サーロイン
「「お肉、お肉、お肉!」」
セレネとフレアがドラゴンの翼と尻尾を出してリアカーの上を踊りながら飛んでいる。
(あんな、人とドラゴンの中間みたいな姿もとれるんだ。)
「「「お肉、お肉、お・に・く!!」」」
いつもは苦悶の表情をしてリアカーを押しているリムも今日は笑顔だ。勿論、カエデも、ミチルも極上の笑顔でリアカーを引いている。
冒険者ギルドの搬入口で納品表を見ていたワトソンに声がかかった。
「ワトソンさん、美味しいお肉を切り分けてください。」
「おぉ、トオルか、ご苦労さん。お肉って、先に討伐証明部位の確認じゃないのか・・・ったく・・・って、これは、ミノタウロスじゃねぇか。」
「ええ、ですから、一番美味しい、サー(極上)のロイン(腰肉)を一辺も残さず切り分けてください。あ、ついでに討伐証明部位の確認もお願いしますね。」
「わかったよぉ、・・・他の部位は買取りでいいんだな。」
ワトソンは文句をいいながらもテキパキとミノタウロスを解体し、討伐証書と肉の塊をくれた。
「こ・・・これが、ミノタウロスのサーロイン。」
その断面にはサシが細かく入り、正にその様は霜が降りたようだ。
「「「「「ごくり、」」」」」
女性陣の目もお肉に釘付けだった。
「マチルダさん、ただいま。討伐報告の確認をお願いします。それと他の部位の買取りのお金もお願いしますね。」
「トオルさん、お帰りなさい。少々おまちください。」
マチルダはスグに戻ってきたが、元気がなかった。
「はい、これが討伐報酬と他の部位の買取りを合わせた金貨70枚です。」
「はい・・・・確かに、」
「はぁ・・・これからそのお肉を食べに行くんですよね、私も行きたいなぁ・・でも今日は遅番のローテーションを入れられちゃったんですよねぇ・・・」
「それは残念ですね。また機会があれば、お誘いしますよ。」
「きっとですよ。」
「山本、平松が会いに来たぞ」
「おぅ、よく来たな、まぁ今回はサービスはしてやれんがな」
「ふふふ、これを見てもそれが言えるかな?」
トオルは肉塊をこれ見よがしに差し出した。
「な、これは・・・ミノタウロスのサーロインか!!」
「ああ、これを料理して、お前もリンダさんも一緒に食おうぜ。」
「わかった。オレたちも食っていいんなら、勿論手間賃はサービスする。おい、リンダ、ミノタウロスのサーロインが食えるぞ。」
山本はトオルから肉塊を受け取ると厨房へ駆け込んでいった。厨房からはリンダさんの歓声が聞こえた。
ジュワワ、
分厚いステーキが鉄板の上で音をたてている。
「まずは、シオコショウだけで軽く焼いてみた。」
「いただきます。」
サク、ジュワァ
トオルはそれをフォークで押さえ、ナイフで切った。
その断面はうっすら赤く、サシの部分からいまも肉汁が溶け出して溢れている。
パク、
「う・・・うまい!、オークのリブロースも美味かったけど、これはそれ以上だ。」
他の皆も無言で食べていた。
「次にこれも食って見てくれ。」
「これは・・・丼?」
ふたを開けると、ごはんの上に千切りキャベツがあり、その上に茶色いソースが付いたカツが乗っていた。
「味噌カツ丼かぁ!」
「そうだ、ミノタウロスサーロインの味噌牛カツ丼だ!!」
「な・・・なんて贅沢な・・・では、早速。」
パクリ、
ジュワア、サク、サク、
カツに封じ込められた旨みが口に広がり、それを味噌ソースがさらなる高みへ、若干しつこくなりそうなのを千切りキャベツが見事にさわやかに調整する。
「う・・・美味いぞぉおおおお!!」
大昔の将軍様のようにトオルは巨大化して目と口から光を吐き出しそうだった。
涙を流しながら、夢中で食べた。
セレネもフレアもリムもカエデもミチルも、山本とリンダさんも皆泣いていた。泣きながら食べていた。
「「「「「ごちそうさまでした。」」」」」
美味い物が食えるって、本当に幸せだと思ったトオルたちだった。




