弾丸列車
気絶したミチルとカエデを横に寝かせてトオルはトンネルの掘削作業をした。
「よし、これでイモの群生地までのトンネルが開通したな。」
「でもトオル、歩きやすいトンネルの道が開通したとはいえ、イモの所までは300キロくらいあるけど・・・・野営の準備なんかしてきてない・・・よね?」
「大丈夫、日帰りできるさ。」
「ん・・・んん?」
ミチルが目を覚ますと目の前には巨大な・・・石の塊があった。
「あれ、私は気絶していたのか?・・・ん、これはなんだ?」
同じくカエデも目を覚ました。
「お、二人とも目を覚ましたな。早速だが、これに乗り込んでくれ。」
「なんですか、これ?」
「弾丸列車、名付けて神雷号!」
そこには新幹線の最初と最後の車両だけをつなぎ合わせたようなものがあった。ただし、車輪やパンタグラフのような物や窓などはない。かわりに前後の左右の上下に吸気口か排気口のような穴が開いており、底部にも多数の穴が開いている。
四人が乗り込むとトオルはハッチを閉めた。
「わ、真っ暗です。」
「光源確保。」
トオルが天井に小粒の魔粒子結晶をはめ込むと、天井全体が光を発し、明るくなった。
「全員席について、手すりにしっかりとつかまってくれ。」
トオルが前列右側、リムが左側、カエデがトオルの後ろ、ミチルがリムの後ろの座席に座った。
トオルの席だけ、色々なレバーが前から突き出している。トオルはそのレバーを両手で握り締める。
「リム、周囲の状況をできるだけ把握して教えてくれ、」
「わかったわ」
「よし、じゃあ、発進だ。吸気口に魔粒子展開。」
神雷号の前後の吸気口の周りに魔粒子が収束してきて張り付いた。吸気口に空気を送り込んでいるようだ。
「底部、排気口、開放。」
トオルはガチャリと一つのレバーを倒す。
神雷号底部にある多数の穴から空気が噴出し、浮き上がるが、バランスを崩し、倒れそうになる。
「きゃああ!」
思わずミチルが悲鳴を上げた。
「リム、魔粒子安定翼展開。」
「魔粒子安定翼展開。」
神雷号の左右に魔粒子が収束し、三角形の翼を形成した。傾きかけた神雷号は体制を立て直した。
「後部排気口、10%開放。微速前進、神雷号、発進。」
神雷号はゆっくりと前進し、トオルが作ったトンネルに入っていった。
「完全にトンネルに入ったな。リム、魔粒子安定翼消去。」
「魔粒子安定翼消去。」
神雷号の左右に展開していた魔粒子の翼が拡散して消えた。
「サイコロハウスまでの距離、289キロ。進路クリア、確認できる進路に障害物はありません。」
「よし、後部排気口、全開。全速前進。」
ゴウ!
途端に大きな加速Gがかかり、トオルたちはイスに押し付けられてしまう。
「きゃあああ・・・ト・・トオルさん、これ、どのくらいの速さなんですか?」
「さあな・・・多分、この世界じゃ想像ができないくらい速い・・・とは思うが」
ボ、ボ、ボ、ボ、
50メートルおきに開いたトンネルの空気穴から爆発的に次々と空気が押し出されていく。
「目標までの距離、250キロ・・・・200・・・190・・・」
あっというまに、目標との距離が縮まっていく。
「100・・80・・・70・・60・・50・・40・・」
「よし、前部排気口開放、後部排気口閉鎖。逆噴射。・・・ぬ、う・・動かない?」
「30・・・20・・・トオル、急いで!!」
「カエデ、手伝ってくれ、このレバーを思いっきり手前に引くんだ。」
「わかった。」
カエデがトオルの手の上に自分のを置いて力を込める。
ガチャリ
二人の力をあわせて、レバーが動いた。
急制動がかかった。
「全員、なにかに思い切りつかまれ!」
サイコロハウスの手前のトンネルから勢い良く神雷号が飛び出した。直後に魔粒子安定翼が展開され、その後はゆっくりと降下、サイコロハウスの手前に着地した。




