38. アベル伯爵護衛依頼14
「えっと...」
「(じ――――)」
正直疲れているため眠い。が、ティアは無言のままじっとレンヤを見ている。
「僕も分かりやすく説明できるか分かりませんよ?」
もう諦めて教えることにした。
「まぁ1日くらい徹夜しても大丈夫かな...明日は宿屋に泊まるし。」
光る球体を挟んでティアと向き合う。日中寝ていたためかティアの顔には眠気は一切なかった。
「ティアさんは何の魔術が使えるんでしたか?」
鑑定をすることで使える魔術の属性は分かっていたが本人が分かっていなかったら面倒なこととなるため確認する。
「えーっと...土属性とユニーク属性って言われた...ような?」
「なんで疑問形なんですか...(土属性を持っていることは本人が知っている...ユニーク属性っていことは吸収スキルか加護の方か、加護は生まれた時から持っているだろうし名前からしてスキルとは言い切れないと考えられるしやっぱ吸収の方か。)」
「...どうかした?」
スキルを聞くと真剣な顔になり、考え込むかのように腕を組んで黙り込んだレンヤにティアが声をかけ、レンヤは腕を組んでいたのを解く。
「ユニークスキルはおそらく呪い状態の時に強制的に発動していたスキルだと思います。」
「...やっぱり普通の呪いじゃなかったんだ。」
「気づいてましたか。」
「...盗賊のリーダーが悩んでいたから。普通の呪いだったらかけられた本人が被害を受けるの。でもティアのは周りにいた人たちにも被害が広がっていったから。」
「確かに無差別にMaxの9割のステータスを奪われたら普通の呪いって思いませんからね。さて、魔術を使えるようになりたいんでしたらどちらから使えるようになりたいですか?」
「...レンヤはどっちがいいと思うの?」
「いやいや、そんなかわいく首をカクっと傾けないで自分で考えてくださいよ。これは本人が決めることですからね。僕はティアさんの意思を尊重するだけです。」
「うぅー、なら吸収の方にする。」
「ほぅ、理由を聞いても?」
「吸収ならMPとHPを誰かから補充できるしその後の魔術の練習もしやすいから。」
意外と幼い見た目からは想像できないほどきちんと考えていたことにレンヤは少し驚き納得する。
「分かりました。ですが残念、僕はそのスキルを所持してないので教えることができません。」
「...大丈夫、レンヤならできる。」
「いやいや、その自信どこから来るんですか...そうですね、ティアさん手を出してください。」
レンヤが右手を差し出すとその手に重ねるようにティアは自分の手をのせる。
「今から僕のマナをティアさんに流します。」
「うん。」
「何か違和感があったら言ってください。」
コクっとティアがうなずくのを確認してからティアの手が重ねられた右手にマナを集中させる。
ある程度たまると、血が血管を通り流れていくようにマナをティアへと流していく。静かに魔眼を発動させてマナが見えるようにし、レンヤのマナがティアへと触れた時ティアの目が一瞬大きく開かれた。
「何か感じた?」
「...何かがティアに流れてきた感じがした。」
「うん、今はそれでいいかな。まだそれは感じる?」
「...何となく?」
「それを自分の内側に引っ張ることは?」
ティアは目をつぶり「むむむ...」と眉間にしわを寄せるがいまいち感覚が掴めていないらしい。数十秒頑張っていたみたいだが結局は諦めて目を開いた。
「...ダメだった。」
「まぁ最初から出来ていたら苦労しませんからね。おそらく呪い状態の時は体が無意識に動いていたのでしょう。」
そう言うと原因があるのではないかとティアのステータスを確認する。
――――――――――――――――――――
名前 ティア シミラ
種族 獣人
身分 奴隷 (所有者:レンヤ ヒイラギ)
HP 32
MP 25
魔力 0
知力 15
敏捷 20
運 10
スキル
・吸収 (UR)
・属性魔術 土 Lv.1
・--神の加護ユニーク
※鑑識失敗
▼
--神の加護。半神刻ごとにMaxステータスの5%の自動回復効果。
物理攻撃10%軽減・魔術攻撃10%軽減
――――――――――――――――――――
「あっ、分かった。(ティアさんMP満タンだからこれ以上吸収できないじゃないですかー。)」
「?どうしたの?」
「ティアさん、もう片方の手を出してもらってもいいですか?」
「?」
ティアは自分の右手を手のひらを上にしてレンヤの前へと出す。
レンヤはずっと流していたことによってティアの体全身へと流れているレンヤのマナをティアの右手に集める。
「いいですか、今から起こることをちゃんと見ておいてください。」
次の瞬間ティアの右手には拳ほどの大きさの魔力の球体が現れた。
「っ!?」
ティアの体を通じでレンヤは自分のマナで球体を出現させた。
急に現れた球体にビクッと驚いてティアは出していた右手を引っ込める。
しかし一旦出現したマナの球体はその場に残ったままとなっている。
「これがマナ、魔術を使用するときに用いるものの塊です。」
そういうとレンヤは出現させた球体をつつく。触った感じとしてはガラス玉のような感触だった。
それを握りつぶすと簡単に壊れマナが空気に溶け込むように光の粒子となって溶けていく。
試しに散らばったマナを集めようとするが完全に光を失ってレンヤに見えなくなった魔力以外はきちんとレンヤの手元へと戻ってき、ふたたびレンヤの体の中へと吸収された。
「(時間内だったら回収できるのか。)」
「とりあえずティアさんは今現在マナを使ってないから吸収できない状態となっていると考えられます。なのでまずは土属性の魔術が先でしたね。」
「...分かった。」
「今度は僕がティアさんのMPでマナの球体を出現させますので感覚をつかんでください。」
そういうとティアは再び自分の右手をレンヤの前へと出す。
「それではいきますよ。」
返事はなかったがティアが目をつぶったので準備ができたと考える。
再びティアの体、今回は心臓付近にマナを集中させていく。レンヤもさすがにティアのマナが集まっているところなんてものは分からないため集中するため目を閉じる。
暗い空間にひたすら自分のマナを広げていく。
するととても近い存在に触れたような感覚がした。
水を大量に吸い込んだスポンジを絞るようにその存在をレンヤは自分のマナでつかむ。
溢れだしたティアのマナを導くようにティアの右手へと流していきマナの球体を作ろうとするが自分の時と感覚が違うためなかなか集めて球体にすることができない。
レンヤは閉じていた目を開いて左手でティアの差し出されている右手をしたから支えるように触れる。
そしてティアのマナを一旦自分の体の中へと吸収するが言いようのない違和感がし気分が悪くなり吐き気がする。
無理やり馴染ませるかのようにレンヤは体の中で自分のマナを使って薄めていく。感覚を確認するとレンヤは再びティアの右手に集まっていたマナを手の平から空気中へと流して一か所へとまとめていきマナの球体を作る。
ティアが目を開くと自分の手のひらにある球体に目が行く。
「何となく分かった?」
「...マナがたまってるのってここ?」
ティアは自分の心臓部分を指さして聞く。
「そう。心臓付近に集中しているマナを手のひらに流していって手のひらで球体状に出現させるんだよ。」
「...何となくなら分かった気がする。」
そういうとレンヤから手を放して自分の目の前で両手の平を広げる。
ティアの魔力を自分の中へと取り込んだためかティアの体の中にあるマナが魔眼を通して分かるようになった。
ティアが体の中で両手の平へとマナを流しているのが分かる。それは手のひらへと集まるとレンヤがつくった大きさよりも大きいサイズのマナの球体を形成する。
「マジかい...」
一般的に主人公が魔術の使い方を教えてみると天才だったというのがテンプレなのだがこうも簡単に目の前で、しかも自分よりも大きなマナの球体を出されるといささかショックを受けてしまったレンヤであった。
「...これでいいの?」
「ん?いいと思いますよ?いきなり出来るなんてすごいですね。」
しかし年上としての意地とでもいうのかそれを悟られないように頑張る。
「ん。ティア頑張った。」
そう言うと撫でろとでもいうようにティアは自分の頭をレンヤへと近づける。
「...どうしました?」
普通なら撫でるのかもしれないが子供相手でも女性を信用しないレンヤ君ははぐらかすように言う。
「...ティアの母様は褒めてくれる時に頭を撫でてくれた。」
「それだから撫でろと。」
「うん。ダメ?」
「(いやそんな涙目になって見上げられると断れないんですけど...)」
そう心の中で反論しながらレンヤは手を伸ばしてティアの頭を撫でたのであった。
どもっす( *・ω・)ノ
くまさんです。
ふと書いてて思ったんですけどこの話進むの遅いですかね?(・・;)
なんかまだまだ終わらない感じですが...
まぁそれはともかく
ブックマーク80いつのまにかいってました!
いやー、ありがたいです( ´∀`)
次回?
頑張りますとだけ...
いや、ごめんなさい書きたい内容あるのですが時間がなくて...
まぁなんだかんだ日曜更新すると思いますがしてなかったらダメだったんだなーと思ってください。
誤字等ありましたら感想欄にてです!
ではでは( *・ω・)ノ




