1章3話アリシャの訪問 知らされる事実
「何か用か?アリシャ・ユース・マステス。」
そこにいたのは、アリシャだった。
「はい、お話したいことがありまして来ました、ユウ様。それと私の事はアリシャとお呼びください。」
嫌でも異性を感じさせる綺麗な微笑を浮かべそう言ってきた。
「はぁ、まぁいい。こっちも聞きたいことがあるんだ、中に入れよアリシャ。」
そう言い、アリシャを部屋の中に入れる。聞きたいことがあるのは本当だ。色々とな・・・。
「好きなとこにかけてくれ。」
「わかりました。」
ベッドに腰掛けている俺の隣に、アリシャは座ってくる。
「あの、アリシャさん?何故俺の隣に座るんですかね?」
「ユウ様は好きなとこにかけてくれって言いました。なので、ユウ様の隣に座らせて頂きました。・・・ダメですか?」
「・・・別にいい。それよりなんで俺の名前知ってるんだ?教えてないし、同じ転移者の中で1度だけ呼ばれたが、そこにお前の姿はなかった。アリシャが知る機会はまったくなかったはずだぞ。」
「それはですね、私のスキル〈鑑定〉で勝手に皆さんのステータスを確認させていただきました。その時に知りましたね。」
〈鑑定〉か、これは厄介なスキルのようだな。されたことに全然気づかなかった。
「何のためにだ?どのみち明日になれば全員のステータスがわかる。そしてその言い方だとアリシャの独断のように聞こえるのだが。」
「それは、私の――――――いや私たちの願いだからですよ。ある御方の出現を待ちわびているのです。これは、ユウ様を訪ねた理由と重なることです。長い話になるのでその前にお聞きしたいことはありますか?」
あるお方・・・一体何なんだ?
「いや、アリシャ話を続けてくれ。」
「では、僭越ながら。改めてまして、私はユース王国第一王女アリシャ・ユース・マステスです。先ほど私たちと申しましたが、これは王国のことではないのです。私を含む各種族の〔王〕に関する称号を持つ者達のことです。魔王もその中の1人でして、私は〔人王〕の称号を持っています。そして、私たちを【王選者】と言います。各種族ではそれぞれ神を祀っており、その神から選ばれた者たちが【王選者】なのです。その他にも数多の神が存在します。そして、この世界を作られた【最高神シュナイゼン】がおられます。それと対を成す存在の【邪神アークノルド】がいます。光ある限り闇もある。【邪神アークノルド】は、この世界に災いをもたらし世界の破滅を目論む神なのです。今【邪神アークノルド】は封印されていますが、一年前からその封印に綻びが生じ、復活まで時間がそうありません。私たち【王選者】の役目はその【邪神アークノルド】の撃破または封印なのです。ですが、どちらにしても私たちの力だけではなく、〔覇王〕様のお力が必要となるのです。そして、その〔覇王〕のお力を持つ方が今回の召喚で現れました。」
「・・・それは誰なんだ?」
ここまで聞いて、分からないほど俺は馬鹿ではないがアリシャに聞き返してみる。
「もうおわかりなのでしょう?ユウ様、あなた様でございます。」
「やっぱりか・・・。でもなんで俺――――――――いや異世界人が〔覇王〕の力を持っているんだ?」
「この世界の種族すべてでは、〔覇王〕の力にその身が耐えられないからだそうです。〔覇王〕の力は【最高神シュナイゼン】の御力と同等かそれ以上にもなります。これは素質によりますが。この世界の人々は神から造られた生物、それが【最高神シュナイゼン】の御力を制御するなど世界の理を歪めてしまうからとなっていますね。」
「そうか、なんとなくわかった。だが、俺はどうすればいいんだ?〔王〕たちを集めればいいのか?」
「そうなのですが、それだけではだめなのです。今のユウ様ではまだ足りないのです、〔覇王〕として。ですが、安心してください。初代の〔王〕たちは、次代の〔覇王〕の力を引き出すべくこの世界に【十四迷宮】を作り上げました。これを制覇する事で、初めて〔覇王〕として完全覚醒することが出来るのです。」
「やっぱ、そう簡単な話じゃないな。簡単だったら既に【邪神アークノルド】なんて倒してるはずだしな。アリシャ、その話引き受けた。願ってもない機会だ、誰の追随をも許さない力を持ち旅ができるんだからな。けど、茜と比良坂先生の2人にはこの事を話させてもらうぜ?俺達の中で頼りになる比良坂先生にはのちのフォローをしてもらいたいし、茜にはあまり心配かけたくないんでな。」
「ありがとうございます、ユウ様。お2人の件はわかりました。ですが、くれぐれもお気をつけくださいね。ユウ様が死んでしまえばこの世界のすべてが破滅を迎えてしまいます。勇者様たちもその例外ではありませんので、ユウ様からリスクを上げてしまうことにならないようお願いします。なにせ敵は腐っても神なのですから。」
「そうだな、忠告ありがとう、アリシャ。さて、話もだいぶまとまったし、俺のステータスを教えて貰ってもいいか?」
「これがユウ様のステータスになります。」
「うーん・・・、高いんだろうけどまだまだって感じだな。よし、OK。じゃあアリシャ、もう夜も遅いしお互い寝るとしようぜ。部屋まで送ろうか?」
流石に王城だからといって危険がないわけじゃないのでベッドから立ち上がりながら言ったのだが、次の瞬間アリシャもベッドから立ち上がり、今日1日の中でとびきりの笑顔でとんでもないことを言い放った。
「その心配には及びませんよ。なぜなら、私の部屋はここなのですから。」
「ハァ〜!?ここって、どういうことだ!?1国の王女がそんなことして大丈夫なのかよ?もし、殺されることがあったらどうすんだよ?」
「ユウ様は私を殺したいのですか?」
やめろ!そんな潤んだ瞳をしながら上目遣いで俺を見るな!俺も殺るつもりは毛頭ないが罪悪感が半端じゃ無い。
「そんなわけないだろ?ただのものの例えだ。アリシャの替えなんて存在しないんだから。悪かった、許してくれアリシャ。」
ごく自然の流れでアリシャを抱き寄せ、謝罪する。無意識に抱き寄せてしまったが、アリシャからはとても甘くいい匂いがした。
「ふふ、わかってますよユウ様。先程までのお話でそんなことする人ではないと分かったのでちょっといたずらしてみたくなっただけです。それじゃ、一緒に寝ましょうか。」
とても肝心なことを忘れていた。同じ部屋で生活するのに、この部屋にはベッドがひとつしかない。
「じゃあ、アリシャはベッドを使ってくれ。俺は床で寝るから。」
仕方なしに俺はベッドをアリシャに譲ろうとする。
「何を言ってるんですか?2人で入ればベッドで寝れますから、ユウ様もベッドで眠れます。」
しかし、アリシャは俺の提案を木っ端微塵に粉砕し、ストレートに言ってきた。
「どうなっても知らんぞ、俺は。言った以上自己責任だからな。」
「わかってますよ。ではおやすみなさい。」
俺とアリシャはベッドの中に入る。俺が横になるとアリシャは抱きついて来る。
「ほんとに知らないからな。・・・お休み。」
〔覇王〕か。あの夢にもここに来る時にも聞いたこの言葉。これを予期してたのかな?だったらあの女性は誰なんだろうな。そんな事を考えながら俺は目を閉じた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・保ってくれよ、俺の理性!
ステータスは次回載せまする。