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世界の行方  作者: くま
52/58

52.アベル伯爵護衛依頼28


意外と結論というものは考えていたよりもずっと普通であることはよくあることである。

結果としてティアはレンヤが向かおうとしていたベンチに座って、正確には横たわっていた。

そしてその横には見慣れた人物も座っており、ティアの頭を撫でていた。


「まさかこんなところでまた会うことになるとは思ってもいませんでしたよ。」


レンヤは多少していた警戒を解いて近づいた。


「おや、やっぱりあなたでしたか。私もあなたがここにいるとは思いませんでしたが湯船に浸かっている時にたまたまこの子と会いましてね、まさかと思いましたが。」


「ティアさんは...のぼせてしまったようですね。」


ベンチには真っ赤な顔で目を回しているティアが横になっていた。


「失礼しました。私はローズ シュライクと申します。所属は先ほど述べた通り、年は16です。」


「レンヤ ヒイラギ、年は17歳です。まさか年齢が近いとは思いませんでした。」


ローズから差し出された手に応えてレンヤも手を出して握手をする。


「それは私が老け顔だとでも言いたいのですか?」


ローズさんは少しムッとした顔をレンヤに向ける。


「いえ、しっかりしていらっしゃるので年上かと思っただけですよ。」


「フフッ、冗談ですよ。」


そういいローズさんは膨れた顔から小さく吹き出して笑った。


「ティアさんとは仲良くなったのですか?」


「軽く世間話しただけですよ。」


「それでもお世話になりましたね。あとは僕が部屋まで連れて帰ります。」


レンヤはそう言いティアを抱え上げる。


「全くどうしてのぼせたのやら...。」


「私が聞いたんですよ、あなたのご主人様はどんな方なんですか?ってね。そしたら急にいろいろと語り始めちゃって。よっぽどいっぱい話したかったんでしょうね、顔を真っ赤にしながらレンヤさんはどんな人だって話し続けて私も止められなかったのよ。」


「はぁ、のぼせる前に湯船から出ればよかったのに。でもありがとうございました、話し相手にもなってくださったみたいで。」


「さっきから思ってたんですが私の方が年下なんですから敬語でしゃべらなくてもいいですよ?私も所々敬語外しちゃってますし。」


「んー、まぁ癖みたいなものなんで気にしないでください。僕も所々で外してますので。」


「そういうものなんですね。」


「そういうものなんです、では失礼します。」


ティアをお姫様抱っこで抱えながら来た道を帰るレンヤの後ろ姿を見ながら、ローズも部屋に戻ろうかとベンチから立ち上がる。


「まるで張り付けたかのような笑顔を何とかしたいとも言っていたけどね...。」


温泉に浸かりながらティアと話していた時に彼女がそうポツリと呟いた言葉をローズは聞いてしまい、それがローズの頭に残ったままになっていた。


「私もこの後用事が無ければ帝都まで同行したかったんだけど帰らないといけないからな―、立場って使えるけど縛られるなー。」


そう誰も聞いてない独り言を言いレンヤの姿が見えなくなったことを確認して部屋へと戻った。




器用にティアを抱えたままドアのカギを外して部屋に入るとティアをベッドに降ろして再び風呂へと向かった。体を洗い湯船に浸かり息を大きく吐く。


「あー、沁みるー。」


レンヤは温泉に浸かるのが嫌いでも好きでもなかったが、今日一日のことを振り返るとそう言わずにはいられなかったであろう。

クランカに到着してからロベルトとの戦闘、ティアの買い物、ギルドへの顔出しと普通なら確実にしないであろうことをやったことで自分が思っている以上に疲れ果てていた。


「これがまだ続くのか...。」


依頼なのだからしょうがないが自分一人ならもっと気楽であったであろうと思わずにいられなかった。


「でも依頼だからな...お金ももらえるし。」


レンヤは手のひらで頬を叩くと湯船から出て風呂を後にし、部屋に戻った。



「今戻りました~ってやっぱりまだ寝てるか。」


そうっとドアを開けて入るがやはりティアは本格的に寝てしまっていた。


「僕もそろそろ寝ようかな。」


ティアに掛け布団を掛けなおしてレンヤは窓から入ってくる風と布で髪を乾かす。

そして軽く乾くと窓とカーテンを閉めて部屋の明かりを消してベッドへと入った。




習慣というのは恐ろしいものでいつも通り日が昇り始める時間帯に目が覚めた。

ティアが起きるまで比較的寝心地の良いベッドの上で暇のありがたさを感じ、ティアが起きると昨日のうちに買っておいたパンなどで朝食を済ませる。

その後部屋の片づけをしてチェックアウトをしようと一階の受付へ向かうが、昨日のうちに支払いはロベルト名義で支払われていたらしく、部屋の鍵を返すだけで済んだ。

店の前に出ると店主自ら掃除をしていたので軽く挨拶を済ませ、大通りを通り、門の方向へと向かう。

夜なら酒などが飲める店が目立つが朝、簡単には午前中は市場として機能している光景が見られた。

そこでティアと相談しながら当分の食料を買い集め、程よい時間となったため、その後集合場所へと向かう。

そこにはアベル伯爵一行は当然ながら来ていなかったがロベルトやフェリプ、エリカはすでに到着していた。


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