B4へ
ドクン、と心臓が跳ね上がった
おそらく、監督は・・・
はしごが外れたんだ、ということはすぐに理解できた
10メーターの高さから落ちたらどうなるか
想像しただけでも吐きそうだった
「監督、何とか無事でいてください」
もう先に進むしかなかった
時間は7時
行動に移してからおよそ2時間が経過していた
背をかがめながら、中空の足場を進んでいく
ダクトがそこら中に転がっていたため、かなり進むのが困難な状態ではある
しかし、幸い行き止まりになっているところはなく、狭いがすすむことはできていた
今、ちょうどB5階の上空を歩いてる状況だ
つまり、上に続く階段のようなものがなくても、北側の階段まで接近することができれば、もしかしたら仮設の非常階段を使って上に上がれるかもしれない
そう思って、感覚で、北側へ進む
這いつくばりながらなんとか前進していくと、小さな入口が見えた
あれはおそらく貯水槽室とコア部(真ん中の通路の部分)のつなぎ目のドアだな、と思った
ドアを開けて、さらに通路を通る
天井が落ちてきたのに天井から釣っている通路は平気なのか?と思ったが、真相が分かった
落ちてきたのは天井ではなく、横の壁のがれきだった
そのがれきが、中央の通路をふさいでいたのである
天井から釣ってあった通路は無事で、そこから反対側に移動することができた
そのまますすみ、反対側にたどり着く
下りの階段を見つけ、降りていくと、反対に出ることができた
まず、廊下に出て、階段を確認する
「くそ、同じか」
階段は支えを失い、南と同じ状況だった
北の広い空間に出た
ここは確か機械駐車場の設置されるスペースだ
今はまだ何もなく、ただただ広い空間であった
そこには、天井に巨大な穴が開いており、ここから資材や、設備を下す
しかし、ここから上に上がることは到底できなかった
なぜなら、天井まで15メーター以上の高さがある
はしごを使っても全く届かない
そこに立ち尽くすしかなかったタケルの目に、人影が映った
「おーーい」
と上から声がする
まさか救援か?と思い返事をする
「おーーーい、ここでーす」
「誰かいたのか、無事か?」
と声がする
「無事です、助けてください」
と大声で聞いた
「そこにいたらまずい、この建物は耐震に問題があっていつ崩壊するとも限らない、そこに作業車があるだろう、それでこっちまであがってこれるか?」
と言われた
作業車?と思い周りを見渡すと、そこに大きめの作業車が1台あった
作業車には15メーターまで、と書いてある
なるほど、確かにこれで上にアクセスできるかもしれない
タケルは、試してみよう、と思い、作業車にのった
しかし、車は動かない
鍵が必要だったのだ
「鍵が刺さっていません」
と聞いた
「かぎい?そこらへんの材料置きにないか?とにかく探すんだ、そしたら上からロープでひっぱってやる」
と言われた
材料置きを探す
材料置きはあったが、肝心の工具箱には南京錠がかかっていて、中を確認できない
さっきの電気の物置に行けば、サンダーがあったため、それで切断することができる
しかし、後戻りするには、貯水槽のはしごをもとに戻さなければならなかった
「南京錠を外せれば、中に鍵があるかもしれません でも南京錠が外せません」
と聞いた
「今度は南京錠か、クリッパーかなにかないのか?」
クリッパーとは、ボルトクリッパのことで、それで鉄線を切ることもできる
しかし、そんなものは置いてなかった
作業車の上に腰道具が置き忘れてあるくらいだ
そうだ、とタケルは思った
工具箱自体を壊せばいい
工具箱はプラスチックでできていた
腰道具から、マイナスドライバーとハンマーを取り出し、強引にこじりはじめた
バコ、と無理やりフタを外すことに成功した
中には予想通り、高所作業車の鍵があった
それを差し込み、作業車で、上にアクセスした
ギリギリのところで止まると、上からロープが落ちてきた
「これにつかまれ」
そういわれ、捕まると、上に引き上げられた
どうにかB5階から脱出することに成功した