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2話

新2話です。

申し訳ありません、少し書き直したので新しい部分は最初のプロローグになります

 あれから3日経った。


 あの事故の後、見るからに大怪我をしていた俺はすぐに病院に担ぎ込まれたらしい。

 周囲は大騒ぎしていたらしいが、数時間寝たら目が覚めたし、重いのは右腕の複雑骨折と両足の骨折程度だったから、あと数日もあれば退院できるはずだ。

 医者や看護師からは化け物でも見るような目で見られたが、まったく訳が分からない。


 そして、見舞いに来たサクが色々と教えてくれたが、あの時の事故で俺以外のケガ人はいなかったらしい。

 本当に良かった。

 あの事故、結構ニュースで大きく取り上げられたとも聞かされた。

 それと言うのも朝の時間帯の大事故(事件かもしれないが)と言うだけでなく、なんとあのトラックには誰も乗ってなかったらしい。

 運転手もいないのにあんなことになったので、原因にかなりの関心が集まってるとのことだ。

 ま、原因なんか入院してる俺には関係ないけどね。警察とか頭のいい人たちに任せますわ。

 それよりも今は――


「暇だな」


 四肢のうち3つが使い物にならない状態では身動きの取りようがない。

 それはつまり修行すらできないということだ。

 サクが見舞いの時に置いてってくれたマンガは全部読んじまったし、今は昼過ぎなのでサクが見舞いに来るとしても3時間ほど時間が空く。

 大部屋なら近くの人と話したりできるのに、残念ながらここは個室だ。

 そんな風に暇を持て余し何も考えずボーっとしていると、カラカラと音を立てて病室の扉が開いた。


「鶴万千亀さんですね?」


 突然俺の病室に入ってきてそう問うてきたのは、見たこともない美少女だった。

 日本人ではありえない輝くような金髪と海のような青い瞳。

 目鼻立ちはすっと通っているが、その顔には一切の表情が浮かんでいない。

 その顔には美しさと不気味さが混在しており、まるで西洋人形のように現実感がない。

 体系はすらっとしたモデル体型。八頭身というやつか、驚くほどのバランスだ。

 身につけたフリフリのゴスロリっぽい衣装がより彼女の人形らしさを強調している。


「あ、あぁ。俺が鶴万千亀だけど……アンタは?」


 前触れのない突然の来訪に加え、その相手がこんな美少女だったこともあり俺はしどろもどろになりつつも何とか答えた。


「そうですか。本日は貴方にお願いがあって参りました」


 美少女は俺からの問いには答えず、一方的に言葉を続ける。


「お願い?」


 こんな会ったこともない美少女からお願いされるようなことなど心当たりはない。

 ましてや今の状況下でならなおさらだ。

 だがまぁ、こんな美少女からの頼みとあらばできるだけ応えたいとは思う。

 それが健全な高校生男子というものだろう。


「鶴万千亀さん。貴方――」


 美少女はまっすぐと俺の目を見つめながら『お願い』を口にした。




「死んでいただけませんか?」

「お断りしますっ!!!!!」



「……」

「……」



 病室内に沈黙が下りる。

 なんだよ。今回の件で何かしらの恋愛フラグでも立ったのかと思いきや、とんだ電波さんだったわけかよ。

 頭おかしいだろ。

 なに、いきなり『死んでください』って。

 言われて『はい死にます』とかなるわけないじゃん。

 そもそも命狙われるような覚えないし。

 あ~、期待して損した。

 いやまぁ、普段着としてゴスロリ衣装着てるような人がまともなわけがなかったな。うん。

 てかいつまで俺のこと見てんだこの電波さんは。


「鶴万千亀さん」

「あ?」

「貴方、死んでいただけませんか?」

「何度訊かれようと断る!! てかさっきも言ったよね? 何なの、聞いてなかったの?」

「……」

「……」

「……鶴万千亀さん。貴方、死んでいただけませんか?」

「ループするんじゃねぇぇぇ! なんなんだよアンタ! 断るつってんだろ!? 壊れかけたラジオなの!? 俺の声は何も聞こえてないの!?」

「三度の要請にも応じないことを確認。これより転生儀式強制執行を開始します」


 三度目の正直なのか、四度目のループは始まらなかった。

 けど、代わりに目の前の少女の口から洩れたのは意味の分からない言葉だった。


「は? いったい何言って――」


 しかし、俺の言葉はそこで途切れる。


「……!?」

「……おいおい、いきなりすぎるでしょ」


 俺は間近にある電波少女の深い青の瞳を睨みつける。


「不可解です。到底人間の反応速度とは思えません」

「そりゃ俺が人間じゃないって言いたいの? 失礼だなアンタ」


 不可解って言いつつも表情変わらないし。本当に変な奴だ。

 しかも一瞬で距離を詰めたことと言い、振り降ろしてきたコレと言い、普通じゃない。

 だってコレ、ピカッと手が光ったらいつの間にか握ってたんだぜ。


「コレいったいどこから出したの?」


 俺は左手の五指で挟んで止めた金色の剣に視線を向けながら問う。


「……」


 しかしと言うか、やはりと言うかその問いには答えはない。

 うーん、ここまで反応がないと流石にちょっとイライラしてきたぞ。

 『神高の最後の良心』とさえ呼ばれるほど温厚なこの俺がだ。

 なので、先程から電波少女が剣を取り戻そうと力いっぱい引いているが、絶対に離すつもりはない。

 むしろ圧し折ってやろうかなと思ってるのだが、さすがに利き手じゃない上に体調も本調子でもないとくれば難しい。

 挟み込んだ五指で力を込め続けているが、少しばかり軋むだけに留まっている。良くて刀身が歪むくらいだろうな、これだと。

 にしても硬過ぎるぞこれ。金かと思ったけど違うっぽいぞ、何で出来てんだこの剣。

 それでも、右手なりどちらかの足なりすれば、本調子でなくとも圧し折る自信はあるのだが、生憎とそのどれにもギプスがはめられており自由にならない。


「……ッ」


 あ、引き抜くの諦めやがった。

 電波少女は剣の柄から手を放して跳び退り、俺から距離をとった。

 うわ~。


「卑怯だぞ! 動けない相手から逃げるなんて! 攻撃届かねーじゃねぇか!」

「そこですか? 動けない相手に攻撃することは卑怯じゃないのですか?」

「いや、別に」


 それは別にいいだろ。時と場合と相手によっちゃ俺もやると思うし。

 ただ、自分が圧倒的に有利なのに逃げるのはそりゃ卑怯だろ。


「やはり貴方は不可解です」

「俺もなんだって入院中に命狙われてんのか不可解だけどな。まぁ話してくれそうもないから別にいいけど」

「……」


 ほらまた無言だ。てかまた手が光ってるし。代わりの剣を出すのかなっておい!


「それは大人げなさすぎだろ!」

「技術と膂力が人間離れしている以上、単純な破壊力こそが最適解だと判断しました」


 電波少女は両手に金色の戦鎚を持ち、構えた。

 あの細腕でよく持てるなと思うが、先程の動きから察するに見た目通りの身体能力じゃないのだろう。

 確かに、悪くない手だ。質量攻撃ってシンプルだけど単純に強いし。

 弱点として避けやすいってのがあるが、ギブスハメてる奴には関係ないもんな。

 この武器の選択で、コイツがガチで殺しに来てるってのがありありと分かった。

 クソ。なんで命狙われてんの俺?

 はぁ、メンドクサ。

 でも――


「確かに最適だったかもな――俺が無手ならさ」


 そう言って俺は刀身を持っていた左手の剣を宙に放り、落ちてきたところで柄の方に持ち変える。

 はっきり言って、こっちに武器があるなら左手一本だろうが戦鎚の2本ごとき斬り飛ばせないとは思えない。

 ……ぶっちゃけ、無手でも何とかできる自信しかなかったけどさ。武器あった方が楽だから使うが。


「……あ」


 そんな俺の様子を見た電波少女は、今気づいたと言うように声を漏らした。

 まぁ表情はピクリとも動いてないんだけど。

 さてさて、どうしたもんか。

 このまま退いてくれれば楽なんだけどな~。

 いつもなら痛みも感じさせずに制圧できると思うけど、今の状況だと手加減ミスってどっかしら痛めたりケガさせたりってことは起こりうるし。

 いくら命狙われてるって言っても女の子を傷つけたりしたくない。


「……」

「……」


 無言で対峙する俺達。

 そんな時、唐突に病室の入り口が猛烈な勢いで開いた。

 横開きのドアが端っこのストッパーにぶち当たってけたたましい音を上げる。


「ハイ! そこまでそこまでそこまで! 双方武器を収めて!」


 飛び込んできたのは、比喩ではなくて頭がピンクな女だった。



 くそ、また変な奴が来た。

 何なんだよ、暇を持て余しちゃいたけど変人奇人はお呼びじゃないぞ。

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