山本、平松が会いに来たぞ
洋食山本・・・と日本語ででかでかと書かれた看板をトオルは見上げていた。
その下にはこの国の言語で・・レストランヤマモト・・と小さく書かれている。
「トオルさん、これって、もしかしてトオルさんの国の文字ですか?」
ミチルがなにかを察したように聞いてきた。
「ああ、そうだ。おそらくこの店にはオレと同じ世界出身の奴がいる。」
トオルたちは、セレネとフレアの歓迎会をしようと、適当にファーストの街の食があつまる通りを歩いていて、偶然この店を見つけた。
入り口の扉の横にも日本語で書かれた張り紙がある。
・・・この文字が読める方は『山本、平松が会いに来たぞ』と入り口で叫んでください。初回に限り、無料でお食事を提供させていただきます。(店主)・・・
(この山本って、もしかしてあの山本か?、いやしかし、まさか・・・うーん)
トオルは入り口の張り紙を見て悩んでいたが、意を決して入り口を開くと日本語で叫んだ。
「山本、平松が会いに来たぞ!」
ドス、ドス、ドス、
角刈りの巨漢が奥から現れた。
「おぅ、ひさしぶりだな、ヒラマ・・・ツ?・・・おぉ、お前本物の平松か?」
「ああ、本当にひさしぶりだな、山本。」
山本はトオルの小学校からの幼馴染で高校の修学旅行中に行方不明になっていた。
「・・・そうか、四条大橋の下に転移直前の魔粒子溜まりがあったのか・・」
「ああ、偶然そこを自由時間に通りかかったオレはこの世界に転移しちまったって訳だ。でも不幸中の幸いと言うか転移先がこの街の広場だったから、すぐに保護されて生き延びることができたのさ。平松も魔粒子溜まりに偶然あって転移しちまったんだよ・・・・な?」
「ああ・・・そうだな、仕事の帰りに偶然な・・・」
(言えない・・・良い歳したオッサンが中二病全開で魔粒子を自分で掻き集めて転移しちゃったなんて・・・)
「あんた、いつまで喋ってるんだい。仕事しな!!」
奥から山本よりも少し小さいくらいのガッチリした女性が現れた。
「おぅ、リンダ、こいつは平松。おれが前いた世界の幼馴染なんだ。」
「あら、そうなの?、そんな偶然あるんだねぇ。あたしはリンダ、こいつの嫁だよ。よろしくね。」
「今日はもう、店閉めて、平松の歓迎会するぞ。張り紙にあるとおり、無料にするから遠慮なく食っていってくれ。」
テーブルにはローストビーフに唐揚げ、一口カツなどの懐かしい日本の料理が所せましと並んでいる。
そしてそれぞれの手元のグラスにはキンキンに冷えたビール、セレネとフレアにはオレンジジュースがある。
「では、新たな家族、セレネとフレアに、そして旧友、山本との再会に・・・・・乾杯!!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
「いやぁ、それにしても平松、うまいことやったなぁ、美人の嫁さんを三人も娶るなんて・・・」
「山本こそ、リンダさんと一緒になれて・・・幸せそうじゃないか・・・」
「・・・ん・・・まあな。」
「この唐揚げ、美味しい!」
「ローストビーフも美味」「一口カツも美味しいの」
リム、セレネ、フレアがすごい勢いで食事をたいらげている。
(なんか、日本の食事を美味しそうに食べてもらえると、それを見ているだけで嬉しくなるな。)
思わぬ旧友との再会で日本食にありつけ、幸せな気分に浸れたトオルであった。




