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世界の行方  作者: くま
44/58

44. アベル伯爵護衛依頼20

階段をある程度まで下りると下に大きな空間が広がってるのが見えた。深さ的には地下3階程度だろうか。

部屋は学校の体育館ほどの広さであり近隣の家の地下も使っているのだろうか、建物の外見からは考えられないような広さであった。

部屋の中は明るすぎたり暗すぎたりもせず多くの人たちがいる。

すべての人が異なった仮面をつけており、最初に見た時にレンヤは多少の違和感や気持ち悪さを感じた。


部屋には中央に大きなオリがただ一つあり、その中には同じく仮面をつけた男性とみられる人とローブにフードを被り性別も分からない人が剣を持って構えている。


「あれは本物の剣ですか?」


「いや、あれは本物に見えるが模造剣だ。切れ味はないが当たると痛いぞ。」


両者ともににらみ合っていたが、しびれを切らしたのか片方が剣を低く構えるとそのまま相手に向かい距離を縮め、下から斜め上に切るように斬りかかる。

相手の方もそう予測していたのかうまく剣でそらし軽く後ろへ飛びながら懐から杖を出して詠唱する。


「おっ、珍しいな。今日は魔術師もいるのか。」


仮面をつけているのに加え小声で詠唱しているためレンヤには何の魔術を使おうとしているのか分からなかったが杖の先に魔法陣が複数浮かび先のとがった氷、つららのようなものが相手を突き刺そうと向かってくる。斬りかかった男も杖を向けらえた時点で魔術が飛んでくることが予想できたのか、後ろへ飛んで魔法陣の方向を瞬時に判断すると飛んでこない方向へと走り当たらないようにする。


「二人とも戦いなれている感じですね。」


「ここにはそういう奴しか来ないからな。下手に初心者が来るとたとえ模造剣でも当たり所が悪くて死ぬからな。」


「あれっ、僕ここにきて大丈夫だったんでしょうか?」


「俺が見た限りではお前は強そうだったから大丈夫だろ。」


「...買いかぶりすぎですよ。」


「そろそろ決着がつきそうか。」


魔術師の方はマナを消費しすぎたせいか肩で息をしており、男の方も雰囲気が疲れているように思われる。


魔術師の方は剣を構えて男に斬りかかるが当然のことながらにそれは避けられる。しかし接近した直後に男の仮面の前に杖を突きだした。

その直後すごい勢いで杖から水が飛び出し、男の仮面に直撃する。


「あぁ、目つぶしですか。」


その魂胆が理解できたのかレンヤはポツリとつぶやいた。


当然目の部分は見えるように穴が開いているため男の目に直撃したのだろう。

男は剣を持っていない方の手を顔に当て一瞬よろめく。

それを待っていたのか魔術師は再び詠唱して男の足元を凍らせて身動きを封じ、のど元に剣先をあてた。


そのタイミングでオリの外にいる四人が一斉に赤い旗を揚げた。


「あれは何ですか?」


「審判だよ。一応殺しはご法度だからな。三人以上旗を揚げると試合終了。」


「審判せいなんですね。」


ローブの人はただ一つしかない扉から出ると近くのカウンターで何かが入った袋を受け取るとその場を立ち去る。そしてレンヤたちのとなりを通りすぎて階段を上がり姿が見えなくなった。

そしてまた別の組が、今度は2vs2のチーム戦なのだろう、四人がオリの中に入り外からしっかりと鍵が閉められ、審判の一人の合図により試合が始まった。


「勝った方がもらえる賞金って誰が払うんですか?」


「まずは出場する奴の出場料、それから国からの報償金、観客の賭け金、施設からの金からだったかな?」


「国って...国がこんなことを許してしまっているんですか?」


「国も優秀な騎士はいくらでも欲しいからな。ほら見て見ろ。」


そういってロベルトは仮面をつけて壁際に立っている、どこかの軍服でありそうな立派な服を着た男を指さす。


「国もこうやって監視という名目でスカウトできそうな人材を探しているってわけさ。」


確かに男はじっと立っているが仮面の奥の視線はオリの中に集中しているのであろう。


「いつも軍人のような人がたっているんですか?」


「今日がたまたまそうなだけだ。他にも国の武官や文官、騎士隊を抱える貴族、近衛騎士とかいろんな奴が来ている。」


「...国も必死ですね。」


「早い者勝ちだからな。こういうことは。国がとるが先か貴族のステータス向上のための駒になるか。」


「あなたもここで鍛えたんですよね?」


「まぁ遠い昔の話だがな。負けて建物の前に投げ捨てられたこともあったからな。」


「そこまでして力が欲しかったんですか?」


「その頃は必死だったからな...。」


ロベルトはそういうとしみじみと過去を振り返っているのであろう、感慨にふけってしまった。


そういった話をしているうちに今戦っている人たちも決着がついたようであった。最終的に残った一人が気を失った仲間の腕を肩にかけると引きずるようにして扉から外へ出てそのまま仲間を寝かしてカウンターで賞金をもらっている。そして再び担ぐと壁際まで引きずると疲れ切ったように座り込むのであった。その間にもこの建物の従業員なのか複数人がオリの中に入り、気絶している相手チームの二人を担ぐと引きずり階段を登り、姿が見えなくなった。


しばらく待っていたが他の出場者がいないのか誰も中に入らない。


「試しに久しぶりに出てみるのですか?」


いまだボウッとしているロベルトの肩を叩きながら聞くとやっと正気に戻ったのか本人はハッと気づいた。


「そうだな、久しぶりに暴れるか。もしも気絶したら宿まで引きずってくれな。」


「はぁ、分かりましたよ。」


そう言い残すとロベルトはカウンターで会話し懐から硬貨を数枚取り出してカウンターの上に置く。そして奥から出された模造剣を受け取るとオリの中に入った。


「戦いたい奴、早く来いよ。」


ロベルトはそう挑戦的に部屋の中にいる人を挑発する。


「おい、まさかあいつは...」


「久しぶりに帰ってきたか、何年ぶりだ?」


「ほぅ、まだ生きておったか...。」


そう部屋の中からポツリポツリとつぶやく声が聞こえた。


「まさかここでまたお前に会える日が来るとは思わなかったな。」


ある人物がそう言いながらカウンターで受付を済ませ剣を受け取るとロベルトがいるオリの中へ入った。


「さぁ、再戦だ。修羅。」


両者ともに仮面で顔は見えないがニヤリと笑っているような気がした。




勝負は目が離せない内容であった。


二人が向かい合って剣を構えてから数十秒と経ったのだろうか、周りの観戦している人たちから何も物音が聞こえず見入っていることがうかがえた。


まっすぐ正面に剣を構えたロベルトと剣先を下に向けながら隙の無い構えをとる相手。


意外にも先に攻めたのは相手だった。

瞬時に間合いを詰めた様子を見るとやはり戦いなれているのだろうとレンヤに思わせる。


「ふんっ!!」


しかし距離が近づくにつれて振られた剣をロベルトは体を傾けて避け、バットでも振りぬくように両手で持った剣を用いて力業で相手を飛ばし、相手はオリで後頭部を強打したらしく地面に落ちると動かなくなった。


「いやこれ戦いなの?」


一撃で終わらせる力業すぎるロベルトの戦い方にレンヤは思わずつぶやいた。




審判による勝者宣言がなされ拍手や興奮した声があちこちで沸くが、ロベルトはオリから出ていこうとはしない。何かあったのかとロベルトを注意して見るとロベルトもレンヤを見ているようであった。


「(かかってこいよ、レンヤ。)」


そう言いたげな視線のロベルトに乗るか考えているとロベルトがしびれを切らしたのかレンヤを指さした後「こっちに来い」と言うように指で合図する。

当然視線はレンヤに注目し、早く来いと受付ににらまれる。


「はぁ―。」


もともとお金はあるためこのような賭けに出る必要はないのだがここまで来たら出なければならない雰囲気となってしまっていた。


「(なんでこうなった…。)」


もう一度深くため息をしてレンヤは受付へと向かう。


「荷物をお預かりします。」


そう機械的に言う受付に持ち物を渡そうとするがもし自分が負けて気絶したら荷物がどうなるか分からないためローブで体が隠れている今のうちに刀を含めたすべての荷物をアイテムボックスに収納する。


「持ち物は無いです。お金はいくらですか?」


「銀貨10枚です。」


意外と高いのか高くないのか分からない金額であったがボックスから取り出して受付へと渡した。


「武器はどうしますか?」


「刀ってありますか?」


「これですか?どうぞ。」


受付は確認してそれと分かるとレンヤに渡した。


渡された刀は鞘に入っていないむき出しであったが刃こぼれは起きていない。刃の部分を触ってみるがそこから血が出ることはなく本当に模造なのだと実感する。


「さぁ、殺ろうか。」


小さい声であったが確実にレンヤの耳に届く。一瞬背筋が冷たくなるのを感じた。

そして思わずにはいられなかった。


「(あぁ、戦闘狂なんだなぁ…)」


レンヤがオリの中に入り外から鍵が閉められる。


ロベルトは再び剣を正面に構えてレンヤを待つ。レンヤも刀を構えるが奇襲性を考えて刀を腰の位置までもってきて居合いの構えをする。

互いに向かい合って時間は経っていくが一向にロベルトは動こうとはしない。


「(柄にもなく緊張しているのかな…)」


レンヤの刀を持つ手は震えてはいなかったが自分の体温が低くなっているような気がする。このままでいても埒が明かないと考え、レンヤは構えを解いていつも通りに歩いてロベルトとの距離を縮める。

互いに剣が当たる距離である間合いに近づくにつれてゆっくりと右手を鞘にしまっていると仮定している刀の柄に当て、間合いに入った直後に一気に抜いて斬りかかる。その速さに反応できたのはその場にいた数名だけであり他の人は一瞬の出来事に反応が遅れた。

ロベルトは前のように避けるかと思われたがギリギリのところで剣で受けていた。

チラリと仮面越しにロベルトの目を見ると驚いたかのように目が開かれていたのち、狂ったように笑ったような気がした。




どもども( *・ω・)ノ

くまさんです。


誤字等ありましたらいつも通りで。


ではでは( *・ω・)ノ

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