4.目覚め ○
寝ていたのだろうか、意識がはっきりとしてくる。背中は布団が敷いてあるような感じがして柔らかい。
閉じていた目を開け、上半身を起こしてみると自分がベッドに横になっていたのだとわかる。かすかな月明かりによってすぐそばに窓がある事は分かったが、寝起きなのに加えて外は夜だからか暗く、何も見えなかった。よく見てみると家が並んでいるのだが、明かりはついていなかったため錬也は気付くことが出来なかった。まわりを見てみると自分が寝ていたベッドの他にレンヤの眼鏡がおかれた机と椅子、小さなタンスがあるだけの部屋だった。服も制服からTシャツのようなゆったりとした服とズボンに変わっている。
「どこだここは...」
呟いた言葉に反応してくれる人はいない。
「とりあえず現状確認だな。“ステータス”」
すぐに目の前に半透明で薄く光る画面が現れた。
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名前 レンヤ ヒイラギ
種族 人間
身分 なし
HP 150
MP 250
魔力 200
知力 25
敏捷 23
運 20
スキル
・言語理解 (ユニーク)
・鑑定 (UR)
・剣術 Lv3
Message
・手紙 ← タッチしてください
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とりあえず指示にあった通り“手紙”をタッチする。すると下に文章が表示された。スマートフォンみたいにずらしながら文を読む。
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Message
・手紙 ← タッチしてください
▼
錬也様
この手紙を読んでいる頃には私はもういないでしょう。
なんて冗談はさておきこの手紙を読んでるということは無事に異世界に行けたのでしょう。
今あなたがいるのはおそらくマラン村の村長の自宅です。今回は錬也様が村長の家の前で倒れていたという設定になっています。設定としては盗賊に襲われたムル村から逃れたが記憶喪失になったということにしておいてください。実際ムル村は盗賊に襲われてここ2、3日中に村が壊滅していますのでみなさん信じるでしょう。ちなみに生存者はいません。
簡単にステータスの説明をします。
名前はもちろんあなたの名前です。種族は人間、獣人、小人、エルフ、魔人があります。身分はあなたの階級が表されます。例としては農民、商人、騎手、冒険者などあります。
HPは0になると死に、錬也さんの年では80が平均となります。MPは魔術を使用する際に消費するものですが、MPがあるからといって魔術が使えるという訳ではありません。魔力は魔法を使う際に必要となるものですが錬也さんには関係ないでしょう。知力は頭の回転の早さを数値化したもの、敏捷は素早さ、運はそのまま運です。
スキルはその人個人のもつ能力で先天性、後天性のものがあります。SRとかはレアリティですね。Rはアイテムによっては付与できる程度のスキル、SRは珍しいスキル、URは世界で二桁いるかぐらいのスキルとなります。ユニークはその人しか所持していないとされているスキルです。スキル内容はそれぞれタッチする事で確認できます。錬也さんには最初から剣術の能力がありましたので剣を使う際に日本にいる時よりも思い通りに動くと思いますよ。レベルは1なら初心者、2なら普通、3ならちょっとベテラン、4ならプロフェッショナル、5なら達人くらいでしょう。熟練度があがることでレベルは上がります。
ついでに魔術のヒントを書いておきましょう。魔術は体に存在するMPの元となるマナを使うのでマナを感じる練習をしてください。一番簡単にいうと心臓のあたりで集中した際に暖かく感じるものでしょうか?慣れると自然とマナを1ヶ所に集めることができ、魔術がうてるようになります。魔術には詠唱がいるため魔術が使える人に教えてもらうか図書館で調べてください。イメージが大切とも言っておきましょう。
あんまり丁寧に教えても楽しみが無くなるでしょうから自分で挑戦してくださいね。
最後に錬也様には謝罪をしておきます。こちらの都合で転移してもらいましたから。戦争は些細なことがきっかけで起こるものです。あなたには意識していなくても種族間を平和的につなぐ架け橋となることができます。自由に思うがまま生きてください。
餞別としてアイテムボックスをプレゼントしておきます。
それではまた会える日を。
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手紙を読み終えると読み終えたことが分かったのか手紙の文章が消えていく。どうやら一度しか読めなかったのであろう。そして新しくMessageに項目が追加された
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Message
・スキルにアイテムボックス(UR)が追加されました New!
アイテムボックス(UR)
▼無限に収納できる空間。重量制限なし。
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「...まあ、もらえるものは貰っておくか。」
予想以上のレア度のスキルに多少驚きつつもあって困るものではないので貰っておくことにする。
倒れるようにベッドに横になり、目を閉じて体の中の魔力を探してみる。集中すると体の中を血が流れるように何かが流れている感覚がある。右手を上にあげて人差し指を立て、指先にその何かを溜めるように力を入れてみるが特に変化が感じられなかった。まだ無理なのかと目を開けてみると、突き出した人差し指に直径5cm程で渦を巻いている透明な玉が出来ていた。突然の事で驚き、思わず手を引いてしまうと玉も消滅した。再び人差し指に力を入れるようにすると先ほどよりも大きな透明な玉ができ、力をぬくと消えた。
「なるほど、これがマナか...」
練習するうちにだんだんと疲れがたまり、ステータスを確認してみる。
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名前 レンヤ ヒイラギ
種族 人間
身分 なし
HP 150
MP 25
魔力 200
知力 25
敏捷 23
運 20
スキル
・言語理解 (ユニーク)
・鑑定 (UR)
・剣術 Lv3
・アイテムボックス(UR)
Message
新着無し
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「これくらいの事でもマナを消費するのか...あまり乱用は出来ないな。よくある展開としてはこれを繰り返すことでMPが多くなったり消費量が減ったりするんだったかな?まぁ、明日にならないと分からないか...。」
錬也はマナの使いすぎによる怠さに逆らうことなく再び目を閉じて睡眠という深い闇に落ちていった。