絶対防御
洞窟の牢屋の中の地面に少女が寝ていた。歳のころは14、中学生くらいに見える。
栗毛色の頭頂部には三角形の犬耳があった・・・犬耳があった。大事なことなので2度いいました。
上品な服を着ており、貴族か金持ちの家の者かと思われる。盗賊たちはこの子を人質にして身代金を要求しようとしていたようだ。
「魔粒子収集を止めないと、この子が目覚めないわね。」
「ああ、魔粒子継続収集停止。そして・・・絶対防御壁展開。ほら、リムも」
「ええ、絶対防御壁展開。」
2人の指輪から魔粒子が噴出し、それぞれを薄く包み込んだ。展開された魔粒子はその中で目まぐるしく循環している。
絶対防御壁。これは魔粒子を周りに絶えず循環させることにより、悪意ある攻撃を全てカットする。いわゆるバリアである。ここで大事なのは、悪意ある攻撃のみカットすることである。魔粒子はそんなことまで理解できるらしい。
(そう、愛あるタッチはカットしないんだよな。)
ナデナデ
徹は愛おしそうにリムのお尻をなでていた。
「ああん、何するのよ、こんなとこでぇ!」
バチン!
「・・・ごめん」
リムのビンタにも愛があったようで、カットされなかった。頬に紅葉マークをつけた徹が涙目だ。・・・本当に効果があるのだろうか?
徹はポケットから魔粒子結晶を取り出し、牢屋の中の少女に向けた。結晶の中から噴出した魔粒子が少女に吸い込まれていく。少女の意識が戻る。
「ん・・ん?、ここは・・は、そうだ盗賊につかまったんだった。・・・ぐす。」
「もう大丈夫、今出してあげるよ。」
「え、あなたは?」
「通りがかりの旅人だよ。ちょっと下がってて」
「あ、はい。」
徹は手刀に魔粒子を纏わせ、牢屋の格子に振り下ろす。
スパパ
牢屋の格子は簡単に徹の手刀によって切断された。
「さ、出ておいで」
徹は、少女に向けて手を差し出した。
「あ・・ありがとうございます。」
徹の手をつかんで、少女はゆっくりと出てきた。顔がほんのり赤くなっている。周りを見回し、縛り上げられた盗賊たちを見て息を呑んだ。
ガシ!
少女は徹の手を両手でガッチリホールドした。
「とっても強いんですね、あなた。あの、あたし、ミチルっていいます。あなたのお名前をお伺いしてもいいですか?」
「ああ、オレは、トオルだ。こっちはリムだ。よろしくなミチル。」
「よろしくね、ミチルちゃん。」
「はい、トオルさん、リムさん、助けていただきありがとうございます。」
ミチルを連れて洞窟の外に出ると徹のバリアに衝撃がはしった。
ガキン!
横を見ると、赤髪で皮鎧の少女が白目をむいて倒れていた。魔粒子バリアは悪意ある攻撃をカットするだけでなく、その対象の魔粒子まで即座に取り込んでしまう優れものだった。
「カエデ!」
「知り合いか?、ミチル」
「はい、あたしの護衛のカエデです。多分助けにきてくれたんだと思いますが・・・」
「オレを盗賊と勘違いして攻撃してきたわけか。」
「申し訳ございませんでした。」
気がついたカエデは徹の前で土下座をしていた。
「いや、いいよ、単なる勘違いだろ?、ほら頭を上げて。」
「なんと、心の広いお方。ありがとうございます。」
「ほら、盗賊どもをしょっぴいて街に向かうから、カエデさんも手伝って」
「はい。」
少し離れたところに、2頭だての幌付き馬車があった。盗賊が商人から奪ったものだろうか?
気がついた盗賊どもをその後ろロープで引きずるようににくくり付けた。
馬車の中には徹とリム、それにミチルだ。御者代にはカエデがいる。
「よし、じゃあ、街に向けて出発だ。」




