チンピラ
金髪美女の手をイヌ耳美少女が引いて誘導している。
「お姉さまこっちです、はやくぅ」
「ちょっとまってよミチル、あたしそんなに体力ないんだから」
リムとミチルだ。すっかり仲良くなったようだ。
(ミチルちゃんはオレに惚れてたんじゃないのか?・・・・解せぬ。)
それを一歩離れたところから、トオルが納得いかない顔で見ていた。
リムとトオルは四階建ての石造りの店舗を見上げていた。
「大きいわね」
「ああ、ウニクロの基幹店みたいだ。」
ナンバ商会には完全オーダーメイドの上流階級向の店と既製品を軽く寸法直しするだけの庶民向の店の二店舗があったが、今回トオル達が来たのは庶民向のほうだ。ジンは上流階級向の高級服を何点か作ろうと進めてくれたのだが、それは遠慮し、普段使いできるカジュアルな服を何点かみつくろってもらうことにしたのだ。
店内に入るとズラリとマネキンが並び、様々な服を着ていた。
「さすがに広いだけあって、いろんな服があるなあ。」
「いらっしゃいませ、お嬢様。」
店長と書かれたプレートをつけた黒メガネ、黒タイトスカートの女性がミチルに声をかけてきた。
「こんにちは、店長。今日は、こちらのリムさんとトオルさんの服何点かと靴をみつくろってください。」
「かしこまりました。ではリムさんの服はわたしが見ましょう。トオルさんの服は副店長、お願いね。」
「かしこまりました。」
いつのまにかトオルの隣に40くらいの黒スーツの男が立っていた。副店長と書かれたプレートを胸につけている。
「では、リムさま、こちらへどうぞ。リムさまは美人でなんでも似合いそうだから、腕がなりますわ。」
「そうでしょ、店長、いろんな服を着たお姉さまを想像するだけでウキウキしちゃう。」
「・・・楽しそうだなぁ。」
トオルがポツリと呟く。
「地味なおじさんが相手で申し訳ありませんが。トオルさまもこちらへどうぞ。」
朝開店してすぐに入店したはずだったが、選び終わる頃には昼を過ぎていた。トオルの服はすぐに選び終わったが、リムは店長とミチルに様々な服を試着させられて完全に着せ替え人形状態だった。
寸法直しをする間に昼食をとるために、裏通りにある食堂に向かおうと、トオル達は路地裏の道を通っていた。そこでガラの悪いチンピラに前後を囲まれてしまう。前に二人と後ろに一人、合計三人だ。
「よう、おっさん。美人を二人も連れているとはいいご身分だな。」
ひょろ長いノッポが目を細めて言った。
「後はおれたちが女どもを可愛がってやるから、おっさんはうせな。」
「断る」
「野郎、なめるなぁ!・・・がぁは?!」
トオルに殴りかかったノッポがなにかに弾かれ、そのまま倒れた。
「な、なんだ?、おまえなにをした・・・あぅ?!」
後ろにいた男がトオルにつかみかかったが、これも直前になにかに弾かれ、倒れてしまう。
ドタ!
振り返るとリムにつかみかかろうとしていた男も倒れていた。
魔粒子絶対防御壁、リムとトオルは指輪から常に魔粒子を展開させて目に見えない防御壁を展開している。これは、悪意ある攻撃をすべてカットし、その対象から魔粒子をすべて奪い取ってしまうものだ。この世界に生きる殆どの生物は体内の魔粒子がなくなるとまともに動けなくなる。
「・・・さ、行こうか、」
「あの、でもこの人たちをこのままにしておいていいんですか?」
「大丈夫、そのうち気がつくから」
路地裏の道に倒れたチンピラの顔に通りすがりの野良犬がションベンをひっかけていた。




