58.城を出る
遅れてすみません...
短いですが投稿を再開しますという報告として...
騒ぎが起きた場所から離れた夜でも営業している市場にて簡単な食べ物や飲み物を調達し、城へと戻る。
被っていたフードをとり、門番に再び許可証を見せて城の中へと入り与えられた部屋に着いた。
レンヤはドアの前に立ち、ノックしようと片腕を上げるが叩こうとした場所に何か硬いもので叩いたかのような傷跡が残っている。
「(こんな傷跡残ってたか?まぁ良いか)」
レンヤは鍵でドアを開けると部屋の中は電気がついたままとなっており、ベッドが膨らんでいることからティアは布団の中に潜り込んでいると考えられる。
「ティアさん、今戻りましたよ」
そのままでは息苦しそうと思い掛け布団をめくると、ティアは布団の中で小さく丸まり震えている。
ティアはレンヤの声が聞こえたことに安心したのか、震えは少し収まったがゆっくりと自分の手をレンヤへと伸ばす。
レンヤもその手を握るとティアが話し始めた。
「レンヤ、一回戻ってきた?」
「いえ、今戻ってきたばかりですが...誰か来ましたか?」
「レンヤが出て行って少ししたら誰か来たの...」
「フォーベルさんではなく?」
「最初はレンヤかと思ったの、忘れ物したのかと思って。でも返事が無かったからフォーベルかと思って名前呼んでも返事が無かったの。ドアに近づいたら誰かがドアノブ掴んでガタガタって何回も開けようとしてきて怖くなったからお布団にもぐってた。」
レンヤが部屋を出て戻ってくるまでに大体一時間半ほど、その間に来たという事になる。
「ドアは開けられなかったんですか?」
「ドアガチャガチャされただけだった」
城から出るときに誰かに見られているような気がしたのはそのせいだったのかと思い返す。
「来たのは一回だけですか?」
「...うん」
このまま自分がこの部屋に居れば、もしも目的がティアならばその誰かが来る確率は低いだろう。
「...どうしますか?今から他の宿を探してもいいですけど?」
「...今から探して見つかる?」
「帝国の中心部ですから宿はすぐ見つかると思いますよ。別に僕はどちらでもいいのでティアさんの好きなように、今からはティアさんの依頼を達成するための旅になりますから」
「...レンヤがいれば大丈夫」
レンヤの手を掴みながらそう呟くと安心したのか再び布団にもぐり、レンヤはティアナ掛け布団を掛けなおす。
「風呂入ったりするので先に休んでいてください。明日の朝は出発するのを早くしますので」
ティアの頭を軽く撫で寝かしつけた。
早朝、まだ朝日が昇る前に自然と目が覚め、隣のベッドに寝ているティアに目を向けると同じように起き上がっているところであった。
「さて、早いですが準備をして出発しますか。すみませんが朝ご飯は落ち着いたらという事で」
「うん」
二人はベッドから出て着替えると、部屋の中に忘れ物が無いことを確認し、フォーベルあてに世話になったと簡単な手紙を書いてテーブルの上に置くと部屋から出た。
部屋から出て階段に行くまでの廊下には人一人おらず、ただ静けさだけが感じられる。階段を降りて一階の広間に着きドアを出てそのまま門をくぐって城から出ても良かったのだがふと気配を感じて振り返ると、遠くの方で剣を振るような音がかすかに聞こえてきた。
「...誰かが朝稽古でもしてるの?」
「そうかもしれませんが...見ていきますか?」
「フォーベルの匂いがする」
さすが獣人とでも言えばいいのか、ティアはフォーベルがいると気付いたようであり、トコトコと向かってく。
はやく、今すぐ出て行かなければならない訳でもないため、レンヤもティアの後に続き歩いていくと中庭のような広場に出た。太陽はわずかに出てきたことにより空は明るくなってきており、明かりがなくとも相手が誰かくらいは認識できる。
「おはようございます、随分と早いですね」
「おはようなの」
相手は集中していたためか、急に話しかけられてビクッと一瞬肩が上がるがすぐに振り返りレンヤとティアを見ると安心してため息を一つついた。
「それはこちらのセリフでもありますよ。お二人も随分と早いではないですか。もう出発ですか?」
「はい、少し気になることもありましたから」
「...ティアさんの事ですか?」
レンヤはフォーベルに言い当てられ驚いた表情となるがすぐに戻す。
「何か知ってるという解釈で?」
「そうですね、といっても私も昨日先輩から聞いた話ですから事実かは分かりませんがね」
「それはお聞きしてもいい内容ですか?」
「レンヤさんは冒険者ギルドの掲示板はよく見る方ですか?」
内容が急に冒険者ギルドに変わったことに眉をひそめるがフォーベルに続きを促す。
「いえ...ギルドと何か関係があることですか?」
「獣人国から遠い王国から来て、しかも獣人自体に嫌悪を示す王国ですからもしかしたら依頼自体が貼っていなかったのかもしれませんね。実は獣人国の第二の都市の冒険者ギルドから人探し、今回は獣人探しですね、あったみたいですよ。しかもその似顔絵がティアさんにそっくりみたいなんです。聞いた話なんで実際は知りませんが。」
ゆっくりティアの方を向くがティア自身はあまり驚いたようね様子はない。
「...確かティアさんいいとこの生まれって言ってましたよね?」
「?そうだけど?」
「...もう誰かに預けてもいいかなぁ」
わざわざ依頼が出ているのならレンヤが連れていく必要はなくここで分かれることとなる。
べつに別れたいわけではなかったが、今からもう一人の勇者のいる獣人国に向かうのも気が進まないのも本心であり、一瞬本気で悩む。ティアはレンヤのつぶやいた言葉に目を丸くして固まり、その様子を見てフォーベルは噴き出して笑った。
「残念ですがその依頼昨日までだったみたいでもう募集はかかってませんよ。」
今度はレンヤが膝をついて呆然とし、その様子が不服なのかティアがポコポコとレンヤの頭を叩く。
「まぁ昨日までとはいえ城の騎士誰かが報酬に目がくらんで狙っていたのかもしれませんね」
「とりあえず出発する事にします。一晩でしたがお世話になりました」
「いえいえ、私は仕事をしただけでしたから。...もしよろしければ一戦していきますか?」
フォーベルは持っていた剣を持ち上げてレンヤに尋ねる。
「いいですよ、模擬剣では無く本物の剣でいいですか?」
「はい、大丈夫です」
フォーベルの持っている剣も本物であろうと思いレンヤは聞く。今から模擬剣を取りに行くのも面倒であり、互いに剣を嗜むならば真剣で大丈夫であろうというのがお互いの本心であった。
レンヤはティアを後ろへ下げるとフォーベルから距離をとって腰の刀を抜く。
「レンヤさんの実力はいろいろと聞いていますので胸を借りる気持ちでいきます」
「買いかぶりですが先手はお譲りしますよ」
レンヤは刀を構えたまま待ち、フォーベルはどのように攻めようか考え、数秒過ぎてフォーベルが動いた。
まっすぐに斬りかかってくるがレンヤはそれを受けて押し返す。下がったフォーベルは距離を一旦開けるがまたすぐに斬りかかってき、レンヤも何度も同じように受ける。
何回か剣を交えて思うことはフォーベルの剣が型を守ったかのように綺麗でまっすぐすぎるという事であり簡単に予想がつくという事であった。
このままでは埒が明かないと思ったレンヤはフォーベルが構えた瞬間にその剣を刀で巻き上げて上に挙げると、その剣はつられるようにフォーベルの手を離れて上へ舞い上がり、その瞬間にレンヤはフォーベルの首元に剣先を向ける。
「さすが、お強いですね」
遠くでフォーベルの剣が落ちてきて地面へ刺さった。
「僕も人に教えるようなえらい立場ではないのですが簡単なアドバイスを。フォーベルさんの剣は美しいほどにまっすぐ過ぎています。」
「まっすぐですか?」
「感覚的なものですから説明しずらいんですが...まぁ後は頑張ってください」
レンヤは刀を鞘にしまうと右手を差し出し、フォーベルもそれに応じて手を差し出して互いに握手をした。
「では僕たちはここで」
軽く頭を下げるとティアもレンヤの隣まできて同じように頭を下げる。
「...お世話になったの」
「はい、ではお気を付けて」
レンヤは手を振って見送ってくれるフォーベルに手を振り騎士塔のドアをくぐり、そのまま城の門を出た。
仕事がやっと落ち着いてきたので少しづつ投稿・改稿を再開したいと思います。




