42. アベル伯爵護衛依頼18
どうしましょ...
近づいてみるとその大きさが一層きわだった。
今まで立ち寄ったマラン村やアボス村とは比較にならないほどの大きさ、高さを誇る壁が遠くまで続いているのが見える。その真っ白な城壁は長年の風雨で所々無数の傷がかすかに見えるが大きな穴などは埋められて補修されているらしい。松明で照らされている門の所には複数人の武装した門番が待ち構えておりその警備の厳重さが伝わってくる。
「ここが今日泊まる村ですか?」
「いや村じゃないぞ。ここはクランカって言う都市なんだ。帝国の中でも帝都と同様、それ以上軍備力を強化している都市として有名なんだ。ここは王国が攻めてきたときに真っ先に来る主要都市だからな、それに見合うほどの戦力を国も当てているってわけだ。」
今まで見たことの無い大きさの都市に驚きながらレンヤが尋ねるとロベルトが答えた。その横顔は少年のように好奇心で満ち溢れていた。
「なんだかロベルトさんうれしそうですね。」
「そりゃぁな。ここには自分の力に自信がある奴があふれているから自分の戦闘能力を試すにはもってこいなんだ。なんどココに挑戦しに来たことか...今ではいい思い出だがな。」
「でもクランカよりも帝都の戦力を強化した方がいいのではないですか?」
「まぁ普通はそう思うのかもしれないな。でももし帝都に戦力をすべて集中させて敵を食い止めたとしてもそれ以外の主要都市を敵に抑えられたら反撃が難しくなる。最前線で敵の本体を食い止めろというのが初代帝王武官長のお考えらしくてな、代々この方法でこの国を守っているってことだ。」
「ということはこの都市が落ちれば帝国は大きな痛手を受けるというわけですね。」
「そういうこったな。しかしこの都市は簡単には落ちんぞ?」
「今まで落ちなかったということはそういうことなんでしょうね。まぁ僕は一切関係ないので興味も何もありませんけどね。」
「そうだ!暇なら闘技場へ行ってみるといいぞ。レンヤなら小さい掛け金で少しくらい利益を得られるだろ。」
「それってあれですか?出場代を払って魔物と戦って買ったら報酬、負ければ何もなしってやつですか?」
「いや、それじゃない方だ。出場代を払って人間同士の戦いの方だ。当然殺しはご法度だが死なない程度は許されているところもある。小遣い稼ぎにはなるだろ。」
「時間に余裕があればやってみますよ。ティアもいますしそんなに時間ないだろうとは思いますけど。」
「帝国伯爵位、オディブル アベルおよび護衛・お世話役10人、通行許可をお願いします。」
ブレイアは門番にそういうと詰所の奥の方から門番よりも上の役職らしき服装の男性が現れた。
「確認書を拝見いただけますでしょうか?」
男性の声は堂々としているがよく見てみると手がかすかに震えていた。
ブレイアから紙の書類を受け取ると内容を確認しそれを返す。
「失礼いたしました。どうぞお通りください。」
これでもかと深々とお辞儀してそう言うと馬車は進みだして門をくぐっていった。
「僕たちはどうしたらいいんでしょうか?」
「ん?普通に身分を証明するものを見せればいいだけだぞ。」
「僕はギルドカードでいいとして問題はティアですよ。」
レンヤの背でスース―と寝ているティアを見ながら聞く。
「奴隷は...どうなんだろな?おじさん奴隷に関してはしらんぞ。ありのまま言えばいいんじゃないの?」
「そういうもんですかね...まぁ他に何も思いつかないのでそうしますか。」
前に並んでいたフェリプとエリカの手続きが終わりレンヤとロベルトの順番が来る。
「次の人どうぞ―。」
病院の診察のような気の抜けた声でまずはロベルトが呼ばれる。
「次の人はこちらへどうぞー。」
別の窓口でレンヤが呼ばれたためティアを背負いながら向かう。
「はいようこそー。今回はどのような用件ですかー。」
「ギルドの護衛依頼です。」
「何か確認できるものありますかー。」
レンヤはポケットからギルドカードを取り出して門番の男性に渡す。
「んー。はい、大丈夫ですねー。そちらの子は...」
「そのちょっとあれですよ。いろいろあったんですよ。」
門番の男の話し方がうつったかのような話したかをレンヤもしてしまう。
「あー、それは大変でしたねー。まぁ通って大丈夫ですよー。」
「んな訳あるか!ちゃんと対応しないか!」
そんな男性の頭を叩いて後ろから初老の男性が現れる。
「すまんな、きちんと説明していただけないだろうか。」
男性はレンヤを見てそう言った。
「んっとですね、これを見たら分かりますか?」
そういうとレンヤは今度はアイテムバッグから盗賊たちのギルドカードを取り出してカウンターに置いた。
「これは犯罪マークがついてますねー。って!サファンとルンガのカードがあるじゃないですか!」
今までのんびりと話していた若い男性の門番が急に話し方を変えて驚いた様子になった。
「え?有名な人なんですか?」
「あなたこそ知らないんですか!この一帯を荒らしていた盗賊ですよ!確かに最近は勢いをなくして少し大人しくなってましたが有名な盗賊ですよ!」
「そうでしたか。確かに面倒な相手でしたけどね。」
「討伐報酬が出ますが少々時間がかかりそうです。このままお待ちになっていただいてもいいですが明日また取りに来ていただくこともできますがどうしますか?」
「とりあえずこの子を寝かせてあげたいので後でいいでしょうか?」
「そういえば聞いてませんでしたね。大体予想できますがその子はどういった経緯で?」
「つかまっていたので保護しました。以上。」
「まぁそうでしょうね...何か証明できますか?」
「契約の証を見ても分かりませんよね...」
「そうだな、ちょっと待っとけ。」
そういうと初老の男性が部屋の奥の方からカラ石を持ってきてカウンターへ置いた。
「その子の手をこの水晶にかざしてもらえませんか?」
レンヤはティアを起こさないようにしゃがむと手に水晶を近づける。
男性は水晶を手で持ち上げるとティアの手に近づけた。
「はい、確認できましたー。レンヤさんの奴隷として確認できましたー。」
レンヤはティアを背負いなおすと男性からカードを受け取ったがその中に盗賊のカードがないことに気付く。
「盗賊のカードはどうすればいでしょうか?」
「こっちで処分しとしますよー。というか賞金との引き換えですー。通っていいですよー。」
「ありがとうございます。」
そう言ってレンヤが門を通り過ぎるとロベルトが待ち構えていた。
「あれ?ロベルトさんお一人ですか?」
「おぅレンヤ、遅かったな。他の人はもう解散したぞ。明日の昼出発らしいからその時間にまたこの門に集合しろとのことだ。」
「わざわざ待っていてくださったんですか、ありがとうございます。」
「いやいいってことよ。初クランカのレンヤの助けをしてあげようと思ってな。」
「初クランカって...ただ宿泊して一晩乗り切るってことではないのですか?」
「遊ぶ場所教えるだけでしょ...」
「泊まる場所もいいところがあるんだぞ!とりあえずこっちに来い!」
「いやホントにテンション高すぎでしょ...」
ども( *・ω・)ノ
くまさんです。
風邪ひきましたー(´・ω・`)
頭痛いしフラフラしますー(´д`|||)
最近夜中冷えてきましたから皆さんも体調に気を付けてくださいね。
誤字等ありましたらいつも通りで。
まだまだ徹夜の疲れがとれてないくまさんでした。
ではでは( *・ω・)ノ




