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サーカス

タラップを上り、巨大な貯水槽の上に到着した

上から見下ろすと、地上から10メーターはあると思われた

「落ちたら確実にあの世だな」

そんなことを思うと、つい足がすくんだ

「下は見るな、とにかく、上に行けるルートを探そう」

そう一人でつぶやき、貯水槽の上を、手すりにつかまりながら歩いた

壁面に目を走らせるが、何もない

しかし、貯水槽の先に中空にある足場を発見した

おそらく、ダクトなど空調設備を設置するための足場だ

その証拠に、まだついてないダクトなどが、足場の上に転がっている

「この足場はしっかりしてそうだな 多分本設の足場だ」

しかし、貯水槽からその足場までは、かなりの隙間があった

ジャンプで飛びつくには足りないくらいの隙間である

「こっちに飛び移れれば、上に続く階段か何かが発見できるかもしれない」

タケルは足場に移る方法を考えた


いったんタラップから降りて、電気系の資材置き場に戻ってきた

ドラムに巻き付いている電線をつかみ、腕を広げて大体の感覚で図っていく

「これで、大体1800か」

タケルの身長はおよそ180センチである

それを、少し多めに7回繰り返す

約13メーターの電線を作り、資材置きにあった電線切断用のはさみで切り、手で運べるサイズに巻いた

さらに、置いてあった脚立を手に取って、さっきの貯水槽まで戻ってきた

脚立に電線を結び、自分は電線だけもって上にのぼる

そして、脚立を引き上げた

どうにか持ち上がり、水槽の上まで引き上げることに成功したタケルは、次に脚立をはしごにした

これを、さっきの足場に引っ掛けるつもりである

脚立の長さはおよそ3メーター

足場にかかるか微妙な長さである

脚立の端を持って、慎重に足場に伸ばす

どうにか足場には届いた

水槽と足場をつなぐはしごが出来上がった


「よし」

と気合を入れて、はしごに手をかけたが、やはり恐怖で動けない

手すりになるものは何もなく、かかっているはしごも不安定そのものだ

地上からは10メーターは確実にあり、はしごの先が外れれば、あとは想像した通りになるだけだった

「さっきの場所で待機するって手もなくはない」

そんな甘えた考えがよぎる

ほぼ水平に設置されたはしご

「なんでこんな目に・・・」

完全に逃げ腰になり、いったんはしごから手を離し、深呼吸する

「くっそ、こええ、高いところが得意ってわけでもないのに」

高いところにくれば、自然と足がすくむ

それは体の防御反応で、当然のことだった

しかし、ここではそれを無視して、先に進まねばならない

「頑張れ!」

自分の顔をたたいて気合を入れる

「これを渡ったら助かる やるしかない」

そう言い聞かせ、はしごに手をかけた


1センチずつ、じりじりとはしごをわたっていく

ギシ、ギシ、と唸るはしご

「今日は何のテレビやるっけな」

と独り言をつぶやいて気を紛らわせる

半ばまでやってきた

ふと、綱渡りをしているサーカスの人が頭によぎった

ふらふらした、足元

そして、いまにも落ちそうだ

「何考えてんだ」

と、タケルは動揺した

想像のサーカスの人が落ちる絵が浮かびそうになる

「ダイジョブだ、この人なら渡り切れる」

たぶんこの人が落ちた絵を浮かべたら動けなくなる

「いけるいける」

といいながら先に進む

サーカスの人は渡りきる

そして拍手喝さいをあびる絵を浮かべた

自然、タケルの足も動いた

「もう少し、もう少し」

慎重に、慎重に・・・

「っつ」

足場の手すりにつかまった

そして、体をゆっくり動かし、足場に到着した

「うおおおおお」

タケルは咆哮をあげた

「っしゃああああああ」


ふと、正面を見ると、男が貯水槽の上にのぼってきていた

さっきの監督だ

「待ってくれ、私も、連れて行ってくれ」

そう言った

「分かりました、しかし、このはしごを上らないとこっちにはこれませんよ」

「これか、分かった」

そう言って、こちらに来る

しかし、監督はとても渡れそうな雰囲気ではない

「だめだ、私にはできない」

「無理なら、僕が助けをよんできますよ」

「だめだ、私にはできない」

そういいながらなぜかはしごを渡ろうとこちらに来る

まずい、と思った

パニックに陥っている

下手にこちらに来ようとしたら真ん中あたりで動けなくなってしまう

「危ない、少し、落ち着きましょう」

といったが、監督ははしごの上を渡ろうとこちらに向かってくる

「あ、ああ」

とうとう真ん中まで来た

そして、動かなくなった

「う、動けない」

監督はそう言った

かなりまずかった

はしごは安定してるが、監督の動き次第では転落する

「落ち着いて、ゆっくり、こちらへ」

「だめだ、私はもうここから動けない 先に行ってくれ」

しかし、置いていくわけにはいかなかった

「ちょっと、待っててください ロープの代わりになるものを見つけてきます」

そういって、タケルは奥に進んだ

そして、ガシャアアアンという音が耳に聞こえてきた




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