娘さんをください
「娘さんをください。」
トオルはジンに頭を下げていた。ナンバ家のリビングだ。ジンの隣にはミチルが座り、トオルの隣にはリムが座っている。
ジンはそんなトオルを見て、次にリムを見て言った。
「ふむ、しかし君にはリムさんと言う立派な奥さんが既にいるのではないのかね?」
「はい、ですから、あたしからもお願いします。ミチルちゃんをトオルの妻として、そしてあたしの妹として、あたし達にください。」
リムも深々と頭を下げた。
「お近づきの印としてこれをお受け取りください。」
そう言ってトオルは微かに光を放つ一辺二センチほどの魔粒子結晶を差し出した。
「!?、こ、これは、魔粒子結晶なのか?・・・こんな大きな物はみたことがない。国宝級?」
「はい、これと同じものを指輪に加工して我々は嵌めております。ミチルさんにも渡してあります。」
トオルとリムは左手の薬指に嵌められた魔粒子結晶の指輪を示す。ミチルもそれを赤くなった顔で愛おしそうに見ながらジンの目の前に出した。
「・・・・・はは、そうか、これほどの品を用意できるとは・・・確かにミチルを二番目の妻として娶る甲斐性はあるようだ。分かった、認めよう。」
「「ありがとうございます。」」
「これからよろしく頼む、新しい息子に娘よ。」
「「はい」」
「お父様、ありがとう。」
早朝の冒険者ギルドはにぎわっていた。少しでも良いクエストをとろうと、皆、掲示直後を狙っているようだ。トオル達は、中に入ると赤髪皮鎧の女性に声をかけられた。
「おはよう、トオル、リム、ミチルお嬢様。」
「おはようございます。カエデさん、もうあたしは依頼主じゃないんだから、呼び捨てでいいんですよ?、」
「おはよう、カエデ。そうだぞ、これからは仲間なんだからな。」
「おはようございます。カエデさん、これからよろしくね。」
トオル達は依頼が張り出された掲示板を見ていた。
「うーん、Gランクの依頼は薬草採取か害虫駆除、それに掃除なんかか」
トオル達の中でカエデはDランクだが、パーティ単位で依頼を受ける時、その基準は低いものに合わされるので、この場合、Gか一つ上のFランクまでしか受けることができない。
「よし、この根治草の採取を受けよう。薬草採取の中では報酬が良いし。」
トオルは掲示板から、クエストの紙を取り外す。そこにはクエストの内容と根治草の挿絵が書かれている。
「え、それって、なかなか見つからない上に、根をできるだけ痛めないように採取しなくちゃいけないから、かなり大変ですよ?」
カエデが困惑気味に言う。
「大丈夫、リムは索敵が得意だし、オレは穴掘りが得意だからね。」
トオルはクエストの紙を持って、人がならぶクエスト受注の窓口を横目に各種受付の窓口にいった。そこには黒髪、黒メガネ、黒タイトスカートの美人がいた。
「おはようございます。マチルダさん。」
(ん?、そういえばマチルダさんナンバ商会の店長に似てるな・・・もしかして姉妹?)
「おはようございます。トオルさん、本日はどういったご用件でしょうか?」
「パーティ登録をお願いします。」
「わかりました。パーティ名はどうしますか?」
「えと・・・どうしよう?、考えてなかった・・・」
トオルは困り顔で皆を見た。
「あたしたちのファミリーネームのヒラマツでいいんじゃない?・・・ね?」
「はい、お姉さま、私は賛成です。」
「え、トオルたちのファミリーネーム・・・い・・・いいんじゃないか?」
真っ赤になった。カエデをリムとミチルがニヤニヤしながら見ている。
「それじゃあ、ヒラマツでお願いします。あと、このクエストも受注したいんですけど・・・やっぱり、あっちの窓口に並びなおさないとダメですか?」
「わかりました。パーティ名、ヒラマツでメンバーはトオルさん、リムさん、ミチルさん、カエデさん・・・ですね。・・・あ、大丈夫ですよ、こちらでもクエストの受注は処理できますので・・・はい、OKです。頑張ってくださいね。」
「ありがとうございます。よし、じゃあ、チームヒラマツ、初依頼に出発だ!」




