37. アベル伯爵護衛依頼13
お待たせしました!
相変わらずこの世界の太陽は主張が強いらしく暑い日差しがレンヤたちを照り付けている。
再出発してから随分と時間は経過しておりだいぶ日は傾きかけていたがまだ暑いのだろうか、太陽の熱で金属製の鎧によって蒸された状態となり顔から汗をダラダラと流している騎士たちを何人か見かける。
ティアは最初こそは肩の上に乗ってゆらゆらと揺れていたが、時々現れる魔物も前にいる二人やロベルトさんがすぐに討伐するため対して危険が無いと判断したのだろう、眠くなったためか肩の上で舟をこぎ始めたので肩から降ろして今では左腕に座るようにレンヤが抱え、スヤスヤと寝息をたてていた。
「今日はここまでか...」
特にしゃべることもなく無言で歩いているとロベルトがつぶやく。
「しかしまだ砂漠のど真ん中ですよ?それに太陽が沈むまでにも数時間かかるんじゃないですか?」
レンヤの言う通りまだあたりは明るく、もう1,2時間であれば進むことができるであろう。
「レンヤ忘れたか?この隊列にいるやつはほとんど野営を知らない。ブレイアならそれも見越して早めに野営の準備に取り掛からせるだろう。」
確かにお偉いさんを守る騎士隊であるが戦闘経験はほとんどない騎士という名前ばかりの集団であることを思い出す。
「確かにそうですね。でもここで野営のテント張ったら魔物がすぐ近くに出没してしまうんじゃないですか。」
「まぁそうだがそれは夜の見張り番の仕事だろ。それにその役目はおそらく俺ら冒険者に押し付けられる。普通なら二人ずつの交代制になるだろうな。」
砂漠にポツンと生えている大きな木に隊列は近づく。
"ここから先帝国領につき注意されたし"
木に近づくとそのように書かれた大きな看板が木に釘で打ち付けられているのに気付く。
「...ロベルトさん、国境ってもっとこう...きちんとしたものじゃないんですか?」
「いやまぁレンヤの言いたいことは分かるが王国領から出るときも関所みたいな大げさなものはなかっただろ?国としては点在する村や都市が守られればあまり気にしないからな。」
「こういう所は大雑把なんですね...」
木の下に着くとブレイアが大声で言う。
「今日はここで夜営をします。各自テントを張り泊まる準備をしてください。」
そう言い終えるとブレイアは冒険者を集める。
「夜間の見張りなのですが...」
「おぅ、分かってらぁ。俺ら四人で対処しろってんだろ。お二人さんも大丈夫だよな?」
ロベルトが答えフェリプとエリカの方を向くと黙ったまま二人が頷く。
「ってことだから安心しろ。」
「それはそれは、ありがとうございます。」
ブレイアはそれを確認したかっただけらしくロベルトの返事を聞くと伯爵のいる馬車の方へと戻って行った。
「夜の見張りなんだが...」
「俺とエリカで最初の見張りをする。四人いるから二人ずつでいいだろう。」
「そうだな。じゃあ俺とレンヤは最初に寝るから時間になったら起こしてくれ。」
「分かった。晩飯も別々でいいだろ。」
「そうだな。」
フェリプとロベルトも簡単に打ち合わせをして解散する。レンヤとエリカも特に口出しするようなことも無かったので二人の会話を黙ったまま聞いていた。
「ここらへんでいいだろ。レンヤ、テントは持ってきてるか?」
「もちろん持ってきていますよ。まぁ途中で連れが増えるなんて考えてなかったので一人用のテントですけどね。」
木からある程度距離を取り騎士ともフェリプ達とも近すぎず遠すぎない場所にテントを建てることにしたロベルトにレンヤは苦笑いしながら答えた。
「俺のテントをティアちゃんと一緒に使うか?四人用で広いし。代わりに俺がレンヤのテントを借りて寝ればいいことだ。」
「いえ、いいですよ。そうだ、代わりにティアをロベルトさんのテントに寝かしてあげてください。」
「ん?奴隷は主人と一緒にいた方がいいぞ。」
「まさかロベルトさんがティアさんに手を出すなんて考えていませんよ。え?まさか...」
「おいおい!勘違いするなよ!いいかレンヤ、一度奴隷と契約して主人となったからには守ってやれ。そういう使い方をするために契約したんだったら何も言わないが違うだろ?」
「いや、まぁそうですが...分かりました、お借りしていいでしょうか?」
「おぅ、いいってことよ。」
レンヤはティアを戦争奴隷みたいな消費物として契約したのではなく保護するという名目で契約したため万が一何事かが起ってしまった場合には当然ティアを守らなければならないという義務が発生する。正確には義務ではないが守るかどうかでレンヤの人間性を見られるということであった。
「明日には帝国の村に到着するんですよね?そこで新しいテント買いますので今晩はお借りします。」
「あいよ。これだ。」
ロベルトは背負っていたカバンから小さく丁寧にたたまれたテントと骨組みを出してレンヤに渡す。レンヤもティアを抱えながらアイテムバックからテント一式を出して交換するようにロベルトに渡した。
ロベルトが自分のテントを組み立て始めたのを確認してティアを起こす。
「ティアさん、そろそろ起きてもらえませんか?」
レンヤの腕に座りながら寝ているティアに声をかけながら軽く揺すると眠たそうにティアが思い瞼を開く。
「...もう夜になったの?」
手でごしごしと目をこすりながらティアが聞いてくる。ティアがウトウトとし始めた時間に比べたらだいぶ日は傾いてしまっていたのでティアにとってはかなり時間がたったように感じたのだろう。
「今日はここで野営をすることになりました。テントを建てるので手伝っていただけませんか?」
「...うん、わかった。」
テントは日本に存在しているものになぜか構造が似ており簡単に組み立てることができた。
晩御飯はアイテムバッグに入れておいたパンに燻製にしている何かの肉、それからリュネの実をロベルトとティアと共に食べる。
「あそこに月が見えるだろ。あれはこんな風に動いてあそこらへんに沈むだろ。」
食事が終わるとロベルトは時間がたちいつの間にか天高く昇っていた月を指さすと軌道を描き沈むであろう方向にある地面を指さす。
「つまりその中間に月が来るまで寝ることができるんですか?」
レンヤは月と地平線の間を指さして言う。
「ま、そういうことだな。時間になったらフェリプ達が起こしてくれるだろ。」
「分かりました。ではまた後で。」
レンヤが軽く挨拶をするとティアがペコリとお辞儀をした。
それを見届けるとロベルトはレンヤが貸した一人用のテントへと入って行った。
「では僕たちもテントに入りますか。」
テントの中は明かりはなくもちろん暗い。さすがに中で火をおこすこともできずどうしようか一瞬悩んだがティアには魔術が使えることがバレているためライトボール(光を放つ白い球体)を魔術によって作り出す。
レンヤはコホンと小さく咳払いすると考えていたことを言う。
「今日は残念ながら僕と一緒のテントになってしまいましたがご容赦ください。真夜中に見張りの交代で起きますけどティアさんは寝ていて大丈夫です。それと言ったか覚えてないのでもう一度言いますが僕が魔術が使えるということは誰にも言わないでください。えぇっと...他に何かあるかな?」
最初に言っておきたいことを簡単に説明し、何か言い忘れが無いかを考えているとティアが口を開いた。
「...ティアが魔術使えるのも秘密?」
「そうですね、ティアさんも使えることは黙っていた方がいいでしょう。魔術は便利な反面使える人は少ないらしいからね。今は僕の契約のもとで保護していますけど何が起こるかは分かりませんからね。無用な火種は無い方がいいでしょう。」
「...ティアまだ魔術使えないの。」
「まぁ使えるようになる最初のきっかけは人それぞれですからね。使えることが分かっているだけでも十分だと思いますよ。」
「...ティアに魔術を教えてください。」
ティアは正座した状態から深々と頭を下げてレンヤに頼んだ。
レンヤにとっては長時間歩いた疲労がたまった状態であったため深い深いため息をはいた。
連続で更新できない週が続いて申し訳ありません。
来週は何とか更新する予定ですのでよろしくお願いします。
休みがあるって幸せですね( ´∀`)
最近なぜかしみじみとそう感じるくまさんでした。
ではでは( *・ω・)ノ




