、・・・ふぅ。)
気を緩めて、額の汗を拭った。魔粒子が制御を失って拡散する。
ドスン!、
とても重そうな金属の塊が徹の脚の間に落下し、地面にめり込んだ。
『あ、魔粒子が制御しているものは、魔粒子が拡散してなくなると当然落下しますからね、
重たいものは気をつけてくださいね?』
「あっぶねぇ、そうゆうことはもっと早く言ってくれよぉ、」
『これから道具を作るんですよね?、
魔粒子を手に纏わせて素材に触ると、自由にその形を変えたり、熱したり、冷やしたりできますよ。』
「ほほぉ、どれどれ?」
魔粒子を手に纏わせてアルミ球に触ってみる。
「おぉ、粘土みたいにグニグニ自由に形が変えられる!」
早速、包丁のようなものを作って、血抜きのために鳥の頭を落とそうとしたが・・・
「・・・切れない。」
子供の粘土細工のような包丁では、全然鋭さなどなく、まったく切れなかった。
(さて、どうしようか?)
左手にアルミの包丁を持ち、魔粒子を右手の人差し指、中指、親指だけに纏わせ、包丁を刃の部分をつまんで、目を瞑る。
そしてイメージしながら刃に指を滑らせていった。
ベテランの砥ぎ職人が電気研磨機で火花を散せながら粗砥ぎをし、
水をつけ砥石に刃をすべららす。最後は細かい墨で仕上げの砥ぎをしている姿。
目を開くとそこには、美しい波紋をもつ、匠の技をおもわせる包丁があった。
(今度はどうかな?)
再び鳥の首に包丁の刃を当てると・・・
すぱっ!
殆どなんの抵抗もなく鳥の首が切り落とされた。
どばどば・・・
大量の血がその首から流れ出した。
鳥の脚を左手でもって、逆さに吊るしてしばし待つ・・
殆ど血が出なくなったところで鳥の羽をむしる。
腹を包丁で縦に裂き、内臓を取り出す。
アルミで長めの串をつくり、鶏肉をさした。
左手に鳥串を持ち、右手に魔粒子を纏わせて、炭火をイメージして、あぶり焼く。
短時間で中にまで熱が通るように、内側からは電子レンジで熱するようにもイメージしてみた。炭火レンジ?
10分ほどその作業を続けていると、表面にこんがりと焼け目がつき、香ばしいにおいがあたりに満ちた。
早速、その肉にかぶりつく。
「・・・・味がしない。調味料なんも使ってないもんなぁ。せめて塩があれば・・・ま、いっか今回は。」