盗賊
リムが実体化した翌日の夜、徹たちは第5サイコロハウスにいた。街まで約100キロほどの距離だ。
徹とリムは並んでベットに腰掛けている。2人の左手の薬指にはそれぞれ透明な指輪が嵌っている。魔粒子結晶を変形させたものだ。今はリムが嵌めた指輪のみ魔粒子継続収集をしているようで、時々魔粒子がリムの指輪に流れ込んできている。
徹は街の方向からやや左の方に両手を向けて目を閉じて精神を集中している。
明日の進行に備えて周囲の索敵をしているようだ。
「うーん、リム、こっちの街から少しずれた10キロほどの所に複数の人の反応があるんだけど・・・なんだろ?」
「え?・・・たしかに・・・・街道から随分外れているのに・・・冒険者がキャンプをしているか・・・それとも盗賊のアジト?」
「魔粒子体で現地に行って確かめてみるか。」
「そうね」
2人は並んでベッドに横になり、指輪から魔粒子をそれぞれ1つだして目を閉じた。2つの魔粒子は第5サイコロハウスの天井をつきぬけ、空に舞い上がり、飛び去った。
街へとつながる街道から10キロほど外れた小高い丘に洞窟があり、その入り口から微かに灯りがもれていた。入り口脇には男が1人退屈そうに立っている。皮鎧を着て、手には槍を持っているが、なんとなく薄汚れている。そこに少し不自然な動きの魔粒子が飛んできた。魔粒子は他にも漂っているが、それも含めて普通の人間には見えない。
『どうやら、盗賊のアジトのようだな。』
『そうね、中の様子も見て見ましょう。』
2つの魔粒子は男の横を通り、洞窟に入っていった。
洞窟は10メートルほど奥に学校の教室くらいの広間があり、そこに5人の男たちが地べたに座り、酒を飲んでいた。動きやすそうな布の服をきている。
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
『リム、こいつらの言葉が全然わかんないんだけど・・・』
『徹は別の世界からきたんだものね、当然よ。・・・そうね、手前のこの男から知識をもらっちゃいなさい。頭の中にそのまま入って、全てを思いだすように念じるの』
『いや、でも、人の知識を勝手にもらうのって・・・・こいつ悪人っぽいから、いっか、じゃ、ちょっと失礼して』
徹魔粒子が手前のデブの頭に入っていった。しばらくするとデブは目がうつろになる。
「・・・・・・!」
デブが仲間に名前を呼ばれたようで、はっとなって、そっちを見て何事もなかったように話し出した。徹魔粒子がフラフラと男から出てきた。
『・・・・こいつらの言葉も、状況もだいたい分かった。もどって対策をたてよう。』
翌日の早朝、徹は、盗賊のアジトの真下まで穴を掘り進み。リムと2人で来ていた。魔粒子継続収集は万が一、盗賊どもに気取られないよう手前で停止させている。
「光よ、我が手に集い、1つとなれ!」
徹の両手に魔粒子が収束し、それを握り込んだ。ガキンと音がして魔粒子結晶ができた。
「魔粒子継続収集再開。よし、これで安全だな。」
徹はできあがった魔粒子結晶をスーツのポケットに入れた。
洞窟の手前に出口を開通させ、外に出た。見張りの男が気絶して倒れている。この世界の人間は体内の魔粒子を失うと動くことができない。
洞窟の中に入ると5人の男たちが普通に雑魚寝状態でいたが、体内から魔粒子を根こそぎ奪っているから、しばらく目が覚めることはないだろう。
室内を物色し、ロープをみつけたので、表の見張りも含めて盗賊どもをしっかりと縛り上げた。
比較的綺麗な服を見つけたので、着替える。若干ダボダボだが、仕方ない。
「これで現地人に見えるかなぁ?」
「見えなくもないわよ、異国から来た田舎者ってことにしておきましょう。」
(ボロい服もリムが着れば何故か優雅に見えなぁ・・・それに対しておれは・・・・解せぬ。)
靴は盗賊どもが履いていたものを脱がせて着用。運良く、2人ともサイズがぴったりのがあった。
「サイズはあったけど、やっぱり、なんか気持ち悪いな、街にいったら、できるだけ早く、服と靴を調達しよう。」
「そうね、そうしましょう。」
「こいつら、ケッコウ溜め込んでいたから、楽に買えそうだしね。」
徹の手には、金貨が詰まった皮袋と宝石がつまった皮袋があった。盗賊のお宝は当然のように奪うつもりのようだ。
「さて・・・後はこの子をどうするか・・・」
徹は広間の奥に目を向ける。そこには木の枠が格子状になった牢屋があり、中には少女が寝ていた。




