46. アベル伯爵護衛依頼22
少し短いです(´・ω・`)
ティアの頭を撫でた後テーブルに荷物を置くと窓際に椅子を持っていき、窓を開けてから座る。
建物から見える通りは道に沿った複数の建物から漏れ出る明かりや街灯で歩いている人の顔が認識できるほどに明るい。
誰もかれもが強くなりたい、有名になりたいなどの願望が顔に出ておりそれがレンヤにはまぶしく思えた。
「(はぁ、疲れがたまるとどうしてもネガティブな方向に考えが動いてしまう...さすがに異世界に来たからと言ってこれが治るとは思ってなかったけどさ...。)」
まだ日本で高校生をしている時にさんざん友達に言われた。
『錬也はすぐネガティブになるからな。』
冗談交じりに何度も言われたがさすがに自分でもそういう性格なのは知っていた。
「(ここまで来たら治らないか...。)」
窓を開けているせいか通りから聞こえてくる喧噪が耳に入ってくるがそううるさくは感じない。
戦闘で体についた傷は治癒魔術で治したが精神的、そして身体的な疲れまでは魔術ではどうしようもならない。
「(これからどうしようかな...。)」
窓から入ってくる風で髪が揺れる。
その風の心地よさに目を閉じると懐かしい日本にいたころの風景がよみがえる。
決して大きくはなく栄えているとも言いいずらかったけれども好きだった生まれ育った街、通った学校、お世話になった近所の商店街の人々、両親と暮らした家、ともに学校に通いどんなバカらしい小さなことでも心から笑いあえた友達、そして両親。
『二人の魂の安全を確保するというのは?』
ふと神界での天使の会話を思い出す。
「(そうか、することは決まっていたか...。)」
大事なことを忘れていた自分に苦笑し目を開ける。
ベッドに視線を向けてみるが相変わらずティアはスヤスヤと寝息をたてながら夢の世界にいるようであった。
「少しくらい休んでもいいですかね。」
誰に尋ねるわけでもなかったがそうつぶやくと目を再び閉じて懐かしい日本での暮らしを振り返りながら意識を暗闇に落とした。
ふと意識が覚醒してく。
寝返りをうつと下が柔らかいことに気付き、自分がベッドに寝ていることを思い出す。
上半身を起こしてあたりを見渡してみると窓から見える外の風景がまだ暗いためそれほど長く寝ていなかったとティアは思った。そして視線をずらせば椅子に座ったまま寝ているレンヤが目に映る。
寝ているのであろうか、小さく規則的に胸が上下しておりよく耳をすませば寝息も聞こえる。
ティアはベッドから降りるとレンヤのもとに近づく。
風で髪が揺れている他には顔や見える範囲でケガをしていないため安全に帰ってきたのだと安心する。
ティアがレンヤの顔を覗くと普段とは違い少し子供のように感じた。
「(...そういえば不思議な人。)」
寝ているレンヤの顔をペタペタと触りながら救出されたときの事を思い出す。
幸いというべきなのか、魔物に殺されなかっただけでも幸いなのかもしれないがティアは盗賊につかまり監禁された。
来る日も来る日も連れてくる魔物や動物を殺していく日々、そして時には人間を殺すこともあった。
呪いのせいでティアの体自身に盗賊から触れられることはなかったがそれでも殺し続けるという精神的な苦痛は続いた。
そんな日々が続くとだんだんと心が壊れていくのを感じた。
それが怖くなり地下へと何とか逃げ込みそこに居るようになった。
ある日上が騒がしく感じ閉じていた目を開くと盗賊団のボスと仲間が二人降りてきた。
「さすがにヤバいですって! 今回は諦めましょうよ!」
「なにふざけたこと言ってやがる!こんな得物めったに来ないんだ!やるしかないだろ!」
どうやら今回狙った獲物は大きい分護衛も優秀なのだろう。
「(...ざまぁみろ...なの。)」
そうティアは心の中で言い、毛布を頭の上に被る。ここで言わなかったのは反抗すれば殴られ蹴られるのはとうの昔に経験しているためだ。
「どもー、お疲れ様でーす」
毛布にくるまっているとやけに若い声が聞こえた。
毛布をずらして隙間を作り外を覗いてみると十代だろうか、若い男の人が立っている。
その人物を見ていると視線が合ったような気がした。そして何となく毛布を取って頭を出す。なぜそうしたのか今になっても不思議だ。
「なるほど、獣人さんでしたか。了解しました。」
そう男の人は見下すわけでもなくつぶやくとニヤリと笑い急に片方の目の色が変わった。
笑った瞬間自分の背筋が凍ったような感覚に陥る。
そこからは随分と一方的な戦いだったのは素人の私でも分かった。
一人二人と殺され、最後にはボスも殺された。ふと一瞬だけさみしそうな顔をしたが男の人は死体からカードを抜き取ると盗賊の荷物を確認していく。そして仕事は終わったというオーラを出しながら階段の方向へと進もうとするが振り返り、自分の方を見てきた。
「僕はもう帰るけど君はどうする?もう自由の身だから好きにしていいんだよ?」
そう言って男の人が近づいてくるが人間は信用できない。今まで何度も期待を裏切られ、殴られ、蹴られた。
「来ないで!!」
なぜあんなに大きな声が出たのだろうか。
「大丈夫だよ。僕は君に危害を与えない。」
そう言うといきなり持っていた剣が消えた。
「僕はレンヤと言います。一応冒険者しています。ティア?さんでいいのかな?」
その後も何気ない会話をしたのは覚えている。最初から今までずっと先ほどとは違う人物と言われても納得するような雰囲気の変わりようであった。
信じたいけど信じられない、そんな相反する感情の中で葛藤しながらティアは考えていた。
助けてくれたけど危害を与えるわけにはいかない。
説明すると男の人は「鑑定」と言って考え込んでしまった。
「その病気治したい?」
その言葉は衝撃的だった。
もう普通の人とは関われないと覚悟していた分信じられないかった。
「!治せるの?」
あり得るはずないと思っていても聞かずにはいられなかった。
「実はこの魔術、初めて使うから効果があるか分からないんですよね。」
お金がないと伝えるとそう返ってきた。男の人も少し困ったように言っていたため不器用な優しさなのだと思った。
「(どうせ治ると思ってなかった病気、最後にこの人を信じてみよう。)」
男の人の顔を見て信じてみようと思うと自然と笑みがこぼれた。
「じゃぁティアさん、少し目を閉じていてください。」
言われた通りに目を閉じると男の人が詠唱をし、自分の体が何か暖かいもので包まれたような感覚がした。
暖かさが収まると目を開ける。
「呪いは解呪できたよ。」
無意識に口に手を当てる。そしてもう流すことはないと思っていた目から涙が流れる。それを袖でぬぐいながら聞かれた質問に淡々と答えた。
「とりあえず今更だけど呪いが解けた確認する?」
本当に今さらだなと自分を笑い、出された男の人の手を取った。恐るおそる男の人の顔を見ると平気そうだった。汗の一つかいてないため本当の事なのだろう。
「これからどうしたい?」
そう聞かれて思いうかぶのは当然生まれ育った懐かしい我が故郷、そして母親と双子の姉妹。
「....できれば自分の生まれ育った村に帰りたい。」
自然とそう答えていた。
「...一人で帰れる?」
おそらく無理だと分かっていても聞いてくれたのだろう。
「...こんなか弱い女の子に一人で旅させるの?」
なんでだろう、この人と一緒ならそんな冗談も口にできた。
その後も交渉して何とか今受けている依頼が終わったら獣人国まで送ってくれる約束ができた。
抱えられて建物から飛び出した時に感じた自由という感覚はずっと忘れないだろう。
私らしくないと頭を横に振って思い出していた懐かしいことを頭の隅に追いやる。
あの頃に比べるとだいぶ声もはっきりと出てくるようになった。
まだレンヤは起きる気配がない。
多少お腹が減ったがまだ耐えきれないというほどでもないためどうしようかと考える。
そしていいことを思いついたとニヤリと笑うとベッドから掛け布団を持ってきてレンヤの上にこっそりと乗り、そして自分の上に掛け布団をかける。
「こうすればレンヤも私も寒くない。」
上を見上げるとレンヤはまだ起きない。よほど疲れていたのか、それともティアを信用じているためかは分からない。
「(ありがとうございます、おやすみなさい。)」
そう心の中でつぶやいて再び夢を見ようと旅立った。
どもども( *・ω・)ノ
くまさんです。
前回お願いしたらブックマーク90越えました!Σ( ̄□ ̄;)
皆さんありがとうございます!
ここでご報告なのですが昔から読んでくださってる方なら察してくださると思うのですが12月から来年2月まで忙しくなってしまいます(×_×)
なので月1は更新したいのですがいつできるかは未定となってしまいました( ´△`)
更新期間空いてしまいますがお付き合い頂けるとありがたいです。
誤字等ありましたらいつも通りで。
ではでは( *・ω・)ノ




