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〔三十四話〕 散開

 残り少ない時間。

 けれど遊戯はまだ続いていく。

「おらおら、お前ら! あんまり前に出すぎると怪我するぞ?」


 実に楽しそうに、天一は剣道部の連中から奪い取った木刀を二本、振り回しながら敵を蹴散らしていく。天一曰く二刀流用の木刀らしいのだが、確かに真紅が他の剣道部員から奪った木刀よりも少し短い気がする。


 現在三人は剣道部の部室付近を抜け出し、体育館の中を一直線に突破しているところだった。一直線といっても事前に設置されていた障害物なども多く、三人で一緒に行動しようとすると少々狭い。


 野外に部室や体育館があるため逃げ道は他にもいくらかあったが、康と連絡が取れなくなったことや互いの戦闘能力を把握するためにも、あえて敵が多い場所を選んで進んできた。


 結果として、身体能力だけならば三人とも同程度。あとは実戦を乗り越えてきた場数で真紅と天一が上、というところだろうか。その結果というわけではないが、空は敵から武器を奪うことができなかった。もっとも奪ったところで空の得意な武器は銃。流石に学園内で使用できるものではない。


「しかし、流石にこのまま全校生徒を相手にするのは難しいぞ。一般人とはいえ、運動神経や知能はそうとうなものだ。このまま数で押し切られたら、いずれ空がつぶれる」

「って、俺が最初って確定してるの?」

「そうだな。流石にちょっと、手加減がしづらくなってきてはいる――な!」


 走りながら天一は二本の木刀を左右に一閃する。アメリカンフットボールのユニフォームを着た男子生徒二人は一瞬で気を失い、その場に音を立てて崩れ落ちた。それにつられたわけではないが真紅も片足を軸に円を描くように一閃する。一斉に襲い掛かってきた生徒たちを力いっぱい吹き飛ばし、また駆け出す。空も上手い身のこなしで奇襲を退け、手をひらひらと揺らして冷やしていた。


「お前だけ素手じゃん。誰が最初につぶれるかは目に見えてるって」

「う……でもさぁ、流石に学園で銃をぶっ放すのはなぁ」

「銃刀法違反とかで捕まるな、確実に。もっとも、俺たちも人のことをいえない気がするが」


 三人そろって、笑う。案外余裕があった自分に驚きつつも、片手で持った木刀を軽く一振り。物陰から襲ってきた生徒の顔面を捉え、鼻血を出しながら男子生徒は床に倒れる。


 少し狭いため、思い切り振ることはできない。その点では天一の使う木刀の方が小回りが利いていいだろう。


 しかし、そろそろ木刀の強度が心許ない。何人もの生徒を吹き飛ばしているせいで、刀身はぼろぼろ、柄も軋んでいる。あと何発殴れるのか。少なくとも二桁に届かぬうちに壊れてしまうだろう。


「……天、一つ提案だ。このまま三人で固まっているのもまずい。どうせ康からの連絡も途絶えていることだ、ここからは三人、ばらばらに行動しないか?」


 元々、康の負担を軽くするため一緒に行動していたのだ。康のサポートが途切れている今、共に行動していても敵を寄せ付けるだけだった。


 それならば三方に別れ、生徒たちを分散させたほうが各自が生き残る確率も上がるだろう。


 天一も考えは同じだったのか、あまり考えるそぶりも見せず頷く。


「だな。俺はこのまま校舎へ戻って敵を撹乱する。二人はどうする?」

「俺は野外で戦おう。その方が上手くこいつを使える。空は……何ならこの際、新しい武器にでも挑戦してみたらどうだ?」


 何の気なしに話を振ってみるが、空からの返事はない。振り返ってみると空は興味深そうに倒れている生徒から長い棒を取り、目線の高さまで掲げて眺めている。


「空?」

「うん? あ、わるいわるい。散開するんだっけ? 俺もちょっと面白いもの見つけたし、俺たちの校舎付近まで移動するかな。あっちは確か、被害が出ないようにって下校してるはずだよな?」

「ああ。京たち一般生徒はもう下校済みだ。備品は流石に壊さないようにしろよ?」


 了解と言う代わりに親指を立て、空は棒――槍を構える。先端の凶器部分が取り除かれているだけで、それはれっきとした槍だ。リーチは申し分ないし、疲れ始めていた空にとってはちょうどいい武器となるだろう。


 真紅や天一もそろそろ新しい武器を探さなければならない。そういった点でも散開することは、今取れる最も有効な手段と言えた。


「それじゃ、残り時間も生き残れるよう健闘を祈ってるぜ」


 片手で二本の木刀を握り、天一は右手の拳を突き出す。


「そっちこそ。負けるなよ?」


 それに応え、真紅も拳を突き出した。


「もうかなり時間がたってるし、もう一ひとふんばりだな」


 最後に空の拳が突き出され、三つの拳が軽くぶつかり合う。


 それを待っていたかのように、物陰から大量の生徒たちが押し寄せてくる。


 三人はそれぞれ別の方向へと逃げながら、襲い掛かる敵を切り伏せ進むのだった。



 星野ジャパンを見ていたら更新が遅れてしまいました。ちょっと反省。


 今回、さほど量はないのですが、繋ぎという意味ではまぁいいくらいの量かなぁと思っています。

 どうでもいいことですが、本編より後書きで書くネタを探さねば……。


 さて次話は少し込み入ったお話。あいつとあの子の関係が明らかに(!?)。


 ではでは〜。

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