1章2話 俺達への説明
「はぁ、どこなんだここは?」
いつの間にか気絶していたようだ。そして、目が覚めたのだがそこは教室ではなく、大きな城の広間みたいなの1室のようだ。周りにはクラスの奴らがおりほとんどが気づき始めている。
「ここどこ?」
「どうなってんだろ?」
「ぐふふ、これはまさに異世界転移!!ここから僕のチーレムライフが始まる!ぐふふふふ・・・」
そして、クラスの奴らは大騒ぎはしないものの戸惑っている様子だ。一人だけ気持ちの悪い笑い声を出しながら何か言っているがとりあえずスルーで。
「静かにしろ!落ち着け、お前ら。全員この場にちゃんといるな?」
ここで、意識を取り戻した比良坂先生が声を出し、クラスの皆をまとめ始めた。
「ようこそ、勇者様達。」
落ち着きを取り戻し始めた俺達に、よく通る綺麗な声が聞こえた。
「遅くなり、申し訳ございません。私の名前は、アリシャ・ユース・マステスと申します。どうか、私たちの話を聞いてください。」
「私は比良坂 紫苑だ。ここにいる全員の代表として挨拶させてもらう。とりあえず、今はそちらの意向に従うがあまり私たちを侮辱する行為だけはしないでいただきたい。」
「それでかまいません。私たちはあなたたちにお願いする立場。あなたたちに気分を害されるのは本意ではありませんのでご心配なく。では、こちらへいらしてください。」
比良坂先生、この場に適応するの速すぎません?クラスの奴ら、この急展開についていけてないんだが。
「そういうことだ。お前ら移動するぞ。早く立て。」
「「「「「「は、はい・・・」」」」」」
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案内されたのは、王のいる王室だった。
「待ちわびたぞ、勇者たち殿。わしはこのユース王国の国王、ガルニファン・ユース・マステスだ。此度の件についてわしの口から説明させてもらう。」
「かまわない。」
比良坂先生が短く答えると周りにいた奴らがざわめき、1人の男が前に出てくる。
「貴様!王の御前であるぞ。何なのだ、その態度は!」
「フンッ、知らん。我々は貴様らの勝手な理由によってわけもわからん所に連れてこられたのだ。そして、その説明をしてもらうためにここに通されたのだ。貴様こそ、場をわきまえろ。我々を連れてくる程のことが起こっているのであろう?今我々の気分を害し協力を得られない、最悪全員敵に回したとなったら被害を被るのは貴様らのはずだがな。それを知っておいてなお、我々を責めるというのか?」
男の叱咤に、比良坂先生はこう返した。まったくもって正論であり、言い返された男は歯ぎしりをしている。
「こ、この女風情がっ!!2度とそんな口をきけぬようしてくれる!」
「待て!」
男は逆ギレして、比良坂先生に掴みかかろうとしたが、王の静止の声が部屋に響いた。
「マイガルドよ、控えよ。わしらは協力してもらう立場。この者の言う通りだ。」
「しかし!国王・・・」
「マイガルド、2度も言わせるでないぞ。控えよ。3度目はないぞ。」
「うっ・・・、はっ。」
国王が男――マイガルドを静止し話を続ける。
「申し訳ない。この者達はわしにとって大事な者達だ。見逃してやってくれ。」
「全くだ。さっきの女性は物わかりが良かったが、ここには物わかりの悪い男しかいないな。まぁいい、話を続けてくれ。」
「それでは、説明をはじめる――――――――――――――――――――。」
そこからは長い話だった。まとめるとこうなる。
ここは、俺達がいた世界ではなく、【リムドガルド】という世界。科学は発達しておらず、逆に魔法が存在している。
この世界には、多種多様な魔物が蔓延っており、各国の騎士団や冒険者ギルドや魔法士ギルドなどに登録している者達が武器や魔法を使い、魔物を討伐し生活している。いわゆる、剣と魔法の世界だ。
今、魔王という魔物、魔族の頂点に立つ者が現れ、魔物が活性化している。まだあちらから攻めてきていなく、各国の騎士団や強い者がせめて行ったが返り討ちにあい、苦戦を強いられている。
よって、俺達に力をつけてもらい共に魔王を倒して欲しいらしい。
この世界にはステータスと言う概念がある。
異世界から召喚された者は、その世界の種族より強大な力を持っており成長も凄まじいと古文書に書かれていると言う。
項目は以下の通り
〈名前〉
〈種族〉
〈ジョブ〉
〈Lv〉
〈称号〉
HP:
MP:
ATK:
DEF:
MIND:
DEX:
LUK:
〈スキル〉
HPとは生命力のことである。これが0になれば人は死ぬ。回復法は寝ること、または回復魔法やポーション系での回復だそうだ。
MPは魔力のことである。魔法にはそれぞれ魔力を消費しなければ発動しないため、魔法を使うには必要不可欠。0に近づくにつれ、怠惰感が襲い0になると意識がなくなる。そして、魔力欠乏症になりステータスの低下、魔力の回復力が著しく低下する。魔力欠乏症は治るまでMPポーションなどによる回復ができなくなり、自然回復を待つしかない。魔力が自然回復による全回復であれば治る。しかし治るには個人差があり、回復しても治らない者も過去にはいたらしい。自然回復法は寝ること、安静にして生活することだそうだ。
ATKはその人物の素の攻撃力、筋力のことだ。こちらの世界の一般男性は40、騎士や冒険者などは60以上らしい。一般女性は20~30、騎士や冒険者は55以上らしい。
DEFはその人物の防御力のことである。これの数値が高いからと言っても怪我をするし、剣で斬られれば裂傷ができる。高ければ、HPの減りが少なくなる。例えばDEF20の者がHPが50減ったとしたらDEF40の者は40しか減らないらしい。例えなので本当かは定かではない。
MINDは精神力のことである。魔法の攻撃力、魔法の耐性はこれに比例する。高ければ精神的状態異常の緩和も望める。
DEXは器用さのことである。魔法には様々なコントロールが必要であるため、高いほどより繊細なコントロールができる。武器などの扱いも同様である。
LUKは運である。状態異常の成功率に関係してくる。あとはあまり関係ない。
〈種族〉は、そのままの通り種族を表している。この世界には人族、獣人族、魚人族、翼人族、龍人族、蟲人族、魔人族、森人族、巨人族、妖精族、土人族、鬼人族、精霊族、聖魔族がいる。俺達は人族に該当しているらしい。
〈ジョブ〉は、戦士や魔法士などといった役を表している。これにはレベルが存在しておりレベルが一定値を上回れば上位職につくことが出来る。しかし、上位職がないものもあり、それらはユニークジョブと言われるものらしい。ジョブにつくことで成長補正がつく。レベルをあげるには、訓練でもいいが得られる経験値は微々たるもので、魔物や対人の実戦の方がより多く得られる。
〈Lv〉は、ジョブのレベルとは別に存在する戦闘のレベルだそうだ。一般だと20にも満たないらしい。上限は分からず現在王国騎士団の中のトップは41でそれ以外は31前後。どの種族でも30を越えたあたりからほとんど伸びないらしい。レベルが上がればステータスがのびる。
〈称号〉とは、偉業を達したり、ある一定の条件を満たすことで得られる。各称号にはステータスの補正がついている。
〈スキル〉とは、その人物が会得している技能を表している、。これにもレベルが存在しており、レベルが上がる事に無駄のない精錬されたものになっていく。
そして、現実は無情なものだ。現時点において帰還の方法はなく、魔王を倒しても変えることは出来ない可能性があるということだ。これを聞いた瞬間、クラスの奴らは声を上げる
「ふざけないでっ!!!」
「家に返してよ!」
「お前らの身勝手に巻き込んでんじゃねぇ!」
「ぐフフフ、僕のチーレム・・・・・!」
などなど、様々な声が上がっている。茜もいきなりのことで怯えている様子だ。
「ユウくん・・・、どうしよう・・・」
「安心しろ。まだ何をするかわかんないのはクラスの連中も一緒だ。皆と頑張ろうぜ、茜。」
茜は俺に抱きついて来るので、抱きしめ返しながら冷静に状況を把握していく。
「皆、協力してあげよう!」
そう言い放ったのは、水月 高貴だ。このクラスの委員長で文武両道でリーダーシップがあり高身長でかなりのイケメンだ。・・・だが俺は知っている。奴はかなり黒い。確かにスペックは高いがそれゆえか、自分が正義だと信じてしまっている。自分は間違っていない、異論があればすべて相手が間違っているというとんでも理論の持ち主だ。そして、自分に従わない者がどんな目にあっても放置だ。目の前でイジメられている奴が従っているかいないかで見捨てたりする。このクラスで高貴に従わないのは、俺と茜、比良坂先生ぐらいだ。
自分至上主義の高貴がこんなこというには大方見当がつく。ここでもチヤホヤされたいのだろう。異世界を救った勇者として、その肩書きがほしいのだろう。
「高貴がそういうのだったら」
「そうだな。やろうぜ!」
「私も頑張る!」
「僕のチーレム!!」
ほら、高貴の言葉で皆がその気になる。比良坂先生も呆れた表情をしている。そして、最後の1人はずっとチーレムって五月蝿いな。
「国王様!僕達はあなた達に協力させてもらいます!」
「そうか!やってくれるか。では、今日はもうこれで終いだ。明日からステータスの確認を行い訓練を始めてもらう。ではよろしく頼む。」
「はい!」
まぁ、どのみち帰還の方法がない限り【リムドガルド】で生活していかなきゃ行けないんだ。自ら動いた方がその方法も早く見つかるだろう。
クラス全員に、個室が与えられ明日までそこで過ごそうということになった。
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(そういや、あのアリシャはどうしたんだろうか?王の所にはいなかったようだが。そして、こちらへ来る前に聞いた声は何だったんだ?ここにいる誰の声でも無かった。あの女性は誰だ?)
そんな考えことをしてると、扉がノックされた。
(誰だ、茜か?)
「少し待っててくれ」
そう言い、扉のところへ向かい開く。そこにいたのはアリシャだった。